イラク

【イラク】ここが幻のバビロン(世界遺産)

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東京在住
訪問エリア:191ヶ国

2024年1月27日更新

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写真:toshel

バビロンは、世界最古の文明発祥地メソポタミアにおいてバビロニア帝国の首都になった古代都市です。今回は、時代を隔てて長期にわたりこの地域を支配したバビロンの遺跡をご紹介いたします。

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バビロンとは

バビロンは、バグダッドの南90kmにあるメソポタミアの古代都市です。紀元前2500年ころに小さな町だったバビロンは、世界最古の文明発祥地とされるメソポタミアにおいて、バビロニア帝国の首都にまで発展します。2019年にはユネスコの世界遺産リストに登録されています。

世界最古の文明を築いたシュメール人

メソポタミア文明を築いたのは「シュメール(スメル)」とよばれる人々。シュメール人の民族系統は不明ですが、彼らは今からおよそ5000年前の紀元前3200年頃より、現イラク南部のチグリス川とユーフラテス川下流域にウル、ウルク、ラガシュなど都市国家を築きます。

その後、メソポタミア文明は南部から川を北上し、イシン、ニップル、キーシュといった都市国家を形成していきます。小さな村に過ぎなかったバビロンも次第に成長していきます。文明を起こしたとされるシュメール人ですが、アッカド人に制されるとある時を境に忽然と姿を消したようです。驚くことに、現代のイラク人にシュメールの血は流れていないといわれています。それくらい全員、一気にここを去ったのですね。

長く繁栄した古代バビロニア王国

南メソポタミアを統一したアッカド人によって建設の進んだバビロンは、バビロニアの首都になるまでに成長します。

そして、ここバビロンは二度の主権を取ります。初めての主権を古代バビロニア、二度目を新バビロニアと表現することが多いです。古代バビロニア王朝は大きく4期に分かれ、およそ900年に渡って繁栄しました。

  • バビロン第一王朝(紀元前1894-1595)
  • 海の国第一王朝(紀元前1732-1475)
  • カッシート王朝(紀元前1475-1155)
  • イシン第二王朝(紀元前1157-1025)

「目には目を、歯には歯を」ハンムラビ法典

古代バビロニアのバビロン第一王朝時代、ハンムラビ王(在位:前1792年-前1750年)によって、ハンムラビ法典が制定されました。この法典は「目には目を、歯には歯を」という同害報復が世界的に有名です。

ハンムラビ法典はこの一文だけが独り歩きし、攻撃的・抑圧的な復讐心の感じる法律に見えがちですが、この法典は、商業、農業、犯罪、結婚、相続など社会経済の多様な一般的領域まで含んでおり、現代の法律とほとんど相違ありません。

「目には目を、歯には歯を」にあたる一文は、

  • もし上層人が仲間の目を損なったなら、彼らは彼の目を損なわなければならない。
  • もし上層人が仲間の骨を折ったなら、彼らは彼の骨を折らなければならない。
  • もし上層人が上層人の歯を折ったなら、彼らは彼の歯を折らなければならない。
  • もし上層人が一般人の歯を折ったなら、彼は銀3分の1マナ(約167グラム)を支払わなければならない。
  • もし一般人が一般人の目を損なったか、一般人の骨を折ったなら、彼は銀1マナ(約500グラム)を支払わなければならない。
  • もし一般人が奴隷の目を損なったか骨を折ったなら、奴隷の値段の半額を支払わなければならない。

現代のように懲役刑による服役ではなく、基本的には同じ思いをさせたのです。個人的には良い考えと思うのですが、皆様はいかがでしょう?

ハンムラビ法典は、楔形文字で記されたアッカド語で石柱に書き写され、バビロンのマルドゥク神殿に置かれていたとされています。

バビロニア遺跡

それでは、ここから筆者が実際に訪ねたバビロニア遺跡をご紹介します。

イシュタル門

先ずはバビロンの入り口となるイシュタル門から。紀元前575年、新バビロニア王国のネブカドネザル2世により建設されました。青い彩釉煉瓦は耐久性があり、永遠の都バビロンを強く意識して選ばれた素材でした。バビロンの女神イシュタルと共に、ムシュフシュ、オーロックスの浅浮き彫りなどが描かれています。現地にあるこちらはレプリカです。

  • 写真:toshel

オリジナルの実物は、ドイツ・ベルリンのペルガモン博物館に展示されています。大きさも威厳も全然違いますね。当地のイミテーションとはだいぶ違います。

  • 写真:toshel

イシュタル門は、1904年から1914年にかけてドイツの考古学者によりユーフラテス川を使って密輸されました。崩壊しバラバラになっていたイシュタル門のピースは実に199,750点に及んだそう。それから気の遠くなるようなパズルを経て甦ったわけです。

  • 写真:toshel

元はこのような形をした門でした。

行列通り

行列通りはイシュタル門から神殿まで続く幅20~24mあったとされる通りです。

  • 写真:toshel

サイドの壁には想像上の動物の浮き絵が彫られています。こちらはオリジナルです。

  • 写真:toshel

手前のこの塊は城跡です。2,500年も経つとこのようになってしまうのですね。この辺りの気候は直近の1,000年と大きく変化していないとされています。年間雨量100ミリ以下の乾燥地帯では風化も激しいのでしょう。

  • 写真:toshel

バベルの塔

バベルの塔は、旧約聖書の「創世記」中に登場する巨大な塔です。以前ご紹介したバグダッド近郊のジッグラト(聖塔)と同じく、紀元前6世紀のバビロンのマルドゥク神殿に築かれた説が有力です。天にも届く神の領域まで手を伸ばす塔を建設しようとして、崩れてしまった(神に壊された)という故事にちなんで、空想的で実現不可能な計画の比喩としても用いられています。

  • 写真:toshel

もし現実に存在していたとしても、すべて崩れて跡形もなくなっており、どこに位置していたかも解明されていないようです。

ライオン像

現地にある唯一といってもよいオリジナル像です。宮殿の前に狛犬のように置かれていました。現時点で宮殿は跡形もありません。

  • 写真:toshel

ネブカドネザル宮殿

現在発掘調査の行われているバビロンの遺構は、大部分がネブカドネザル二世の治世のものです。紀元前600年前に、ネブカドネザル王が新バビロニアを再興し、大帝国の首都にふさわしい壮大な町づくりを計画し、紀元前580年頃、町の中心部のユーフラテス川の左岸にマルドウクの神殿を建てました。

  • 写真:toshel

ネブカドネザル2世は建築活動を熱心に行った事が、大量に残された建築記念碑文に刻まれています。

  • 写真:toshel

彼が残した建築遺構にはバビロニアを代表する建造物として名高いイシュタル門や、バベルの塔のモデルとなったともされるジッグラトが含まれます。またネブカドネザルがバビロンの空中庭園を造営したという伝説が旧約聖書によって伝えられています。バベルの塔も空中庭園もどこにあったのか、現在でも定かではありませんが、きっと壮大な建築だったことでしょう。

  • 写真:toshel
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これは想像図ですが、新バビロニア王国は想像を絶する繁栄を極めていたとされています。

  • 写真:toshel

この辺り一体は、米国によるイラク侵攻の際に米軍がキャンプが置かれました。残念ながら歴史ない国の人間に、歴史の重みなど分かるわけもなく、バビロニア遺跡はところどころ破壊された挙げ句、遺物を持ち去られました。盗み出された文化財は、2021年になり米国から返還され、その数はおよそ17,000点にものぼったよう。米国だけでなく英国からも数万点が返還されたようですが、それは盗まれた遺物のごく一部なのだとか。

フセイン宮殿

バビロニア遺跡隣接の丘の上は、かの有名な元大統領の故サダム・フセインさんの建てた宮殿です。ここバビロニア遺跡を見下ろす絶好の立地。裏にはユーフラテス川の流れるなんとも静かで美しい眺めです。

  • 写真:toshel

内装もそのまま残っています。少し寂れた雰囲気で落書きも酷いですが、繁栄していた当時を感じることのできる素晴らしい神殿です。バビロニア遺跡のすぐ隣ですので、ぜひ寄ってみてください。

  • 写真:toshel
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バビロニア遺跡の入場料

入場料:25,000ディナール(2024/1現在およそ2,750円)

バビロニア遺跡入口の右手に大きな平屋があるので、そこへ入りチケットを購入します。パスポートの提示を求められますので必携です。

バビロニア遺跡の行き方

バグダッドから、タクシー若しくはシェアタクシーで一時間ほどです。シェアタクシーの場合は、以前ご紹介した「アラウィ・サウス・ガレージ」より片道15,000ディナール(2024/1現在およそ1,650円)。タクシーの場合はその4〜6倍です。

最後に

この地(バビロニア)では様々な歴史が繰り返されます。私の立っているこの何もない乾いた砂漠の地で、5,000年以上前にその文明が勃興し多くの人々が暮らし、様々なドラマが繰り広げられ、放棄され廃れていったことを考えるととても感慨深いです。

バビロニア遺跡
イラク / 世界遺産 / 遺跡・史跡 / 観光名所
住所:バビロニア遺跡地図で見る

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この記事を書いたトラベルライター

地球旅~現在192ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

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