この記事の目次表示
恐山の宿坊、「吉祥閣」
恐山には吉祥閣という曹洞宗の宿坊があります。とても清潔で立派な宿坊です。故人への思いを預けに行く旅は、ゆっくりと故人を思い出す時間が過ごせるよう、宿坊「吉祥閣」への宿泊をおすすめします。
曹洞宗といえば、厳しい修行が特徴です。とりわけ、曹洞宗本山である「永平寺」の宿坊は宿泊者に対しても厳しい規律が求められますが、恐山の吉祥閣はそれほど厳格ではありません。
宿泊料は1泊2食付きで一人1万2,000円(個人の場合)。会計は現金のみの取り扱いです。宿泊の予約は1周間前までに電話などで行います。なお、恐山の入山にあたっては別途、500円の入山料が必要です。
精進料理で心を清める
吉祥閣での食事は仏教の戒律に基づいた精進料理をいただきます。仏教において殺生は禁止されているため、精進料理に肉や魚が出ることはありません。料理のお出汁も一般的なかつお出汁ではなく、しいたけなどから丁寧にひいたものが使われています。質素な食事は普段のわたしたちの日常の振り返りにもなります。
動物や魚の命をいただきながら生きているわたしたち。何気なしに毎日いただいている食事を考えさせてくれる機会でもあります。夕食は17時30分、朝食は7時30分に宿泊者全員でいただきます。
南直哉師の法話
宿坊の宿泊者は、食事の後19時より、南直哉師の法話を聞くことができます。法話といえば仏法を説く説教のことですが、南師の法話は一般的な法話とはまるで違います。講談のようであり、落語のようでもあり、ぐいぐいとお話しに惹きつけられます。
ただ、面白いだけではありません。何故、人は故人を想い、生きていくのか。その意味を説いてくれます。心に沁み入る南師の法話は、とても貴重な時間になることでしょう。
温泉地としての恐山
宿坊吉祥閣の内湯も含めれば、恐山菩提寺の境内には全部で5つの温泉があります。冷抜(ひえ)の湯、古滝(こたき)の湯、薬師(やくし)の湯、そして花染(はなぞめ)の湯はそれぞれ小屋が湯殿になっています。
泉質は硫化水素含有酸性緑ばん泉。お湯の色は白濁しており、やや緑がかっているようにも見えます。湯花が多いのも特徴です。冷抜の湯、古滝の湯、薬師の湯は境内の真ん中にあり、花染の湯は宿坊の裏手に設けられています。なお、花染の湯は男女混浴です。
朝のお勤めと死者供養
恐山の朝はお勤めからはじまります。本堂と地蔵堂の2箇所で朝の勤行が行われます。宿泊者だけでなく、朝早くから入山した方も含めて手を合わせます。本堂での読経はテンポが早く、独特のリズムの木魚と太鼓によってこの世のものとは思えない場所にいるような心持ちになります。逝ってしまった人を思い出しながら合掌していると、本州最果ての地まで来たことに不思議な気持ちを覚えます。
- 恐山宿坊吉祥閣
- 青森 / その他宿泊施設
- 住所:青森県むつ市大字田名部字宇曽利山地図で見る
- 電話:0175-22-3825
- Web:http://mutsu-kanko.jp/guide/osorezan_annai.html
まとめ
本州の北の最果てにある霊場恐山。新幹線は新青森駅、飛行機ならば青森三沢空港から向かうことになりますが、そこから先の道中もまだまだ長く、決して誰もが簡単に行ける場所ではありません。
しかしながら、故人を想い、故人に会いたいと念じ、恐山に辿り着くと何か心に引っ掛かっていた棘のようなものがスッととれるような気持ちを覚えるでしょう。そして、荒涼とする山に立つと、こう聞こえてくるような気がするのです。「よく来てくれたね」と。