クロアチアにはユネスコの世界遺産に登録されている場所が10箇所あり(2018年現在)、その大半がアドリア海沿いに線状に位置しています。今回は、北部にある首都ザグレブに程近いエメラルド色の湖が織りなす絶景世界遺産「プリトヴィッチェ国立公園」から、南部にあるジブリ映画『紅の豚』のモチーフにもなった街「ドブロブニク」に至るまでをモデルコースとして、厳選の6カ所をご紹介します。クロアチアの旅はバスが便利です。車窓から眺めるアドリア海の海を右手に進んでいきましょう。
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1. 滝92本と湖16箇所からなるエメラルドに輝く森「プリトヴィッチェ湖群国立公園」
クロアチアの首都ザグレブからバスで約2時間のところに、1979年に世界自然遺産に登録されたプリトヴィッチェ湖群国立公園があります。この国立公園は、面積192㎡の広大な土地に大小16の湖と92の滝があり、水質が石灰を含んでいるためエメラルドグリーンに見え、幻想的な景観を作り出しています。
国立公園内への入場は有料(大人55~180クーナ/約920円~3,000円※季節により変動)で、徒歩で洞窟や森・湖畔の自由散策をできる他、湖を横切るクルーズ船の乗船料やパノラマ列車の乗車代も入場料に含まれています。
国立公園内の湖エリアは、大きく分けて上湖と下湖に分けられます。両方を周遊すると、所要時間は4~6時間、見どころが凝縮した下湖のみの場合は2~3時間必要となります。
下湖は、洞窟や鍾乳洞が点在し、クロアチア最大のプリトヴィツェ大滝、数々のガイドブックにもプリトヴィツェ湖群国立公園の代名詞として写真が載せられることの多いカルジェロヴァツ湖など見所がたくさんあります。どこも息を飲むような景色です。
また、標高が高いエリアにある上湖は、プランクトンの濃度が高く、緑色の濃度が高くてより神秘的な風景が広がっています。クロアチアで最も美しいと言われるブルシュタヴツィ滝、遊覧船で湖上散策できる園内最大のコジャック湖があります。上湖の湖群は、ドイツ他欧州数か国を流れるドナウ川の支流となっています。
公園内の湖の透明度の高さはヨーロッパ随一といわれ、湖底に沈んだ倒木や湖を泳ぐ魚までもはっきりと見ることができます。貴重な植物、水鳥、澄んだ空気、ダイナミックで美しい自然の力に世界遺産に輝く所以を体感することができるでしょう。
- プリトヴィツェ湖群国立公園
- クロアチア / 自然・景勝地 / 絶景
- 住所:Plitvice Lakes National Park,Croatia地図で見る
- Web:http://www.np-plitvicka-jezera.hr/en/
2. 白亜の石造建築・シベニクの聖ヤコブ大聖堂
プリトビチェ湖群国立公園から約190km、バスで約3時間走ると、アドリア海の風光明媚な心臓部ダルマチア地方のシベニク(Šibenik)という街に到着します。ここが次なる世界遺産「聖ヤコブ大聖堂」のある街です。
- 出典:www.flickr.comシベニク(Šibenik)の大聖堂(Photo by Hervé)
この聖ヤコブ大聖堂は、レンガや木を使わず石のみで作られている石造建築の教会として世界最大を誇ります。起源は15世紀半ばにまで遡り、クロアチア出身の建築家ダルマティナツらが建築を始めました。
その後、ヨーロッパ中に猛威を奮った疾病や内戦等により、建築は中断と再開を繰り返します。施工開始から100年以上後の1535年に、ようやく完成しました。その間に現場を取り仕切る面々も交代がなされたため、イタリア式、クロアチア式が混合する様々な建築様式が見られます。
また、大聖堂の壁には大聖堂建設に貢献したシベニク市民の顔が71彫られています。社会の変動にも耐えながら、市民が中心となって作り上げた建造物。こうした歴史的建造物の価値が認められ、2000年に世界遺産に登録されました。
- 出典:www.flickr.com世界遺産のシベニクの大聖堂を取り囲む町並み(Photo by Yacht Rent)
大聖堂を前に立ち、その雄姿を見上げてみると多くの人の苦労が見えるようです。人々の手によってつくられた白亜の巨大な大聖堂、まさに圧巻です。
- シベニクの聖ヤコブ大聖堂
- クロアチア / 社寺・教会 / 教会
- 住所:Trg Republike Hrvatske 1, 22000, Šibenik, クロアチア地図で見る
- Web:http://www.sibenska-biskupija.hr/
3. アドリア海の歴史がつまった古都トロギール
シベニクの大聖堂を満喫したら、トロギール行のバスに乗り込みましょう。太陽の日差しを受けてより一層青さが際立つアドリア海を右手に眺めながら、小1時間もすれば次なる世界遺産の街トロギール(Trogir)に到着します。
1997年に世界遺産に登録された古都トロギールは、古代ギリシャ、古代ローマ、ヴェネツィア共和国の文化が混じる巨大な三角州・小さな島のような地形の街で短い石橋を渡って旧市街に到達することができます。こぢんまりとした街なので、2~3時間もあればゆっくりと街を散策することができます。
紀元前にギリシャの植民都市として築かれたトロギールの街は、中世に入ってからローマ時代の街の上に築かれ当時の雰囲気のまま時が止まっているようです。建築様式も様々なものが混合し、例えばロマネスク様式、ルネッサンス様式、バロック様式などの建物がひしめいています。
街のシンボルの鐘楼に上れば、眼下に紺碧のアドリア海とクロアチア名物の赤瓦の家並みが広がります。古代~中世ヨーロッパ、そして現在。時空をこえて受け継がれてきたこの景色がクロアチアの歴史そのものを物語っているようです。