木曽街道は古くから多くの旅人が行き交い、「宿場町」も今でもあちこちにあります。そんな旅人をきっと昔から癒してきたであろう、日帰り温泉「二本木の湯」は、とにかくしゅわしゅわ!天然炭酸泉が心地よいのです。
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日帰り温泉「二本木の湯」のある木曽福島とは
江戸時代、徳川家康が整備した 五街道 の一つに、中山道(なかせんどう) があります。江戸の日本橋と京都の三条大橋を結ぶ街道のこと。
その中でも、特に今の長野にある 木曽川 に沿った峠は険しかったこともあり、この辺りは 木曽路 = 木曽街道 とも呼ばれてきました。
では、徳川家康は何のために道を整備したのでしょうか? 「みんなが旅しやすい素敵な日本にするために!」…なわけありません。お江戸を防御するためです。
各地から江戸に来る、もしくは江戸から逃げる怪しい輩は 関所 で取り締まる。また、政治的情報の伝達を早くするために、長い長〜い道の各所に 宿場町 を設置しました。今でも、観光地として賑わっている宿場町がたくさんあります。
その一つが、木曽福島町にある 福島宿 。福島関所 もあります。
多くの旅人が疲れを癒した「福島宿」
江戸から京都の街道といえば、太平洋側の箱根や富士山麓を通る 東海道 もありますが、当時の江戸幕府は「入鉄炮に出女(いりでっぽうにでおんな)」という、江戸に鉄砲が入ること、また江戸の武家に人質として嫁いだ女が逃げ出すことを関所で厳しく取り締まっていたため、東海道を嫌がる人たちは、木曽路を通ったそうです。
とは言っても、中山道はぐるっと内陸を通る遠回りの道のり。険しい山道も続くため、旅人も相当疲れたことでしょう。そんな中で、木曽路の中心として栄えてきた 福島宿 は多くの旅人が立ち寄ったそう。東海道の宿場と比べると、木曽路の宿場は2割ほど安かった、というのも多くの人が通った理由かもしれません。
そんな多くの旅人が、旅の疲れを癒した宿場町の近くに、温泉がいくつかあります。「温泉街」というより、ポツンと建つ一軒家のような日帰り温泉。
今回ご紹介する「二本木の湯」もその一つ。今では、御嶽山の登山を楽しむ方や、スキー場を楽しむ方、宿場町の観光のついでにくる方などなどが訪れています。
こぢんまりとした日帰り温泉「二本木の湯」
昔の木曽路は木曽川に沿って道がありました。今はそれが 国道19号線 です。その木曽川に流れ込んでいる 黒川 の合流地点、木曽大橋 で黒川沿いの「飛騨街道西野通り」を進んでいきます。
だんだんと道は細くなり、山の緑も深くなっていくと、ふっと現れるのが「二本木の湯」。
周辺は開けた場所ではありますが、他に隣接するお店などは見当たらない、ポツンと建っている日帰り温泉です。
建物は平屋の一階建てで、洒落っ気はありません。看板も大きくはないので、知らなかったら「この鄙びた温泉は何?」とスルーしてしまうかもしれませんね。
建物の中もとってもシンプル。でも、逆にこの素朴さ、このこぢんまりさがホッとできるアットホームな感じで良いんです。
しかも、泉質が最高!日本でも珍しい 炭酸泉!
日本では貴重!泉質 「天然炭酸泉」 とは?
温泉といえば日本、と思いがちですが、実はドイツやイタリアなどのヨーロッパ諸国の方が天然の炭酸温泉 が多く湧き出していて、研究はずっと昔から進められており、一般的に広く知られています。特にドイツでは、炭酸泉の働きを利用した様々な研究や治療が盛んに行われてきたんだそう。
日本にも当然、昔から温泉が沸いていましたが、“温泉医学” という認識は江、戸時代にヨーロッパから入ってきたもの。そもそも、日本では天然炭酸温泉はとっても少ないんです。今、日本で知られている天然温泉は、昭和の初期、ドイツで温泉治療学を学んだ研究者さんたちによって見出されたものがほとんどなんだそう。
そんな日本で数少ない天然の炭酸泉 の一つが、「二本木の湯」なのです!
今では、日本でも炭酸泉の効能は研究され続けており、人工で炭酸を入れる温泉、市販で売られている炭酸が発生する入浴剤などが売られていますが、やはり天然の炭酸泉に勝るものはありません!
茶褐色でぶくぶくシュワシュワ!
とてもこぢんまりとした温泉。もともと、大勢の観光客用に作られた温泉施設ではなかったのだろうと思います。シャワーは6台ほど、湯船は1つでそれも大きくはありません。
湯船の周辺を見ると、明らかに温泉の成分であろう 茶褐色 が付いていて、本当に泉質が良いのだろうなと思ってしまいます。泉質として公表されているのは「含鉄・二酸化炭素ーカルシウムー炭酸水素塩冷鉱泉」とのこと。空気に触れると茶褐色になるんだそう。
温泉に入ると、すぐに身体中が細かい泡に包まれてびっくりします。しばらくじっとしていると、その泡同士がくっついて大きな気泡になり、ちょっと肌をなぞると、ぼこぼこっと沸き立つのがまた面白い。本当に、身体中がきめ細かいシュワシュワな泡に包まれる感覚です。
心臓に負担をかけず血行促進「心臓の湯」
温泉は心地よいのですが、長く浸かりすぎでのぼせてしまうと危険。“温泉疲れ” なんて言葉もあるように、何気に体に負担がかかってしまうものですが、「二本木の湯」のような炭酸泉は、皮膚に近い毛細血管や細動脈に炭酸ガスがしみこむ → 毛細血管が広がる → 血液の循環が良くなる とされていて、心臓に優しい「心臓の湯」とも呼ばれているんだそう。
しかも、温泉の温度は少し低め。40℃くらいでしょうか。源泉の温度が低いため、加熱しているからぬるめで浸かれるんですね。だから、長く湯に浸かっていても、のぼせる感じはなく、快適に浸かっていられます。(しかし、長すぎるのは要注意)
木曽の山々が眺められる食事処や憩室
施設には、広々とした畳の休憩室があり、ゆっくりと風呂上がりに休憩することができます。もちろん、飲食もOK。
食事処としても使えて、軽食も食べられます。瓶ビールは650円、枝豆100円といった逸品料理と、お食事系は丼と蕎麦やうどんです。(価格は2023年9月現在)
温泉は露天風呂がありませんが、休憩室からは雄大な森林の光景が眺められます。筆者が訪れたのは真夏でしたが、新緑や紅葉の季節も素晴らしい光景になると思います。
新鮮で安い!地元の野菜売り場
食事の受付窓口には、ワゴンにたくさんの野菜や果物が。地元の農家さんが育てたものがいっぱいです。
何よりびっくりなのは、その価格! この日は1個(1袋)が全て100円です。ピーマンやトマトは袋にたっぷり、大きなとうもろこしも、夏あかりも2つで100円、思わず手が伸びてしまいますね。
ホームページなどに割引クーポンあり
一般料金は、大人620円 小人410円 幼児無料(2023年9月現在) ですが、各種割引、HP、JAF、ジョイセブン、ハートフル、ゆらん、楽園信州 で大人550円 小人350円 になります。
最後に・・・
最近よく見かけるような広々とした温泉施設ではありませんが、木曽の山々に囲まれた小さな温泉で、泡に包まれてみてはいかがでしょうか。しゅわしゅわと心地よいひとときが過ごせると思います。
- 二本木の湯
- 木曽町(木曽郡) / 日帰り温泉
- 住所:長野県木曽郡木曽町新開6013−1地図で見る
- Web:http://www.nihongi-spa.com/