鳥取県岩美郡岩美町にある、日本最古の鉱山と言われている「旧岩美鉱山」。実際に銅が採掘されていた鉱山の内部に入ることができるほか、現在もなお流れ続ける汚染水を中和し、環境改善に努めている旧岩美鉱山坑廃水処理事業の見学をすることもできます。今回は、まるで大人の社会見学のような気分で学べる「旧岩美鉱山」の歴史や現在の様子、見学の流れについてご紹介していきます。
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旧岩美鉱山の歴史と現在
旧岩美鉱山は、鳥取県岩美郡岩美町の大字荒金に建つ、旧岩美鉱山坑廃水処理場内にあります。
その歴史は古く、銅床が発見されたのは大宝年間(西暦701~703)で、和銅年間(西暦708~714)には時の天皇に銅を献上し、「荒金」と命名されたという記録が残っています。
日本最古の銅山とされている旧岩美鉱山ですが、本格的に銅鉱の採掘が行われだしたのは現代に入ってからの明治22年。
大きく栄えたものの、昭和18年に発生した鳥取大地震で甚大な被害を受けたことにより、品質が低下し、昭和33年に採取鉱掘は終了、昭和46年には閉山してしまっています。
しかし、一度採掘して空気に触れるようになってしまった銅鉱の酸化を防ぐことはできず、閉山後も強酸性の水や重金属の鉱害が周囲の環境に悪影響を及ぼすこととなりました。汚染された水が流れ出た小田川や荒金川からは魚が消え、環境問題は深刻です。
その流れで続ける坑廃水を中和処理して、水質を改善し、酸性水や重金属などの悪影響を取り除き、鉱害を防止するために365日休まず作業されているのが「旧岩美鉱山鉱害防止事業」です。
小田川や荒金川に魚が戻ってくるまでの環境改善が今もなお進められています。
旧岩美鉱山見学の流れ
そんな旧岩美鉱山の歴史や現在、当時採掘されていたままの坑道や中和作業の様子などを、事前に予約さえしておけば誰でも無料で見学することができます。
ここからは、筆者が実際に見させて頂いた時の様子と共に、大まかな見学の流れをご紹介していきます。
①まずは予約を!
まずは予約をしましょう!
事前に電話などで連絡をし、日時を予約しておくと、普段は見ることができない坑道内にまで入ることができ、更に旧岩美鉱山の歴史や中和作業の詳しい解説をして頂きながら見学することができます。
予約した日時の当日は現地で職員さんとお会いし、旧岩美鉱山の内部の見学からスタートします。
②旧岩美鉱山内部の見学
注意事項を説明して頂き、万が一のためのヘルメットを装着したら旧岩美鉱山内部へと出発です!
坑内は夏も冬も1年通して約14度前後で、夏には涼しく、冬には暖かいといった感じです。
職員さんに続いて、解説を聞きながら約220メートルの坑道を進んでいきます。
トンネル入口付近は足場などが整備されていて歩きやすいですが、奥までいくと、鉱山採掘時代のままの状態の様子を見ることができます。
説明も判りやすく、どんな些細な質問にも答えて頂けて、鉱害の知識が全くなくてもその背景や環境汚染、現在の様子について知ることができます。
閉山した鉱山の多くは坑口を封鎖してしまうものが多いため、当時のままの坑内に実際に入って見学できることは非常に珍しく貴重です。
③中和処理作業の見学
旧岩美鉱山の内部見学を終えたあとは、今度は中和作業が行われている作業場へと案内して頂きます。
作業場の手前から見るだけかと思いきや、なんとこちらも実際に設備の上に登って、歩きながら中和作業の様子を見学することができます。
最初は非常に複雑そうな作業のように思え、理解できるか不安でしたが、学生時代の理科の知識でもついていけるくらい判りやすく解説して下さいます。
綺麗に処理された水は再び河川に放流され、中和作業で分離した汚泥は更に繰りかえし中和が行われ、性状のよい反応汚泥へとなっていきます。
④脱水機建屋の見学
綺麗に処理された水は河川に放流されますが、中和作業の際に発生する汚泥はその後どうなるか。
繰り返しの中和により性状のよい反応汚泥になった後、それらは脱水され、なんとリサイクルされます。
最後の見学は、その脱水の様子を生で見ることができるのです。
脱水機建屋では、大きな脱水機が音をたてて動き、脱水された反応汚泥が脱水ケーキとなり、地面へと落下していきます。
この脱水ケーキは、鉱石の代替品としてフェロニッケルの原料に利用されるそうで、更にその過程で生じるスラグ(副産物の砂)も、土木工事などに用いられているとのことです。
鉱害防止や環境汚染を防ぐための作業でこういった殿物がうまれ、再利用に活かされることは全国でも稀のようです。
旧岩美鉱山では、汚染水が流れ出るところから澱物のリサイクルまで、一連の流れを実際に見ることができ、大変貴重な体験ができます。
おわりに
大人の社会見学のような体験ができる「旧岩美鉱山」のご紹介はいかがだったでしょうか?
解説はとても判りやすく、また普段見ることができない坑道内や作業の様子を実際に見学することができ、予備知識がなくても楽しみながらその歴史や環境問題について知ることができます。
ご予約のうえ、ぜひ「旧岩美鉱山」に行ってみて下さいね!