2021年4月、開館10年を契機に開館以来初めてとなる常設展示作品の入れ替えが行われました。新たな魅力が詰まった十和田市現代美術館へ行ってみませんか?
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十和田市現代美術館とは?
十和田市現代美術館は、十和田市の歴史・自然・地域のもつ活力を引き出し、未来へつなげていくような仕掛けを随所に盛り込むことで、十和田市を個性あふれる「アートのまち」として国内外の多くの人々に印象づけることを目指し、2008年に開館(アート広場を含めた開館は2010年)しました。
美術館だけでなく、美術館向かいのアート広場や、ストリートファニチャーを設置した通りなど、屋外空間をを含めた周辺全体をひとつの美術館に見立て、多様なアート作品を展開するという、世界でも稀な試みを行っています。
青森、十和田という都市から少し離れた場所にあるにも関わらず、国内外問わず遠方からわざわざ来訪する人が絶えません。また地域住民向けのイベントも行うなど、地域貢献や文化芸術活動の支援や交流を促進する拠点にもなっています。
魅力的な常設展示
世界で活躍するアーティストらによる常設展は、ここでしかみることができない作品が展示されています。
最初の展示室に足を踏み入れると、大迫力で佇んでいる高さ4m近くある女性像が姿を現します。その大きさに初めは圧倒されますが、よく見ると髪の毛や皮膚の皴など細部に至るまでかなり緻密に再現されています。
また、巨大なシャンデリアのような作品は、赤、オレンジ、透明のグラデーションが美しく、よくみるとその一つひとつはガラス製の人形が連なっていることが分かります。
他にも奈良美智、オノ・ヨーコなど著名なアーティストの作品や、五感を使って楽しむ少し変わった作品も多く、インパクトのある展示が多いのもこの美術館の特徴でもあります。
2021年から新たに展示されている作品
開館10年を契機に開館以来初めてとなる常設展示作品の入れ替えが2021年3月に行われました。人気の現代美術アーティストの塩田千春さん、名和晃平さんの作品、そして2021年12月からはアルゼンチン人アーティストのレアンドロ・エルリッヒさんの作品も公開されます。
塩田千春『水の記憶』
ベルリンを拠点に活動する塩田千春さんは、“生きることとは何か”、“存在とは何か”を探求しつつ、その場所やものに宿る記憶といった不在の中の存在感を、糸で紡ぐ大規模なインスタレーションを中心とした作品を制作しています。2019年の森美術館で行われた個展『魂がふるえる』は、注目を浴びました。
十和田市現代美術館の常設展示のため、こちらの新作を制作。美術館のある十和田市の名所である十和田湖に着想を得て、水に浮かびながら時間と記憶を運んでいく船を、この場所に繋ぎとめるように赤い糸で編んだ作品です。
赤い糸は、幾重にも重なり絡まりながらもピンっと張った状態となっていて、天井のライトと糸がもたらす影も作品を彩っています。
名和晃平『PixCell-Deer#52』
名和晃平さんの代表作でもある「PixCell」シリーズが寄託作品として、2023年9月までの期間限定で展示されています。インターネットを介して集めた動物の剥製などの表面を透明の球体で覆った彫刻作品です。
作品が球体のレンズ効果によって拡大され歪曲されていますが、現代の情報社会はインターネットを介して見る(「ピクセル」を介して見る)ことしかできず、触覚的にも視覚的にも捉えることができないことを表現しているそうです。
遠くから見ると大小のガラス玉がキラキラと反射し綺麗で、近づくと動物のはく製がベースだと分かる一方で、本来のはく製をはっきりととらえることが難しいと感じます。
見逃せない街に飛び出す作品
美術館の道路向かいにあるアート広場や通りには、街へと飛び出したアート作品が点在しています。屋外の体験型のアート作品なので誰でも触ったり、中に入ったりすることができます。
色鮮やかな水玉世界が広がっている草間彌生さんの作品は、カボチャ、少女、キノコ、犬たちの8つの彫刻群で構成されていて、草間彌生のこれまでにない規模をもつ屋外彫刻作品です。彼女の代表作とも言える水玉のかぼちゃは、日本各地にありますが、ほかの場所では写真を撮るために列をなすほど人気です。
- 出典:www.flickr.com「ファット・ハウス/ファット・カー」エルヴィン・ヴルム
ぶくぶくと太った家と車が印象的なオーストラリアのアーティスト、エルヴィン・ヴルムさんの作品。常識的に家や車は太ることなどないはずですが、プクプクとしたその愛らしさは、ユーモラスに人間の価値観や常識に疑問を投げかけている作品だそうです。
- 十和田市現代美術館
- 青森 / 女子旅 / 観光名所 / 美術館 / 遊び場 / インスタ映え
- 住所:青森県十和田市西二番町10-9地図で見る
- 電話:0176-20-1127
- Web:http://towadaartcenter.com/
この記事を書いたトラベルライターから一言
筆者自身、約10年ぶり2度目の訪問となりました。こじんまりとしながらも、たくさんの現代美術と触れることができます。時期にもよりますがアクセスのよい都市部の美術館や、有名で人気の美術館よりも混雑が少なく、ゆったり楽しめるのでおすすめです。展示では、常設展が新しく入れ替わり魅力がさらにましていました。2021年現在は海外からの来訪者も少ないですので、ゆっくり鑑賞するなら今がチャンスなのではないでしょうか。(dory)