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南米エクアドルの首都キトは、アンデス山脈が南北に連なる山間都市です。赤道直下に位置していますが、高所に位置するため年中涼しく、過ごしやすい気候です。今回は、旧市街の歴史地区が世界遺産にも登録されている、エクアドルの首都キトをご紹介します。
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エクアドルの首都キト
エクアドルは、南米の太平洋側に位置する赤道直下の国です。国名の「エクアドル」はスペイン語で「赤道」という意味で、そんな国の首都キトは赤道から南へわずか25Kmしか離れていません。
しかし、アンデス山脈の麓に位置し、標高が2,850mと高地にあるため、一年中涼しく快適な気候です。活火山帯であるボルカン・ピチンチャ(ルクピチンチャは標高4,700m、グアグアピチンチャは4,794m)の近くに位置するため、活火山に直接脅かされる世界唯一の首都でもあります。
キトの歴史
キトを含むこの辺りの歴史は非常に古く、紀元前8000年前後のものと思われる黒曜石を使った道具が見つかっていることから、その頃には人が住み着いていたと考えられています。黒曜石はこの周辺で採掘されますが、大陸の広範囲にそれを使用した道具が見つかっているため、他都市との交易も盛んだったと推測されています。古来より人々の行き交う活気ある都市だった様子が伺えますね。
そして、その後の数千年にもおよぶ長い歴史を経て、近年のインカ帝国時代には第2の大都市になるまで発展しましたが、1543年のスペイン侵略によって当時の都市は跡形もなく破壊されました。書物など歴史書の類も全て焼かれてしまったため、それらの時代を伺い知ることはできません。
スペインによって行われた極悪非道なジェノサイド(大量殺害)は他に類を見ないほどひどく、当時1,600万人いたとされるインカ帝国の人口は108万人にまで減少。また、マヤやアステカ帝国の人口も推定2,500万人いたとされていますが、わずか100万人にまで減り、中南米・カリブの島々で合わせて6,000万人以上の原住民が殺害されたといわれています。
生き残ったインディオも迫害を受け続け、侵略した白人、若しくは連れてきた黒人奴隷との混血が進められたために、純潔インディオはほぼ絶滅してしまいました。
その後、およそ300年続いたスペイン支配により、それまでに築かれた歴史のありとあらゆるものが失われ、完全にスペインと化してしまいましたが、1809年になると、スペイン支配からの独立運動が始まります。
暴動が起こるも失敗を繰り返し、その度に指導者などが殺害されましたが、独立気運はますます高まり、1822年、シモン・ボリバル指導下アントニオ・ホセ・ド・スクレが部隊を率いてスペイン勢を圧倒し、キトとその周辺地域はとうとう悲願の独立を果たしました。
キト旧市街歴史地区(世界遺産)
スペイン支配下にあった時に跡形もなく崩壊された街は、スペイン風に再建されました。キト旧市街・歴史地区にある多くの建物は、ルネサンス様式、バロック様式、ムデハル様式が用いられており、これら建造物の極めて良好な保存状態は今となっては南米髄一と称されるほどで、1978年にユネスコが発足した際、世界遺産に登録された最初の12件のひとつともなりました。
歴史を紐解くと微妙な気持ちになりますが、過去があって今がある。過去は過去としてとらえて、早速、世界遺産「キトの旧市街」の特徴や見どころを紹介していきます。
教会の街
スペインによる植民地支配で、先住民は強制的にキリスト教へ改宗されました。侵略以降、広範囲における南米のキリスト教布教の拠点ともなったキトは、その間、非常に多くの美しい教会・修道院が建設されました。それでは、主要な教会をご紹介します。
サン・フランシスコ教会・修道院(Iglesia de San Francisc)
サン・フランシスコ教会・修道院は、1535年に建設された南米最古の教会・修道院です。南米において「もっとも威厳のある教会建築」ともいわれており、その美しいメインファサードは南米で初めてマニエリスムの要素を反映し、のちに大陸の他地域でそのスタイルの基準ともなりました。
教会内部は外部のルネサンス様式とは違い、ムデハル様式とバロック様式の要素が強く、エキゾチックなゴールドとブルーで装飾されています。
主祭壇、側面礼拝堂、説教壇など、その傑出した美しさで訪れる人々を感嘆させています。
メインの祭壇には、キトのキリスト教芸術において主要な紋章ともされている聖母像があり、皆さま静かにお祈りしています。
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- サン・フランシスコ教会・修道院
- エクアドル / 社寺・教会 / 教会
- 住所:サン・フランシスコ教会・修道院 キト地図で見る
ラ・コンパーニア聖堂(Iglesia de la Compania de Jesus)
ラ・コンパーニア聖堂は、イタリア人建築士によって1766年に完成された聖堂で、イタリアとスペイン様式の混じったエクアドル最高のバロック建築といわれています。
美しいファサードも印象的で、聖人の彫刻やらせん状の円柱が素晴らしいです。
この聖堂で特筆すべきは内部の装飾。なんと7t(トン)もの金箔がふんだんに用いられており、その煌びやかさに目が眩むほど。通称「黄金教会」と呼ばれているのも頷ける豪華さです。
※内部は撮影禁止です。
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- ラ・コンパ―ニア聖堂
- エクアドル / 社寺・教会 / 教会
- 住所:Church of the jesuits quito地図で見る
ラ・メルセー教会・修道院(Basílica de Nuestra Señora de la Merced)
ラ・メルセー教会・修道院は、1660年の地震によって崩壊し、1747年までに修復完成した、白壁が印象的な教会・修道院です。搭には巨大な鐘が括り付けられ、清々しい鐘の音を辺りに響き渡らせます。入り口には、太陽と月の彫刻とひげを生やした頭の彫刻が施されています。
メインの祭壇には、聖母の素晴らしい石像彫刻があり、地震だけでなく多くの火山噴火からキトを救ったといわれています。ラ・メルセー教会の横には、キトで最も古い時計を含む修道院があります。
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- ラ・メルセー教会・修道院
- エクアドル / 社寺・教会 / 教会
- 住所:La Merced Church Quito地図で見る
サン・アグスティン聖堂(Iglesia Y Convento de San Agustin)
サン・アグスティン聖堂は、16世紀から17世紀にかけてスペイン人によって建てられた記念碑的な教会です。主要な柱廊はスペインのバロック様式で建てられました。ベルタワーの高さは22メートルあり、2つの青銅の鐘があります。
教会の内部には、聖アウグスティヌスの生涯を描いたミゲル・デ・サンティアゴの一連の絵画が収められています。
メインの聖堂は、グリーンとブルーを基調とし、エレガントでとても美しく、ここまでご紹介した教会とは一線を画す、静けさと落ち着きのある内装です。
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- サン・アグスティン聖堂
- エクアドル / 社寺・教会 / 教会
- 住所:Iglesia Y Convento de san Agustin quito地図で見る
サント・ドミンゴ教会・修道院(Iglesia de Santo Domingo)
サント・ドミンゴ教会・修道院は、17世紀初頭に建てられたバロック様式の教会・修道院で、10のサイドチャペルを持っています。
内部には多数の絵画や彫刻が飾られている他、こちらにある「ロザリオの聖母」とよばれる礼拝堂は世界的にも有名なのだそうです。
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- サント・ドミンゴ教会・修道院
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カルメン・アルト修道院(Iglesia de El Carmen Alto)
カルメン・アルト修道院は1653年に建てられた修道院で、この神殿に住んでいるカルメル会の修道女によって、蜂蜜、ワイン、ハーブなどが製造・販売されています。訪問者はこちらで購入することができますよ。
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- カルメン・アルト修道院
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バシリカ教会(Basilica del Vote National)
バシリカ教会は、キト歴史地区の入り口にあるローマカトリック教会です。バシリカ教会は世界に1,500ほど存在しますが、キトにあるこちらは南米大陸では最大の新ゴシック様式の大聖堂であるとともに、南北アメリカで最も古い建築物でもあります。
バシリカ教会は、そのほとんどがヨーロッパにありますが、キトにあるこちらは、エクアドル固有の動物であるアルマジロやイグアナ、ガラパゴスゾウガメ、アオアシカツオドリなどが彫刻されており、とてもユニーク!遊び心が最高ですね。しかし、遠くから見る外装は凛々しく堂々としており、荘厳な雰囲気を醸し出しています。そのギャップも興味深いです。
二本の時計台がとても美しいです。キト市内のどこからでも眺めることができ、また、バシリカ教会のタワーバルコニーからは、数キロ先まで街のほぼ全体を眺めることができます。
キト大聖堂(La Cathedral Metropolitana de Quito)
キト大聖堂は、キト市内のカトリック共同体において、精神的価値の高い宗教的シンボルのひとつとされています。独立広場に位置し、1545年から1848年まで、キト主教でしたが、1995年にエクアドル大聖堂に昇格し、国内で最も上位のカトリック教会になりました。
内部の天井は、木材を組み合わせた寄木細工の幾何学模様が施されており、石柱とのコントラストが不思議と柔和し、映える内装です。
まだまだある教会
ここまで、旧市街にある主な教会・修道院のほんの一部をご紹介しました。どれも外観・内部装飾とも非常に美しく、壮観な教会の様子をご覧いただけたかと思います。キトにはこれ以外にも多くの教会がありますので、ご興味のある方は是非、ご自身で探訪されてみてください。
坂の街(スロープタウン)
山間にあるキトは、どこへ行っても坂ばかり。標高が高い(2,850m)ため若干空気も薄く、これらの坂道を歩き回るのは観光客にとって心臓破りかも知れません。
タクシーやバスもあるにはあるのですが、狭い車道のため交通渋滞はひどく、結局は歩いた方が早いということになる場面が多いです。特に混雑するのは主要な十字路で、警察が交通誘導にあたっていますが、ちっとも進みません。
色の街(カラフルタウン)
元スペイン領の街は、カラフルな色で壁塗装した家並みの街が多いですね。
キトも多分に違わず住居はカラフル。パステルカラーが基調になっていますので、爽快で軽やかな雰囲気です。家々が青空にも映えて美しく、街歩きをするだけでも楽しいです。
その他見どころ
独立広場(Independence Square)
旧市街の中心地となる独立広場には、1830年の独立を記念した碑が建っており、現地住民の憩いの場となっています。広場では、お爺様方が真剣にチェスに興じる姿が印象的です。
右上の写真にある、独立広場に面している白い建物は、大統領府です。内部の見学ツアー(英語・スペイン語)を開催しており、所要時間50分ほどの説明をフリーでいただけるので、お時間のある方はぜひ。
パネシージョの丘(La Virgen del Panecillo)
キトの街を一望することができるのがパネシージョの丘です。徒歩の場合には麓から階段をひたすら登り続ける必要があり、20~30分かかりますので、ツライ方はタクシーを利用して向かうのがおすすめです。パネシージョの丘にある聖母像は、1976年にスペインの芸術家によって建てられました。台座も入れた高さは45mあり、キト市街のどこからでも眺めることができます。
エクアドル料理
エクアドルはバナナの生産量世界一で、日本にも多くのエクアドル産バナナが輸入されています。私たちも、スーパーではフィリピンバナナに次いでよく見かけるかと思います。しかし、エクアドル人はバナナばかりを食べているわけではありません。日本人が日本料理ばかりを食べているわけではないのと同様に、キトには世界各国の料理をふるまう店が軒を連ねています。
おすすめレストラン「Restaurante Casa Gangotena」
キトで食事をするのにオススメのスポットは、サン・フランシスコ教会・修道院のすぐ隣にある「Casa Gangotena Hotel Boutique」の中にあるレストラン「Restaurante Casa Gangotena」です。ホテル自体は旧市街の教会群に合わせたような外装をしており、レストランの内装も素敵です。
食事も上品で美味しく、エクアドル独自のお料理のほか、キトで採れる食材を生かし趣向を凝らしたメニューも多数あります。この手のレストランにしては、お値段もリーズナブルですので、もし食事に困ったら訪ねてみください。
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- Restaurante Casa Gangotena
- エクアドル / 中南米料理
- 住所:Bolivar Oe6-41 y Cuenca Quito - Ecuador地図で見る
- Web:https://www.casagangotena.com/the-restaurant/
エクアドルの通貨
エクアドルは、2019年9月時点で、USドルを自国通貨としています。
日本からエクアドルへの行き方
日本からエクアドルまでは直行便がありませんので、北米か中米を経由して行きます。キト近郊にあるマリスカル・スクレ国際空港は、2013年にできた比較的新しい空港で、ここからキト市内までは車で40分ほどです。とはいえ、キト市内の道路は常に混雑していますので、空港へ行かれる方は時間に余裕を見た方がよいです。
さいごに
エクアドルへ向かう観光客はガラパゴス島目的のことが多く、エクアドルでの経由地として第2の都市グアヤキルを選ぶことが多いですが、首都であるこちらのキトは、数日かけて散策する価値のある美しい街です。キトからガラパゴス島への直行便もありますので、是非、ガラパゴス島前後に訪れてみてください。