近年、何かと物騒なニュースの多かったパキスタンですが、ここにきて治安は好転し、穏やかな日々が戻りつつあります。先日は、ノーベル平和賞を史上最年少で受賞したマララさんも、数年ぶりに一時帰国しました。パキスタンの歴史は紀元前に遡ります。世界四大文明でもあるインダス文明や、ガンダーラ王国、19世紀後半まで存続した長期政権ムガル帝国など、世界的に影響を与えた歴史が点在し、その遺産を残す観光大国でもあるのです。今回は、ムガル帝国の首都にもなったラホールの、歴代皇帝が愛してやまなかった建築物をご紹介します。
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ラホールとムガル帝国
パキスタンとインドの国境にほど近いラホールは、パキスタン第二の都市です。
その昔、若干13歳にしてムガル帝国の第三代皇帝となったアクバルは、いくばくかの戦いを制して政権が安定すると、1584年、ラホールを首都に定めます。壮大な砦の建設を始め、城塞の中にはモスクや王宮が建設されました。
アクバルが亡くなると、その後に続く歴代皇帝もこの地で次々と建設を拡張しため、ラホールにはムガル帝国時代の多くの歴史的建築物が遺りました。ラホールは、パキスタンを代表する文化と芸術の中心地として、国内外の旅行客の絶たない観光地となっています。
旧市街の見どころ
ラホール・フォート(Lahore Fort)
ラホールの観光名所として最も有名なラホール・フォートは、ムガル帝国の第三代皇帝アクバルが、ここを首都に定めて最初に着手した建築物です。
市内を流れるラーヴィー川を望む城塞は、その昔すぐ下を流れていたそうで、天然のお堀となっていました。今は流れが変わってしまいましたが、遠くに臨める景色が美しいです。
それでは、フォートへの門をくぐります。
城塞の門が高く、道幅ゆったりと作られているのは、当時、象を通すためでした。
城塞の中には庭園が広がります。
建築物と建築物の間にスクエアが必ずあり、今は噴水ですが、当時は踊り子が舞い、皇帝やその周りの人を楽しませていたそうです。
こちらのMotiモスクは、パールモスクとも呼ばれています。白い大理石で造られており、この城塞の中でもひときわ存在感を放っています。
城塞への入り口はいくつかります。
現在は閉鎖されていますが、こちらのアラムギリ・ゲートはラホール・フォートへの主要なゲートです。
パキスタンはイスラム教を国教とする国ですが、歴史的な建築物のなかには、ヒンズー教の要素が入っているものもあり、世界的に見ても建築様式は独特です。
- 入場料:500ルピー(約500円)(2018/4/10現在)
バードシャーヒー・モスク(Badshahi Mosque)
ラホール・フォートのすぐ西に、バードシャヒー・モスクがあります。現地のウルドゥ語で「皇帝のモスク」という意味があり、ムガル帝国第六代皇帝のアウラングゼーブの名により1671年から建設を始め、2年で完成。その当時は世界最大のモスクでした。
それでは入ってみましょう。靴をこちらで預け、番号札を受け取ります。
入り口はこちら。
色の使い方が地味であるものの、華やかさを感じられるデザインの壁画です。
バードシャーヒー・モスクは中庭に10万人を収容でき、今(2018/4/10現在)でも世界で5番目に大きいモスクです。
北インドを訪問された方なら「あれ?見たことある。」と思われるかもしれません。この壁の色、建築様式、似た宮殿がインドにもあります。
ミナレットは60メートルの高さのものが4本、中庭を囲むように建っています。
渡り廊下は大理石。風が心地よいです。
天上や壁画は繊細で、女性らしい印象を受けます。
外壁に沿うように造られた廊下からは、ランジット廟。ムガル帝国よりずっと後に、この地を治めたランジット・シングの廟で、とても美しい外観なうえ、内装も素晴らしいそうです。2018/4現在、改修工事のため観光客は入れません。
- バードシャーヒー・モスク
- パキスタン / 社寺・教会
- 住所:Badshahi Mosque, Walled City, ラホール, パンジャーブ パキスタン地図で見る
それでは、フォートの周りを散策してみます。
カオスな旧市街
ラホール・フォートの周囲にはは、旧市街が迷路のように広がっています。
インドへ行かれたことがある方でしたら、同様のカオスをイメージいただいてよいかと思います。人も多いですが、バイクにリキシャ、ヤギや鶏が入り乱れ、ある意味活気が漲っています。道路わきの店は隙間なく続き、様々な物が売られていますので、散歩するのも楽しいです。
イスラム教の国ですので、女性の服装は基本的にヒジャブ&ブルカです。とてもカラフルなうえ、デザインも凝っていて素敵です。これらの布を売っているお店は多くあり、どこも女性客で賑わっています。
マスジッド・ワザー・カーン(Masjid Wazir Khan Mosque)
旧市街の狭い道路を20分ほど南へ歩くと、こじんまりとしたモスクが現れます。よく見ていないと通り過ぎてしまうほど、外観に存在感がないです。しかし、中へ入ってみると華麗に装飾された建築物がお出迎え。
ここは、ムガル時代のモスクとしては、複雑なスタイルの建築として知られており、内装はムガル帝国時代のフレスコ画のみを使用された優美なモスクです。
こちらは、重要な文化財として、ドイツ、ノルウェー、アメリカより資金を得て、近年大幅に修復されました。
- マスジッド・ワザー・カーン
- パキスタン / 社寺・教会
- 住所:Shahi Guzargah, Chota Mufti Baqar Walled City, Lahore, Punjab, パキスタン地図で見る
それではここで、フォートのある旧市街を離れます。