森見登美彦さんの人気小説『有頂天家族』では、主人公の狸たちが会議をする重要な場所として登場。また華道池坊発祥の地で、日本のいけばな文化にとっても重要な六角堂頂法寺。周りにはオフィスビルが建ち並ぶ街中にありますので、旅行者のみならず近隣にお勤めの方であればお仕事中にぷらっと歴史を堪能しに行ける手軽さも魅力。小説ファンならずとも訪れたい六角堂頂法寺を今回はご紹介します。
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六角堂頂法寺の歴史
頂法寺の歴史は古く、都が京都に移るより前の587年、聖徳太子によって創建されたと伝えられています。寺名の正式名称は「紫雲山頂法寺」ですが、本堂が六角形の形をしていることから六角堂の名称で親しまれています。
1,400年以上もの歴史の中で境内は何度も火災に遭いますが、その度にご本尊が救い出され、本堂も再建・修復が繰り返されてきました。現在の本堂は明治10年に再建されたものです。
いけばなのルーツ「池坊」発祥の地
境内の池の中には、聖徳太子が沐浴したと伝わる石でできた井筒があります。その池のほとりに小野妹子を始祖とする僧侶の住坊が建てられ池坊と呼ばれるようになりました。
代々住職を務めた池坊が、仏前に花を供えたことが始まりとなり、室町時代に「いけばな」が成立しました。その後、時代と共に人々の間に広まり、現代に続く華道の最大流派「池坊」は発展していきました。
2017年には、室町時代後期に活躍した初代・池坊専好を主人公とした映画『花戦さ』が公開されました。なお、映画に頂法寺は登場しますが、撮影には実際の頂法寺は使われていません。
本堂に参拝しよう!
本堂に祀られている本尊は、聖徳太子の念持仏と伝わる如意輪観世音菩薩で、残念ながら通常拝観不可ですが、厨子の前に安置されたお前立ちを見ることはできます。非常に美しい像なので、ぜひ本堂参拝の際は見てみてください。
上から本堂を眺めてみよう!
名前にある通り、本堂の形は六角形。その形を上から眺める方法があるんです!それが、境内に隣接しているビル「WEST18」の展望エレベーター。
一つだけ、ガラス張りになっているエレベーターがありますので、それに乗れば地上からとはまた違ったアングルで本堂を見ることができます。
ただし上に展望スペースなどはなく、いずれの階もオフィスなどがあるだけですので、静かにそのまま降りて来てくださいね。
境内のその他の見どころ
正体はたぬき!?京都の中心の証!へそ石
先にご紹介した通り、こちらのお寺は桓武天皇が平安京へ遷都するより前からあります。
遷都の際、六角堂の場所がちょうど道路の中央に当たったため、桓武天皇が他の場所へ移っていただくよう祈願したところ、何と御堂自らが約15メートルほど北へ移動したんだとか!
この石は、その際に取り残された礎石と言われ、この地が京都のほぼ中心であったことからへそ石と呼ばれています。
なお、このへそ石は、元々門前の六角通りにありましたが明治時代初期に門内に移されました。
森見登美彦さんの小説『有頂天家族』の中でこの頂法寺が登場しますが、中でもこの「へそ石」は、実はずっとたぬきが化けているという設定に。小説ファンなら思わず物語のシーンを思い出し、笑ってしまうのではないでしょうか。
親鸞堂
鎌倉時代初期、親鸞が頂法寺に籠り浄土真宗を開くきっかけを得たことから、親鸞像が祀られています。
堂の前にある親鸞上人像は、比叡山より頂法寺本堂に籠ったのち、また再び比叡山へと戻られる姿を表しているそうです。
十六羅漢
羅漢とは、仏様の教えを伝えることができる優れたお坊さんに与えられた名前のこと。十六というのは、方位の四方八方を倍にした数であらゆる場所に羅漢様がおられることを意味しています。
こちらの羅漢様たちは、「和顔愛語(わげんあいご)」を実践され、にこにこと笑っておられます。いつも笑っていれば必ずよい報いがあるという教え。簡単なようで実際のところ実践するのが難しいことかもしれませんが、できるだけ心がけていきたいですね。
可愛らしいお地蔵さんたち
境内には沢山のお地蔵さんたちがいらっしゃいます。いずれもかわいらしい顔つきで思わずほっこりとしてしまうお顔立ち。
十六羅漢のすぐ側にいらっしゃる「合掌地蔵」はお願い事をする私たちと同じように、手を合わせ願いが叶うよう祈った姿をしています。手を合わせ、その手に願いをささやきながら吹き込むと、お地蔵さんが力を貸してくださるんだそうです。
首を傾げて私たちのお願い事を叶えてあげようか、どうしようか、と考えておられる「一言願い地蔵」。
願いを叶えて頂くには、色々欲張ってはいけません。一つだけ大事な願いを心を込めて祈れば、その思いがきっと届くことでしょう。
- 六角堂
- 二条・烏丸・河原町 / 寺 / 縁結びスポット
- 住所:京都府京都市 中京区六角町東洞院西入堂之前248地図で見る
- 電話:075-221-2686(池坊総務所)
- Web:http://www.ikenobo.jp/rokkakudo/