たくさんのお由緒ある寺院が立ち並ぶ古都鎌倉。そんな寺院のなかでも「鎌倉五山」と呼ばれるお寺をご存知でしょうか?鎌倉時代に制定された5つの禅寺で、日本で最初の禅寺である「建長寺」がその筆頭に立っています。鎌倉幕府が五山のひとつに定めた建長寺は、これぞ「禅」と言える見どころが、わんさか詰まっています。語っても語っても語っても語りつくせない禅寺「建長寺」。「禅」に興味のある方は、まずはここを訪れなければ、禅を語ることはできませんよ~?
この記事の目次表示
禅寺ってそもそも一体なあに?
禅寺と言われても、そもそもどういったお寺を禅寺というのかご存知ですか?
坐禅を組んだ人の後ろに、細長い板を持ったお坊さんがあらわれて、肩のあたりを「パシッ」とたたく。そんな修業をしているのが禅寺というイメージで、実は何なのかよく知らない、という方がほとんどではないでしょうか。
禅宗は、鎌倉時代に一大ブームがわき起こりました。鎌倉時代は、それまで貴族が統治していた社会から、源頼朝に台頭される武士がおさめる世の中へと変わった時代でした。
禅とは、心を澄まして、自分の中にある真理を知るという教えで、その活動は、自分の心の内へ内へと向かいます。おのずと自分の心の外にある生活は質素になり、それが華美生活を好んでいた貴族とは違い、質素な生活をしていた武士社会に受け入れられ、ブームへとつながったのです。
こうして、全面的に武士社会に受け入れられた禅寺は、幕府によってオフィシャルな寺が制定されました。
鎌倉時代に制定された寺を「鎌倉五山」と言います。名が示すとおり5つあり、「第1位 建長寺」「第2位 円覚寺」「第3位 寿福寺」「第4位 浄智寺」「第5位 浄妙寺」と位と共に制定されました。
第1位の建長寺は、日本で最初の禅寺です。「禅」を知るなら、まずは建長寺を見るべきというのはこういう理由から。
いままで何となくしか知らなかった禅寺。さあ、それでは「建長寺」をまわりながら禅寺の理解を深めていきましょう!
勢いあふれる総門
建長寺にはいくつかの門があります。先ほどの「五山第一」と書かれた天下門をくぐると、今度は総門があらわれます。
総門の見どころは、頭上に掲げられた「巨福山」の文字。字をよ~く見てください。「巨」の文字に違和感を感じませんか?
巨の下の部分に、点が打ってあります。
これは、昔の住職が山号を書くときに、勢い余って巨に点を余分につけてしまったのです。
文字の正確さよりも、「意外といいじゃん!」的な粋な判断により、そのまま掲げられることとなりました。
点を打ったことにより、文字が引き締まって見えることから、百貫(貫は昔の重さの単位。百貫は現代の単位に直すと約375キロ。)の価値があるものとされ、「百貫点」とも呼ばれています。
ところで、山号って何なのかご存知ですか?「巨福山」のように、お寺には「〇〇山」という名前が付けられていて、これを「山号」といいます。山にあるお寺だから、こういう名前を付けたのかな?と思うかもしれませんが、実は平地にあるお寺にも山号が付いています。
お寺は普段の生活から離れた、世俗から遠いところ。それが山の意味と重なり、山号が付けられているのです。
仏教の教えを込めた三門
総門をくぐると、木々の奥にまた次の門があらわれます。建長寺のように規模が大きいお寺になると、こんな風にいくつも門があったりします。天下門、総門に続き、これで三つ目ですね。
この門は「三門」といいます。三つ目に現れた門だから「三門」と言うのではありませんよ。少し木々に隠れていてわかりにくいですが、門の下部が3つにわかれています。
この3つにはさまざまな意味があり、欲望や怒りや愚痴のような3つの悪いことから解脱しよう!という意味や、心を無にしなさい、祈るときは無心に祈りなさい、仏様にお願いする気持ちも無くしなさい、という3つの無をあらわしたりと、仏教の教えをこの門に込めているのです。
ちなみに建長寺では、この三門の下で定期的に法話を行っています。若い方から人生ベテランの方々まで、気軽に参加しています。もし、法話の時間帯に訪れることができたら、ぜひ聞いていきましょう。人生広がりますよ!
絢爛な天井の仏殿
三門を抜けると、参道を立派なビャクシンの木々が飾り、雄大な存在感をもって奥に仏殿が鎮座しています。
参道両脇に植えられているビャクシンの木は、神奈川県の名木100選、鎌倉市指定保存樹木に選ばれるほど立派なもの。
木の周囲は最大6.5m、樹齢760年で、種からここまで育ったと言われています。ずっと長い年月をかけて建長寺を見守ってきたビャクシンの木々は、その姿を見るだけで思わずうなるものがあります。
それでは仏殿に入ってみましょう。
見上げてみると、長い年月の気配が漂う金色の天井が迫ってきます。格子天井の花鳥図は、質素な中にも禅寺第1位の威厳をあらわすものとして、私たちの目を楽しませてくれます。
仏殿には、地蔵菩薩が安置されています。通常、お寺の要となるお堂にはお釈迦様系の仏像を安置することが多いのですが、建長寺は「地蔵」菩薩と意表をついています。
実は、ここ建長寺の敷地は、建立以前はもともと処刑場で、「地獄谷」なんて呼ばれちゃうくらいおどろおどろしい場所でした。その時代は、お地蔵様が祀られており、その流れをくんで建長寺の本尊が地蔵菩薩となったと言われています。
地蔵菩薩は、地獄に落ちた人々を救ってくれる菩薩で、大「地」の「蔵」する力を使って苦しむ人々を救います。だから「地蔵」って言うんですね。