京都府南部にある、人口約7万人、面積約24平方キロメートルの八幡市。小さな市ですが、意外と社寺などの観光名所もあり、なかでも石清水八幡宮は国宝に指定されているほどなんです。今回はこの石清水八幡宮について紹介します。ケーブルカーで登って美しい彫刻のある本殿を鑑賞した後は、名物の和菓子をいただいてみましょう。
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石清水八幡宮とは
石清水八幡宮は、京都と大阪の間に位置する、八幡市の男山山頂に鎮座している神社です。平安時代の初め頃、南都大安寺の僧、行教和尚は、大分県の宇佐八幡宮にこもって日々熱心に祈祷をおこなっていました。
そのとき、八幡大神様の「吾れ都近き男山の峯に移座して国家を鎮護せん」とのお告げがあったため、貞観元年(859年)男山の山頂に、神霊を安置しました。翌貞観2年、朝廷は男山に八幡造りの社殿を完成させます。これが石清水八幡宮の始まりとされているのです。
石清水八幡宮は、京の都から見て南西方向の裏鬼門に位置し、鬼門にある比叡山延暦寺とともに、都や国家鎮護の神社として、崇められました。今日では、特に厄除開運の神社として、多くの参拝客を集めています。
男山ケーブルで、山上の石清水八幡宮へ
石清水八幡宮は、標高143メートルの男山にあります。こちらまでは「男山ケーブル」というケーブルカーで登ることができます。京阪電鉄の八幡市駅を降りてすぐの場所にあり、連絡きっぷも販売されています。
ふもとの八幡市駅から男山山上駅までは、約3分で結んでいます。発車するとすぐ、急勾配の斜面を登っていきます。初夏には線路沿いにたくさんのアジサイが咲き、参拝客の目を楽しませてくれます。
たった3分の乗車ですが、トンネルあり、鉄橋ありの変化に富む車窓で、所要時間以上の満足感があります。山上が近くなってくると、淀川に注いでいる宇治川、木津川、桂川や京都市郊外の町並みが眺められるようになります。
男山山上駅から本殿までは徒歩5分程度です。少し坂道が続きますが、野鳥のさえずりを聞きながら、森林浴気分で歩くと気持ちが良いですよ。
- 男山ケーブル
- 宇治・長岡京・木津川 / 乗り物
- 住所:京都府八幡市八幡高坊2地図で見る
- 電話:06-6945-4560(京阪電車お客様センター)
- Web:https://www.keihan.co.jp/traffic/traintraffic/otok...
国宝「石清水八幡宮」の境内を散策しよう
境内には、国宝に指定された社殿が立ち並んでいます。鮮やかな漆塗りの本殿には、彫刻も施されており、時間をかけて眺めたいところです。樹齢700年前後の立派な巨木が、現在も御神木として大切にされている姿も見てみてください。
本殿への玄関口「南総門」
こちらは、南総門です。本殿への玄関口となる建造物です。南総門の手前に見えている大きな木は、カヤの木で、樹齢約700年、樹高約20メートルにもなる巨木です。秋には実がなりますが、年に一度の祭典「石清水祭」では、この果実を神棚へのお供え物である「神饌」として使用しているそうです。
欄間彫刻が見事な「本殿」
南総門をくぐると、御本殿が見えます。本殿は、前後二つの棟(内殿・外殿)をつなぎ合わせた「八幡造り」という建築様式で建てられています。
元々の本殿は、貞観元年(859年)に建てられたものでしたが、以後造営、修理が繰り返され、現在のものは寛永11年(1634年)に、徳川家三代将軍の家光によって造営されたものだそうです。
中央にある楼門を眺めてみましょう。鮮やかな朱色が美しいですね。御本殿はすべて丹漆(たんしつ)という赤いうるしで塗られているそうです。
楼門の見どころは、何と言ってもこの鮮やかな欄間彫刻です。狛犬の配置と同じように、神の使いである鳩が向かい合っており、その上には龍と虎の美しく色鮮やかな彫刻が施されているのです。
欄間彫刻は、御本殿を囲む瑞垣(垣根)にも施されています。その数は150点以上にもなり、なかには「かまきり」、「りすとぶどう」といった動植物の彫刻がされているものもあります。
御本殿は廻廊でぐるっと囲まれているのですが、この長さは約180メートルもあるのだそうです。本殿の奥行きがあることが分かりますね。
本殿横にそびえるクスノキの巨木
御本殿横には、クスノキの巨木があります。男山にはクスノキの巨木があり、京都府指定天然記念物にもなっていますが、最大のものは樹高30メートル、木の根の周囲は18メートル、葉の茂っている部分「樹冠」は、40メートルにもなるそうです。
裏参道の先には展望台も
社務所の横から裏参道を進むと、展望台に行くことができます。淀川に注ぐ木津川、宇治川、桂川と、その向かいにある天王山が眺められ、低い山ながら景色は良好です。天気が良ければ京都駅そばの京都タワーまで見えるそうですよ。
- 石清水八幡宮
- 宇治・長岡京・木津川 / 神社 / ハイキング / 竹林 / ツーリング
- 住所:京都府八幡市八幡高坊30地図で見る
- 電話:075-981-3001
- Web:http://www.iwashimizu.or.jp/top.php
参拝後は、やわた走井餅老舗で「走井餅」を
参拝のあとには、名物の和菓子を食べてひと息つきませんか?やわた走井餅老舗の走井餅(はしりいもち)は、古くから八幡の門前名物として多くの人に親しまれてきたお餅です。
滋賀県の大津で江戸時代中期に創業した走井餅は、「走井」という湧き水で作られていました。六代目には、同じく名水で有名であった石清水へ引き継がれ、この地で今日も走井餅が作られています。
こちらが走井餅です。少し細長い形をしていますね。これは刀の鞘におさまる部分、すなわち「刀身」を模したものなのだそうです。
平安時代の著名な刀鍛冶「三条小鍛冶宗近」が走井ですぐれた刀剣を作り出していたという歴史から、刃物による災難を避けたり、開運や出世の縁起を担ぐため、このような形になったと言い伝えられているそうです。
筆者はグリーンティと走井餅のセット(550円)をいただきました。あっさりとした甘さの走井餅は、グリーンティーの風味を邪魔せず、美味しくいただけます。
暑い時期にはこちらがおすすめ。かき氷に走井餅が添えられた「走井餅しぐれ」(650円)です。ひんやりとした走井餅はまたひと味違ったおいしさが感じられます。
- やわた走井餅老舗
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- 住所:京都府八幡市八幡高坊19地図で見る
- 電話:0120-76-0154
- Web:http://www.yawata-hashiriimochi.com/
おわりに
石清水八幡宮周辺は、大都市近郊にありながら、自然が残っており、境内には神聖な雰囲気が漂っています。都会の喧騒から離れ、山上を散策すると気分転換になるでしょう。
ケーブルを利用すれば楽に上り下りできますが、参道には霊泉「石清水」が湧く石清水社、厄除けの木とされる御神木「タブの木」など、いくつかの見どころがあります。片道だけ参道を歩いてみるのも良いかもしれませんね。