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「創業から約100年」の「本田商店」について
これまで、お酒のことやテロワールのことについてご紹介してきましたが、龍力を造っている「本田商店」についての面白いエピソードもご紹介します。
まず、酒蔵なのに「本田商店」って、ちょっと違和感がありませんか? 酒蔵といえば「○○酒造」で、「商店」というと問屋や小売店というイメージです。これは、本田商店が日本酒造りを始めたのが、“たった” 100年前 というワケにも繋がります。
現代では、一般的な会社やお店は100年も続けば長い方ですが、日本酒を造って一般人に売る、という酒蔵ができ始めたのは江戸時代。創業400年、300年、200年なんてザラにいる中での100年です。
なぜ「商店」なのか?
- 出典:blog.goo.ne.jp網干駅からも見える本田商店
最初に答えを言うと、本田商店は元々、明治の終わり頃に創業した 小売の酒屋さん だったのです。場所は創業した頃から移転しておらず、網干(あぼし)駅 のすぐ近く。酒蔵は駅からも見えます。この網干駅、今は広々とした車両基地があるのですが、明治の頃はここには 貨物駅 がありました。
さまざまな物品が貨物列車に乗せられたり降ろされたりするので、多くの商売人もここまで商品を取りに来るわけです。本田商店はすぐ近くで便利な立地ですが、遠くから取りに来る商売人にとってはとても大変。
そこで、方々の酒屋から声がかかったのが 本田商店 。「本田君、駅に一番近いのだから、うちのお酒も受け取ってきてくれないか。」とお願いされます。当時の代表、本田新二さんはとても人柄が良い方だったそうで、「よっしゃ、よっしゃ」の二つ返事で引き受けることに。
- 出典:blog.goo.ne.jpビールのP箱が積み重なる酒蔵内
そうして、小売の酒屋から、酒屋へお酒を卸す問屋 を営むようになりました。今でも蔵の中にたくさんの大手ビールメーカーのP箱が積み重なってるのは、その頃の名残だそうです。
「問屋」から日本酒を造る「酒蔵」へ
人の良かった本田新二さんの働きっぷりは、周囲の人たちにも一目置かれるようになり、お酒の問屋を営む傍ら、村の米蔵の管理も任されるようになったんだそう。その手腕を村長に認められたのか、「お米を貸してあげるから日本酒を造らないか。」と声をかけられ、やる気満々に!
しかし、日本酒を造るには 酒造免許 が必要。国がお米にかかる税金をしっかり徴収するための法律ですが、この免許を新規で取得するのがとても困難!現代でも難しいため、ワインやビールの醸造所は次々と新しく生まれるのに、日本酒の酒蔵は古い蔵ばかりなのです。
そんな時、これまた懇意にしてもらっていた老舗の 醤油蔵 の蔵元が「うちの酒造免許を譲ってあげる」と言ってくれました。実は、江戸時代や明治時代など古くから酒造免許を持っている蔵元から、その免許を譲ってもらえば新規参入は可能なのです。
こうして、本田商店が日本酒造りを始めたのが 1921年。昔からある蔵と違って、新しく日本酒蔵として生まれ変わった本田商店は、造りを始めた頃から果敢に挑戦を続けてきました。例えば冷やして美味しい 大吟醸 。今では当たり前のようにありますが、当時はお燗酒ばかりだったので、日本酒業界に衝撃が走ったんだそう。
その銘柄が、今でもある「米のささやき」です。酒蔵の建物の一番上にも大きく目立つように書かれていることからも、それだけ自信のある看板酒ということが伺えますね。その大吟醸のみならず、今後は、新たにテロワールにこだわった日本酒造りを目指していくそうです。
- 本田商店
- 姫路市 / 酒蔵 / 日本酒
- 住所:兵庫県姫路市網干区高田361-1地図で見る
- 電話:079-273-0151
- Web:https://www.taturiki.com
姫路駅にある直営立ち飲み店「タツリキショップ」
酒蔵まで行かなくても、実はアクセスも便利な 姫路駅 の地下街グランフェスタ2番街にある、直営の立ち飲みショップ「タツリキショップ」でも、グラス60mlでいろいろ味わうことができます。
こちらのお店は、BARのような雰囲気もあり、白シャツでキメている店長が対応してくれますが、実はこの店長は杜氏さん!(不在の時もあるかと思いますが)だから、お酒のことや造りのことなども聞けちゃいます。ただし、おつまみなど食べるものはないので、空きっ腹にはご注意を。
ラインナップの龍力はほとんどが200円、金賞を受賞した「米のささやき」は500円、その他にもその時にしかない季節商品もあるのでお見逃しなく!
営業時間:10:00~20:00
- タツリキショップ
- 姫路市 / 日本酒 / バー
- 住所:兵庫県姫路市駅前町188-1 姫路駅地下街グランフェスタ2番街 B1F地図で見る
- 電話:079-221-3562
- Web:https://www.taturiki.com/profile.html
最後に・・・
日本酒に限らず、口にするもの全てに言えることですが、「美味しいなぁ」と思えるものを造っている生産者と会って、お話ししてから味わうと、不思議とより一層美味しく感じるはず。本田商店は網干駅からも徒歩1分ととてもアクセスが良いので、ぜひ「テロワール館」で蔵の雰囲気も味わってみてくださいね。