日本からわりと近くにありながら、あまり知られていないモンゴル。チンギスハーンやお相撲さんは有名ですが、そのほかにも興味深い要素がたくさん詰まっています。そんなモンゴルのちょっと変わったお話をまとめました。雑学として知っておくと、旅がより楽しくなるかもしれません。
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ラクダが涙を流す、遊牧民の伝統の歌
遊牧民にとって家畜の世話をすることは重要な仕事です。特に注意を払うのは出産シーズンとなる春ですが、長く厳しい冬が終わった後は、春の嵐がやってくるため決して穏やかではありません。そんな中で出産をした家畜は、疲労から育児放棄を始めることがあります。そんなとき、遊牧民が母親にうたを歌って聴かせると、不思議なことにを子供に乳を与えはじめます。
歌詞は家畜の種類によって変わり、ラクダは「ホゥース ホゥース」、馬は「グリー グリー」、牛は「ウーヴ ウーヴ」羊とヤギは「トイゴ トイゴ」と、知ってる曲のメロディーに乗せて歌い続けます。特にラクダは目から涙を流し、子を慈しんでいるかのような姿を見せるそうです。これは遥か昔から続いている遊牧民の美しい伝統文化です。
死後の埋葬場所は占いで決める
モンゴルでは、人が亡くなった後は火葬・土葬・風葬などの方法で埋葬しますが、どんな方法を取るかやお墓の場所などは、お坊さんの占いによって決めるそうです。ウランバートルにあるゲセル寺院は、死後の行き先を占うことで有名です。
お坊さんは天国で安らかに暮らし、また生まれ変わるために適した方向を示してくれますが、先祖代々同じ墓に入ることは基本的にはありません。それならお墓参りが大変なのでは?と思ってしまいますが、モンゴルには日本のように、定期的にお墓参りをする習慣はないようです。
サンタにそっくりのおじいさん登場する12月
12月に入ると、モンゴルではあちこちで「ヨールク」と呼ばれるパーティーが開催されます。ヨールクとは「クリスマスツリー」という意味のロシア語ですが、チベット仏教国であるモンゴルでは25日がクリスマスという認識はなく、新年を迎えるためのパーティーが年明けまで続きます。
そのため年越しのタイミングでもジングルベルが流れ、青い服を着た白髭のおじいさんが子供たちにプレゼントを配ります。このおじいさんはサンタクロースによく似ていますが、実はサンタではなくロシアに伝わる物語の登場人物で、大空と雪をイメージした青と白の衣装を着ています。他国とは異なる独特なクリスマスの雰囲気が創り出されています。
大晦日には玄関に3つの氷を置く
モンゴルの冬はとても厳しいため、春を祝う「旧正月」は一年で最も重要なイベントです。その旧正月の大晦日にはご馳走の準備が行われ、遊牧民の家である「ゲル」の入口の上には、氷か固まった雪が3つ置かれます。これは神の使い「ルース」に捧げる飲み物。幸運をもたらす神は、このルースに乗ってやってくるそうです。
ちなみにルースとは馬とロバの合いの子であり、一瞬で地球を三周できるほどの強大なパワーを持っているそうです。モンゴルの旧正月を体験するツアーも多いので、機会があれば参加してみると面白いかもしれません。
朝、ミルクを空高くに放る
家畜の乳を沸かして作る「スーテーツァイ」は、日本でいえば緑茶のような定番の飲み物です。モンゴルでミルクは神聖であり、お供え物としてもよく使われますが、遊牧民は毎朝スーテーツァイを空に放ち、空や山や大地の神に祈りを捧げます。
やり方は朝スーテーツァイを作ったら、まずは一杯分を器に注ぎ、外へ出て家族の健康と繁栄を祈りながら空高く放ります。自然と共存しながら生きる遊牧民は、このように常に神への感謝を忘れません。
魔除けを意味する顔のすみ
夜に小さな子供を連れて外出するとき、鼻筋に黒いすみをつけることがありますが、これは「悪魔が近づかないように」という意味の魔除けで、昔話に由来しています。
昔々、二人の悪魔が赤ん坊をさらおうと計画し、魔力で夫婦を仲たがいさせ、母が赤ん坊を連れて出て行くところを奪い去る作戦を立てたのです。ですが何かを察した母は、出かける前にストーブのすみを赤ん坊の鼻筋にスッとひいたそうです。すると鬼は黒い鼻のウサギと見間違え、赤ん坊はさらわれることなく無事に過ごせたというお話です。
そのほかにも子供は汚れた格好をしていると、悪魔が近寄らないといわれています。近年では都市化が進み、きれいな服を着た子供も増えましたが、郊外の子供たちは泥だらけになるのをまったく気にせず、元気に走り回って遊んでいます。