日本有数の観光地、鎌倉の一年の中で、最も人で賑わうと言っても過言ではないのがアジサイのシーズン。鎌倉のいたるところで沢山のアジサイが艶めいた深い色の花々を咲かせます。その中でも最も有名なのが「明月院」に咲くアジサイ。その凛とした色は「明月院ブルー」と絶賛されるほどなんです。そしてこのシーズンには普段は非公開の裏庭も特別公開されます。裏庭では花菖蒲が広い庭園にびーっしり!鮮やかな花々にウットリした後は、清々しい竹林が色と香りで私たちを癒してくれます。いろいろ堪能できちゃう「明月院」にご案内します!
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鎌倉でアジサイ寺といえば、真っ先に名前があがる「明月院」
鎌倉の風物詩、6月頃には鎌倉中の寺院や道端で、アジサイたちが青や紫のボンボリのような花を咲かせます。
鎌倉の1年の中で、このアジサイのシーズンと紅葉のシーズンは訪れる人も多く、最も活気に満ちた季節です。観光客だけでなく地元民も心待ちにしている、町中がウキウキしたシーズンなんですよ!
さて、いたるところでアジサイの花が咲く鎌倉において、いくつかアジサイで有名な寺院があります。総じて、そういったお寺を「アジサイ寺」と呼んだりします。
そして最も「アジサイ寺」として有名なのが、ここ「明月院」です。なんと明月院、『ミシュラン・グリーンガイド』で「寄り道する価値がある」を意昧する★★(二つ星)の評価を得たお寺!明月院のアジサイは、その鮮やかで品のある色合いから「明月院ブルー」と呼ばれるんですよ。
アジサイだけでなく、「悟りの窓」と呼ばれるお堂内にある円形の窓は、宇宙、心理などを抽象的にあらわしたもので、この窓越しに見る裏庭の自然美は、ついつい時間を忘れて見入ってしまうほど。
窓越しに見える裏庭は普段は非公開ですが、時期によって特定公開されます。本記事では、その裏庭にも潜入していきますよ!
明月院がアジサイ寺になるまでのおはなし
変わりまくった明月院の歴史
明月院は、アジサイが境内に約3,000株もあり、特別公開の裏庭もあったりとけっこう広い境内です。広い敷地を持っているので、「もともと大きなお寺として独立して存在していたのかな。」と思いますが、実はそうではありません。
明月院は、いろいろなお寺の移り変わりを、その長い歴史の中で見てきたという稀有な存在でもあります。現在の「明月院」となるまでに、実はこんな風に変わってきたのです。
① 「山ノ内経俊」が、戦で亡くなってしまったお父さん「山ノ内俊道」をとむらうために、「明月庵」をたてました。このときは、明月「庵」だったんです。
② その後、「北条時頼」がここに「最明寺」をたてて出家生活を送りました。
③ 時頼が亡くなると、その息子が最明寺を「禅興寺」として改装しました。
④ こんどは、「上杉憲方」が寺院を拡大し、塔頭(たっちゅう)を建てました。塔頭とは、大きなお寺の境内にある個別のお寺です。明月庵はこの塔頭のうちのーつとなりました。
⑤ ところが、時代は流れ禅興寺は廃寺となってしまい、明月庵だけ残りました。この時に明月庵は「明月院」に名前を変えました。明月庵は塔頭のうちの一つでしたが、塔頭は「〇〇院」という名前を付けるのが通例だったんですね。
どうですか? 「明月庵」→「最明寺」→「禅興寺」→「塔頭のうちの一つ」→「明月院」となかなかの変化っぷりです。そんななかでも明月院だけは、ずーっと変わらず、歴史を眺め続けていたんですね。
さて、ここまでは、まだアジサイにまつわるお話がでてきていませんね。実はアジサイ寺となったのは長い歴史の中では、わりと最近の出来事なのです。
そしてアジサイ寺に
第二次世界大戦のあとに、物資が不足して参道を整備する杭が足りなくなりました。
ここで発想の転換です! 「参道が整備できればいいんだから、杭の代わりに花を植えればいいじゃん!」とかなりのブレークスルー的発想で、境内に花を植えることに。
「アジサイだったら育てるのも楽だろう」という理由で、参道整備のため境内にどんどんアジサイが植えられるようになり、今では3,000株もあるんですよ!
それでは、いよいよその明月院に行って見ましょう!
参道を彩るアジサイ
こちらが明月院の入り口。
近くには明月川と呼ばれる小川も流れています。すがすがしい天気にサラサラとしたヒーリングサウンドが流れていて、うーん。いい旅を予感させる始まりです。
門をくぐると、圧倒されるアジサイに純粋に驚愕・興奮・感動を覚えます!どうですか?一面ブルーブルーブルー!
「明月院ブルー」と呼ばれる明月院のアジサイの色は、青の奥に紫色の深みを持つ、神秘的な花びらですね。
アジサイは花が育つにつれて、どんどん色が変わっていくんですよ。6月初旬にはまだまだうす~い色ですが、日数がたつにつれて青が強く出て、同時に色にも深みが出てきます。その年の気候にもよりますが、最も美しい色が出るのは6月中旬頃ではないでしょうか。
自然景観を生かした境内
境内は普通のお寺と違って、なんと遊歩道があるんです。アジサイの次にびっくりするのはこれかもしれませんね。
アジサイのハイシーズンともなれば、この遊歩道に人がびちーっと列をなして行進するほど混みます。午後だと写真のように「すし詰め」みたいな感じになるので、絶対に午前中の早い時間での参拝をお勧めします。
明月院自体は、標高150m程度の低い山のふもとに位置しています。そんなわけで、視線を少し上に向けてみると、明月院の境内は左右から山に固まれているのがわかります。
山の隙間にあるような感じなので、明月院の境内は全体的に細長いのです。そのせいか視線がまっすぐ前方に定められて、より山並みとアジサイの美しさに注意がいくんですね。