奈良市の大安寺は、がん封じ祈祷のお寺として、人々の信仰を集めています。竹林のある境内では竹にちなんだ行事も行われ、年2回ある「癌封じささ酒祭り」が有名です。お寺を訪れ、奈良の風物詩とも言われる行事に参加してみませんか?
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奈良・大安寺とは
大安寺は、奈良市中心部にある寺院です。寺の歴史は、聖徳太子が奈良県の平群(へぐり)に、熊凝道場を創建したことに始まります。その後、百済大寺、高市大寺、大官大寺と、名前と場所を変えますが、奈良時代には現在の地に移り、大安寺と呼ばれるようになりました。
かつては、七重塔や重層の南大門がある大きな寺でしたが、度重なる火災や地震により、そのほとんどを失ってしまいました。それでも明治時代から再興が徐々に進み、小堂、庫裏、本堂などが再建されました。
現在はこじんまりとしたお寺ですが、東大寺、興福寺などと並び、「南都七大寺」と呼ばれているほか、癌封じの寺としても有名です。多数の年中行事があり、特に1月の光仁会・ささ酒祭りと6月の竹供養には、多くの人が訪れます。
大安寺の境内
南門
南門は、平成の第一次伽藍整備により、興福寺の旧一条院の門を移築、復元したものです。旧南大門に比べて規模は小さくなりましたが、当時の基壇(建物の土台)の上に建てられています。
本堂
明治時代に再建された本堂では、癌封じ、病気平癒、ご先祖様のご供養などの祈祷が日々行われています。御本尊として、天平時代の十一面観音像が祀られており、普段は見ることができませんが、毎年10月1日~11月31日には、特別公開されています。
嘶堂(いななきどう)
嘶堂は、平成の第一次伽藍整備によって建てられました。建物は新しいですが、こちらには、奈良時代に造られた馬頭観音様が祀られています。
忿怒の形相をとっておられ、草を食べるように様々な悪を食い尽くしてくれる仏様と言われるため、厄除け観音として人々に信仰されています。普段は姿を拝見することはできませんが、3月1日~31日の間は、特別公開されています。
竹林
境内には小さな竹林があり、古くから竹の寺として知られています。独特の気品や優雅さを持つ「大安寺竹」は、弘法大師や大安寺の僧により、全国に広められたといわれています。大安寺では、人々の生活を豊かにし、美しい景観や風情を作り出すなど、多くの貢献をなした竹に感謝する行事が、毎年行われています。
大安寺の年中行事
1月1日~3日 修正会(大般若会)
大般若会は、大般若経六百巻を転読(お経の一部を読むこと)し、除災招福を祈る法要です。大安寺では、除夜の鐘とともに大般若会が行われます。また護摩堂では、越年の護摩が焚かれるとともに、境内では108本の竹明かりが灯され、新年を祝います。
1月23日 光仁会(癌封じささ酒祭り)
光仁会は、桓武天皇が、文武百官とともに先帝光仁天皇の一周忌の法要を大安寺で営んだという「続日本紀」の言い伝えにより、毎年1月23日に行われます。光仁天皇が、大安寺の竹に酒を注いでお召しになり、無病息災を保たれたということにあやかり、病を封じて健康に過ごすための「笹酒」が接待されます。癌封じの御祈祷もあり、多くの参詣者が訪れます。
2月3日 節分会(開運星祭り)
節分会は、2月3日の節分に行われます。午後2時から、開運厄除けを祈願する護摩が焚かれ、午後3時からは福豆まきが行われます。甘酒の接待もあり、多くの人でにぎわいます。
3月午の日 馬頭観音厄除法要(厄除け)
3月午の日(うまのひ)には、嘶堂に祀られている馬頭観音の大祭が行われます。この日は護摩が焚かれ、厄除けの秘文神符が授与されます。
4月21日 正御影供(しょうみえく)
正御影供は、弘法大師の入定日(命日)である旧暦3月21日に、大使の御影を祀って供養する法要で、今日では新暦の4月21日に行われています。大安寺では、午後1時から勤行式が、そのあと紫灯大護摩の修法が行われ、本堂を一回りするお砂踏みの行事が行われます。
6月15日 青葉祭
青葉祭は、弘法大師の生誕日である6月15日に、大師の誕生を祝い、報恩謝徳の祈りをささげる法要です。人間国宝の鹿児島寿蔵氏が造られた稚児大師像を祀り、甘茶をかけてお祝いします。
6月23日 竹供養(癌封じ夏祭り)
竹供養は、陰暦5月13日(6月23日頃)を竹酔日、竹供養などと称し、この日に竹を植えるとよく育つという、中国の古い言い伝えにちなんで毎年6月23日に行われているものです。癌封じ祈祷、竹供養の儀、笹酒の接待があり、多くの人が訪れます。
11月2日 開山忌(道慈律師)
奈良時代を代表する高僧の一人「道慈律師」の命日に行われる法要です。律師は大安寺の天平伽藍を完成させたり、大般若経六百巻を転読して、国の安泰や人々の平安を祈る「大般若会」をおこしたことで知られています。大安寺ではこの日、大般若会を行い、律師の大きな御恩を偲ぶとともに、参詣者の平安・家内安全を祈願します。