“酒米の王様” とも呼ばれる「山田錦」は兵庫の播磨が名産地。その良さをもっと知ってもらいたい、と地元の会社が神戸北野に、自社製の錫の酒器で山田錦の日本酒を楽しめるお店「NAKAGO」を立ち上げました。「山田錦 × 製造業」のコラボ店は、料理も “兵庫の美味しいもん” がいっぱい!その魅力に迫ります。
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錫の酒器で日本酒が飲めるお店「NAKAGO」が生まれたワケ
神戸の観光地の中でも異人館街で人気が高い 北野 は、その土地柄かハイセンスなお店が多くあります。「NAKAGO」もそんなお店の一つ。
ショップのような、カフェのようなこのお店、軒先には、日本酒の神様を祀る 杉玉 が下げられています。そしてお店のコンセプトは“錫を体験するお店”。
そう、NAKAGOは「錫で飲む日本酒はとても美味しい!」を実体験させてくれるお店なのです。特に拘っているのは 山田錦 で造られた日本酒、そして自社製の錫。このお店の母体は、兵庫県にある鋳型中子製造会社です。なぜ製造業がこのようなお店を?!
NAKAGO での楽しみ方を詳しくご紹介する前に、「山田錦 × 製造業」に挑んだ背景を少しご紹介いたします。
日本酒の酒米「山田錦」とは?
日本酒のことがよく分からない方でも、一度は「山田錦」という言葉を聞いたことはあるのではないでしょうか。これは「酒米」の品種名です。
「酒米」とは日本酒造りに使うお米。特に、日本酒に最適な品種は「酒造好適米」と呼ばれています。食べるお米「飯米」とは違って、普通に食べるとそんなに美味しくありません。では、飯米とは何が違うのかというと、大きな特徴が3つあります。
- 粒が大きくて丈夫なこと
- 心白(粒の中心にある真っ白な部分)が大きいこと
- たんぱく質や脂質が少ないこと
この3つの特徴がどの酒米よりも優れていて、「酒米の王様」と言われているのが「山田錦」です。だったら、日本全国どこでも山田錦を作れば良いじゃないか、と言われるかもしれませんが、そうはいかないのが、土壌の適性。
最高品質の山田錦が育つ「特A地区」
品質の良い山田錦は、限られた場所でしか育てられておらず、その中でもダントツで生産量が多いのが 兵庫県。さらに!その中でも、山田錦は産地によって「A」「AA」「AAA」などランク付けされており、最も品質の高い「特A」の山田錦が育つ場所が 播磨 にあります。そこを「特A地区」と呼びます。
この 特A地区 は、播磨以外にはありません。だから生産者さんたちも、地元の山田錦に誇りを持って、日々農業に勤しんでいます。
しかし、日本国内では日本酒離れや米作りの後継者不足が気になる昨今。そこで、「なんとか農家さんたちを元気づけられないか、地元の誇りである山田錦を守りたい!」と立ち上がったのが、播磨で鋳型中子製造業を営んでいる「藤原」です。
【山田錦 × 製造業】を掲げる「藤原」の想い
造形から手作業まで一貫して生産している鋳型中子製造社の「藤原」は、山田錦が育つ地元を愛し、そこで山田錦の生産者が守り続けている誇りを絶やしてはならない、と考えていました。そのために自分たちができることは…?!
たどり着いたのが、ものづくりの技術を生かし、日本一の山田錦の生産地にふさわしい 錫(すず)の酒器 を作ること、そしてその酒器で、山田錦と飲み手を繋げること。
「こんな美味しい日本酒は、こんな場所で育てられたお米で造られているんだ、ということを知ってもらいたい。その生産者へも興味を持ってもらいたい。そして、もっと全国の皆さまへ特A地区の山田錦を届けたい。」
この熱い想いが、とうとう製造業を飛び出して、実際に自社の錫の酒器で山田錦の日本酒を提供するお店のオープンへと繋がっていきます。それが、神戸北野の「NAKAGO」です。
お酒も料理も美味しい「NAKAGO」
冒頭にもご紹介した通り、「NAKAGO」は、自社製の錫で日本酒が飲めるお店で、美味しい料理も提供しています。店名は「中子」からきています。聞きなれない言葉かもしれませんが、「中子」とは鋳物を作る際、中に空洞を作るための砂型のこと。なかなか粋な命名ですね。
店内は淡い間接照明で温かみがあり、モザイクタイルが、おしゃれなのにどこかほっこりさせてくれます。
予約して行くと、名前入りのプレートに加え、とてもおもてなし感のあるセッティングが。おしぼりの皿も箸置きも錫です。これを見るだけでワクワクするに違いありません♪
地元の山田錦が使われている日本酒に特化
製造業者「藤原」の想いは「地元、特A地区の山田錦を知ってほしい」。だから、NAKAGO で扱っている日本酒も、もちろん特A地区で育った山田錦を使用した銘柄ばかりです。
特A地区山田錦 笑顔(Agao)つながるプロジェクト
すでにある銘柄を仕入れるだけではなく、“特A地区生産者が笑顔でいられるように笑顔を未来につなぐプロジェクト” として、なんと!NAKAGO プロデュースで初めてのお酒造りも行ったんだそう!
それが「松沢」と書いて「MATTA(まった)」。「松沢」とは、特A地区の一つの地域名です。地元の方の発音は、「まつざわ」ではなく、ちょっと方言で訛って「まった」と呼ばれています。
面白いのは、容器が3種類あり、それぞれ仕上げが異なること。720ml(四合瓶)は無濾過生原酒、1,800ml(一升瓶)は火入れ、そしてお店ではKEG(ケグ)もあります。
一つのタンクで出来上がったお酒が、この3種類で味わいに変化が出るから面白い!特に、日本酒のKEGは珍しいんです。
KEGとは、分かりやすく例えると、お店で生ビールを飲む時にビールが入っているタンクのことで、その日本酒ヴァージョン。搾ったばかりの生酒が完全密閉の状態で入っているので、いつでもしぼりたての、シュワっとした味わい が楽しめます。