青森
青森観光
自然景勝地を多く有する、日本一のりんご生産地

死者への想いを預けに行く・霊場恐山と宿坊吉祥閣

取材・写真・文:

東京在住
訪問エリア:43都道府県

2019年6月6日更新

4,186view

お気に入り

この記事の目次表示

恐山の宿坊、「吉祥閣」

  • 写真:熊猫宿坊吉祥閣の外観。

恐山には吉祥閣という曹洞宗の宿坊があります。とても清潔で立派な宿坊です。故人への思いを預けに行く旅は、ゆっくりと故人を思い出す時間が過ごせるよう、宿坊「吉祥閣」への宿泊をおすすめします。

曹洞宗といえば、厳しい修行が特徴です。とりわけ、曹洞宗本山である「永平寺」の宿坊は宿泊者に対しても厳しい規律が求められますが、恐山の吉祥閣はそれほど厳格ではありません。

宿泊料は1泊2食付きで一人1万2,000円(個人の場合)。会計は現金のみの取り扱いです。宿泊の予約は1周間前までに電話などで行います。なお、恐山の入山にあたっては別途、500円の入山料が必要です。

  • 写真:熊猫宿坊吉祥閣のエントランス。

精進料理で心を清める

  • 写真:熊猫宿坊吉祥閣の夕食。

吉祥閣での食事は仏教の戒律に基づいた精進料理をいただきます。仏教において殺生は禁止されているため、精進料理に肉や魚が出ることはありません。料理のお出汁も一般的なかつお出汁ではなく、しいたけなどから丁寧にひいたものが使われています。質素な食事は普段のわたしたちの日常の振り返りにもなります。

動物や魚の命をいただきながら生きているわたしたち。何気なしに毎日いただいている食事を考えさせてくれる機会でもあります。夕食は17時30分、朝食は7時30分に宿泊者全員でいただきます。

  • 写真:熊猫宿坊吉祥閣の朝食。

南直哉師の法話

宿坊の宿泊者は、食事の後19時より、南直哉師の法話を聞くことができます。法話といえば仏法を説く説教のことですが、南師の法話は一般的な法話とはまるで違います。講談のようであり、落語のようでもあり、ぐいぐいとお話しに惹きつけられます。

ただ、面白いだけではありません。何故、人は故人を想い、生きていくのか。その意味を説いてくれます。心に沁み入る南師の法話は、とても貴重な時間になることでしょう。

温泉地としての恐山

  • 写真:熊猫薬師の湯の浴場内。

宿坊吉祥閣の内湯も含めれば、恐山菩提寺の境内には全部で5つの温泉があります。冷抜(ひえ)の湯、古滝(こたき)の湯、薬師(やくし)の湯、そして花染(はなぞめ)の湯はそれぞれ小屋が湯殿になっています。

  • 写真:熊猫冷枝の湯(右)と古滝の湯(左)。
  • 写真:熊猫薬師の湯の外観。

泉質は硫化水素含有酸性緑ばん泉。お湯の色は白濁しており、やや緑がかっているようにも見えます。湯花が多いのも特徴です。冷抜の湯、古滝の湯、薬師の湯は境内の真ん中にあり、花染の湯は宿坊の裏手に設けられています。なお、花染の湯は男女混浴です。

  • 写真:熊猫花染の湯の外観。

朝のお勤めと死者供養

恐山の朝はお勤めからはじまります。本堂と地蔵堂の2箇所で朝の勤行が行われます。宿泊者だけでなく、朝早くから入山した方も含めて手を合わせます。本堂での読経はテンポが早く、独特のリズムの木魚と太鼓によってこの世のものとは思えない場所にいるような心持ちになります。逝ってしまった人を思い出しながら合掌していると、本州最果ての地まで来たことに不思議な気持ちを覚えます。

恐山宿坊吉祥閣
青森 / その他宿泊施設
住所:青森県むつ市大字田名部字宇曽利山地図で見る
電話:0175-22-3825
Web:http://mutsu-kanko.jp/guide/osorezan_annai.html

まとめ

本州の北の最果てにある霊場恐山。新幹線は新青森駅、飛行機ならば青森三沢空港から向かうことになりますが、そこから先の道中もまだまだ長く、決して誰もが簡単に行ける場所ではありません。

しかしながら、故人を想い、故人に会いたいと念じ、恐山に辿り着くと何か心に引っ掛かっていた棘のようなものがスッととれるような気持ちを覚えるでしょう。そして、荒涼とする山に立つと、こう聞こえてくるような気がするのです。「よく来てくれたね」と。

次のページを読む

青森の旅行予約はこちら


青森のパッケージツアー(新幹線・飛行機付宿泊プラン)を探す

青森のホテルを探す

青森の航空券を探す

(青森空港)

(三沢空港)

青森の現地アクティビティを探す

青森のレンタカーを探す

青森の高速バスを探す

この記事で紹介されたスポットの地図

関連するキーワード

※記事内容については、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

あなたにオススメの記事

同じテーマの記事


日本の最強パワースポット24選!神社やゼロ磁場、自然のパワースポットも

日本の総氏神のように信仰される天照大御神をお祀りする伊勢神宮や、”願いが叶うパワースポット”として有名な来宮神社、全体が最強パワースポットと言われる皇居など、日...


三途の川の先の世界を疑似体験!?青森の霊場「恐山」

本州北の果て、青森県下北半島にある霊場・恐山。“三途の川”や“地獄”、“極楽”を彷彿とさせる風景が広がり、まるで死後の世界を疑似体験するようです。この記事では、...

【日本】大自然に癒される!自然のおすすめパワースポット22選

幻想的な光景がジブリの世界のようだと話題の「亀岩の洞窟」や、東洋のナイアガラと言われる「吹割の滝」、大地のパワーを感じる「大観峰」など、大自然に癒される、日本全...

十和田湖を訪れるなら十和田神社で「おより紙」に願掛けしてみよう!

青森県と秋田県にまたがる位置にある十和田湖。三湖伝説の一つにもあげられる十和田湖は、秋田県にある田沢湖と同じような伝説を持っている神秘的な場所でもあります。そん...

広さ約22万坪!古牧温泉「星野リゾート青森屋」で過ごす贅沢な時間

青森県三沢市にある古牧温泉「星野リゾート 青森屋」は、この地を代表する一大リゾート施設。広大な敷地にはオリジナリティ溢れる温泉をはじめ、有形文化財の「旧渋沢邸」...

この記事を書いたトラベルライター

さすらいびと
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕日を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうにつたえるかって?」
「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いてみせるか、いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって…。その夕日を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」 星野 道夫「旅をする木」(文春文庫)より
https://blog.goo.ne.jp/kumaneko71

140円の鉄道旅「大回り乗車」で楽しむ首都圏1都3県のグルメ旅

JR各社の大都市近郊区間内の特例として、遠回りしながら目的地に行く「大回り乗車」というものがあります。初乗り料金のたった140円でぐるりと関東地方を一周すること...


140円の鉄道旅・大回り乗車で楽しむ東京〜千葉・絶品の駅そば巡り

大回り乗車をご存じでしょうか。JR各社の大都市近郊区間内の特例として、運賃上正式な乗車ルートではない路線を利用し、遠回りして目的地に行く乗車方法のことです。この...


うどんだけじゃない。高松名物「骨付鳥」は、CAも通う「蘭丸」がおすすめ

高松といえば、讃岐うどん。でも、もうひとつの名物「骨付鳥」はあまり知られていません。文字通り、鳥の骨付きもも肉を焼いたもので、スパイシーな味付けが特徴です。近年...

【福井】永平寺の修行体験 1泊2日の参籠で心を整える

旅行ガイド『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』において二つ星がつけられるなど、国内外から注目を集める永平寺。でも観光で訪れるだけとは、なんとももったいない。...

階段降りたら2秒でアジア。アジア食材・調味料が揃う「アメ横センタービル・地下食品街」

今、東京でも屈指の多国籍タウンになりつつある「アメ横」。今回は、色々な国の様々なエッセンスが薫る商店街の中でも、とりわけホットなスポットとして注目を集めている「...

トラベルライターインタビュー Vol.3 Emmyさん

【トラベルライターインタビューVol.3】一人旅を応援する記事を多数執筆!Emmyさんならではの人気記事執筆のコツやその原動力に迫ります