函館
函館観光
洋館や教会が建ち並ぶハイカラな港町

函館発展の恩人・高田屋嘉兵衛の人物像とその資料館

取材・写真・文:

トラベルライター

2018年6月19日更新

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写真:トラベルライター

淡路島出身の豪商・高田屋嘉兵衛は、私財を投じて箱館の基盤整備事業を実施し、造船所を建設するなど函館発展に貢献しました。彼を偲ぶ箱館高田屋嘉兵衛資料館(昭和61年開館)では、北前船などの関連資料約500点を展示しています。

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人物伝・高田屋嘉兵衛

高田屋嘉兵衛は、1769(明和6)年、淡路島 都志本村(つしほんむら)(現・洲本市五色町都志)に6人兄弟の長男として誕生しました。22歳で兵庫(現神戸市)において、大阪と江戸の間を航海する樽廻船(たるかいせん)の水主(かこ)となり、船乗りとしての人生がスタートしました。

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やがて嘉兵衛は兄弟たちと「高田屋」を立ち上げ、日本海を通り大阪と蝦夷地(現北海道)を行き交う廻船問屋として活躍しました。

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28歳で当時国内最大級の「辰悦丸(しんえつまる)」を建造し、当時は寂しい漁村にすぎなかった箱館(現函館市)を商売の拠点として村の発展に貢献しました。

嘉兵衛とロシアとの関わり

廻船問屋として、箱館(現函館市)の発展に寄与しただけではなく、日本中に高田屋嘉兵衛の名声を轟かせたロシアとの事件がありましたが、これについて見ていくことにしましょう。

嘉兵衛がロシア船に拿捕される!

江戸時代が終るおよそ60年前、ロシアは物資補給地、 交易地としての日本の開港を求めていたが拒否されていた頃、1811 (文化 8 )年 6 月、海軍省の命令を受けて千島海域の地理を調査中であったロシア皇帝艦ディアナ号のゴロヴニン艦長が、クナシリ島で水・食料の補給を得ようと上陸した際、日本側警備隊に拿捕されるという事件が起こりました。

この背景には、かつてロシアがサハリンやエトロフ島の日本人居住地を襲撃するという事件(フヴォストフ事件)があったことにより、日露関係が悪化していたことが影響していました。翌年、ディアナ号を率いる副艦長リコルドは、海上を航行する日本船から艦長の消息を聞き出そうと、偶然近くを通りかかった嘉兵衛の船を捕らえ、カムチャツカに連行抑留したのです。

嘉兵衛は、日露の仲介役になる!

嘉兵衛はリコルドに、一連の蛮行事件はロシア政府が許可も関知もしていないという政府高官名義の証明書を、日本側に提出するようにと説得、その言葉を聞き入れたリコルドは嘉兵衛と共に日本に戻り、嘉兵衛を両国の仲介役として、遂にゴロヴニン釈放にいたる和解を成し遂げました。

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この事件を扱った書籍『対日折衝記(税込755円)』です。この本は、リコルド副艦長によって書かれた書籍を翻訳したものです。

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写真の高田屋嘉兵衛の銅像は、1958(昭和33)年、函館開港100年を記念して建立され、護国神社坂に建てられています。

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高田屋嘉兵衛の銅像の近くには、「日露友好の碑」が建てられています。

高田屋嘉兵衛の銅像
函館 / その他スポット
住所:北海道函館市 宝来町9地図で見る

嘉兵衛の晩年

文政元年、50歳になった嘉兵衛は、高田屋の経営を弟の金兵衛にまかせて、郷里の淡路島に帰りました。

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文政5年、金兵衛を正式に養子として高田屋の経営を相続させています。文政10年、隠居してからも、郷里に築港するなどの功績を残し、59歳で亡くなりました。

箱館高田屋嘉兵衛資料館

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函館の金森赤レンガ倉庫の近くには、このような高田屋嘉兵衛の功績を知ることができる資料館があります。1903(明治36)年に建造された1号館と、1923(大正12)年に建造された2号館の2棟からなっています。

※なお、館内は写真撮影禁止ですが、本記事の取材に当たって写真撮影の許可をいただいております。

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ここは、高田屋造船所の跡地とされる場所で、かつて海産商のコンブ倉庫として利用されていました。1号館は北前船のバラスト(船体を安定させるために搭載していた重石)が用いられた建物です。

1号館には、高田屋の半纏(はんてん)や、嘉兵衛が箱館に初来航したときの北前船・辰悦丸の復元模型、1799(寛政11)年当時の函館を描いた巨大な絵図やコンブを採取する道具などが展示されています。高田屋の半纏(左側)と北前船・辰悦丸の復元模型(右側)です。

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2号館には、羅針盤や船額、船箪笥や炊事道具といった北前船で使われていた日用品などが展示されています。これは、嘉兵衛が使用していた望遠鏡です。

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実際に使われていた舟のランプです。

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壁掛け用花瓶(左側)と印鑑(右側)です。

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日本で最初に作られたストーブの復元品(昭和63年11月25日復元)が展示されています。

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