ドイツ
ドイツ観光
ロマンティック街道には古城や中世の街並

【ドイツ・ノイシュバンシュタイン城】ルートヴィヒ2世は “狂王” だったのか?

取材・写真・文:

兵庫在住
訪問エリア:18ヶ国

2020年9月22日更新

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唯一の理解者「エリザベト」、そして別れ

ルートヴィヒ2世が 唯一心を許した女性 とは、8歳年上の再従姉(はとこ)にあたる「エリザベト」。彼女もまた当時 “ヨーロッパ宮廷一美しい”と言われながらも、浪費癖のある現実離れした夢想家であったとして有名な女性です。きっとルートヴィヒ2世と一緒で宮廷のしがらみに辟易し、意気投合したのですね。

そんなエリザベトは16歳で隣国の オーストリア皇帝に見初められ嫁ぐことに。「同性愛者だったから純粋な友達同士だった」とか「ルートヴィヒ2世の片思いだった」など様々な説がありますが、いずれにせよ当時9歳だった彼には、唯一の理解者が離れてゆくのはとても寂しかったと思います。

でもその後も交流は続き、10年後にルートヴィヒ2世のお嫁さんにエリザベトは自分の妹を推薦します。しかし結婚式が延期、また延期となり、最終的には婚約破棄に。これにエリザベトは腹を立てて、この一件以降は絶縁になったとか。

「ワーグナー」に心酔、そしてまた別れ

実は、結婚騒動が起きていた頃と時同じくして、ルートヴィヒ2世は「楽劇王」の名で知られるオペラ作曲家「ワーグナー」に心酔していました。要するに “ワーグナー > 結婚” 状態だった?!

当時ワーグナーは革命の首謀者の一人として全国指名手配中で身を隠していましたが、ルートヴィヒ2世は執念でワーグナーを見つけ出し召喚したのです。どれくらい心酔していたのかというと…

ワーグナーに居城近くの豪邸を与え、亡命中のワーグナーの借金を完済させ、多額の年金を与え、ワーグナーのオペラを鑑賞するために劇場を建て、そして毎日オペラ三昧。

こんなことを続けていればさすがに財政が危うい状態になるわけで、宮廷の貴族たちの怒りを買うのは必須。「ワーグナーを追い出してください!」と非難轟々だったに違いありません。

また、ワーグナーが作曲家リストの娘と深い仲になったことも発覚(因みに2人とも既婚者、すなわち不倫)。それにショックを受けたルートヴィヒ2世は傷心のままワーグナーを追放します。

「城の建設」に夢中になる

ワーグナーの一件以来、さらに宮廷を嫌い、ワーグナーもオペラもなくなった心寂しきルートヴィヒ2世が次に熱中したのは、幼い頃から憧れていた “中世の世界”の具現化、すなわち お城の建設 です。ここからノイシュバンシュタイン城の建築も始まります。

ノイシュバンシュタイン城だけではなく、他にもあちこちに城を建設し、巨額の財政を使いまくり、国は赤字へまっしぐら。

さすがの宮廷も「このままでは国が持たない、あの王を何とかしなければ」と画策していた頃、ルートヴィヒ2世の弟が戦争によって精神を病んでしまいました。それ以来、ルートヴィヒ2世も奇行が増えていったそう…これに宮廷勢力が目をつけないわけがありません。

「精神異常者」という扱いで「ベルク城」に幽閉

当時の首相が医師4人に「ルートヴィヒ2世は精神異常者」と診断させ、ついにルートヴィヒ2世は廃位に追い込まれました。40歳、1886年6月12日のことです。ミュンヘンの少し南にある、シュタルンベルク湖のほとりにある ベルク城 に幽閉されることに。

しかし、幽閉されたすぐ翌日に・・・

シュタルンベルク湖で医師とともに「謎の死」…エリザベトが救おうとしていた?!

幽閉された翌日の6月13日、ルートヴィヒ2世は担当医と一緒にシュタンベルク湖を散策しに出かけ、そのまま帰らぬ人となりました。この湖で医師とともに水死体で見つかったのです。

未だにこの謎の死については様々な憶測が飛び交っていますが、「ええ?!」と思うことが1つ。それは、先ほど紹介した、ルートヴィヒ2世の唯一の理解者だった エリザベト が、なんとこの日、その湖畔のホテルで泊まっていたという事実。

オーストリアに嫁いで皇后となっていたエリザベトは、ルートヴィヒ2世が逮捕されたことはすでに知らされていたそうです。彼が変死した同日に同じ湖の畔にいたのは偶然とは考えられない…エリザベトがルートヴィヒ2世を救おうとして失敗したのでは?という説があるのもわかります。

実際、彼の死を知った後はしばらく周囲の家臣たちが心配するほど精神的に落ち込んでいたそうです。

ルートヴィヒ2世が幼少期に過ごした【ホーエンシュバンガウ城】

  • 写真:まき子

ノイシュバンシュタイン城に行く場合、まず【Hohenschwangau ホーエンシュヴァンガウ】という村に行くことになりますが、その村からはノイシュバンシュタイン城だけではなく、もう1つの城が見えます。

それが【ホーエンシュバンガウ城】。ルートヴィヒ2世が幼少期に過ごした城で、おそらくこの頃が人生で一番幸せな時だったのではないでしょうか。

  • 写真:まき子

【マリエン橋】からも、ノイシュバンシュタイン城の向こうに見ることができます。位置関係でいうとノイシュバンシュタイン城の方が高い場所に建てられているので、そこからホーエンシュバンガウ城を見下ろすことができます。

幸せだった頃のお城を、自ら作った城から見下ろす…ルートヴィヒ2世はどんな気持ちで眺めていたのでしょうか…

ホーエンシュヴァンガウ城
ドイツ / 建造物 / 城・宮殿
住所:Alpseestraße 30, 87645 Schwangau, ドイツ地図で見る
Web:https://www.hohenschwangau.de

最後に・・・

ルートヴィヒ2世は、よく「狂王」とも言われますが、本当に狂っていたのか?これも未だに様々な説がありますが、精神異常者とした “医師の診断” は実際に行われていなかったとも言われています。でも、自分の欲望のために国のお金を使い過ぎたことは事実。果たして・・・?

最後にエリザベトが彼の死を知った後に残した言葉をご紹介します。

「彼は狂っていたのではない。夢を見ていただけでしょう。」

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この記事を書いたトラベルライター

じっとしているのは耐えられない旅行好き&飲兵衛です
日本在住ですがアメリカで生活したこともあり、その時にすっかりアメリカ大陸の自然に魅了されました。それ以来、帰国しても日本の自然の素晴らしい場所をあちこち旅行するのが好きです。1児の母でもありますので、“子連れで行くとどんな旅になる?!”という視点も織り交ぜていろんな場所をご紹介できればと思っています。
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