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雲龍図が見下ろす法堂
仏殿のすぐ真後ろには、法堂があります。「ほうどう」ではなく、知ってる人ならツウっぽく「はっとう」と呼びます。
禅宗以前のお寺では、法堂は講堂という呼び名がついています。私たちが普段使う講堂と意味合いは同じで、講義をする場です。
このように、お坊さんたちが集団で修業するために、用途別にお堂が建てられているのが禅寺の特徴です。さらに、三門、仏殿、法堂が一直線にならんでいる配置も禅寺の特徴なのです。
さーて、法堂にも入ってみましょう。ここでも天井を見てください。
じゃじゃーん。どうですか。大迫力の雲龍図。
龍は仏教を守護する神様であり、禅寺の法堂では天井に雲龍図があるのがお約束。法堂は仏法の教えを受ける場です。龍が修行僧に頭上からシャワーのように仏法を教えてくれる様子をあらわしているのです。
ちなみに龍は爪の数で、位の高さが違ってきます。建長寺の龍は爪が5本。めったに描かれない、ありがたーい龍なのです。
同じく鎌倉五山の一つである「第2位 円覚寺」にも雲龍図がありますが、そちらは爪3本。第1位と第2位で、こうしたことも違ってきているのです。
随一の見どころ方丈
方丈とは寺院の住職が生活する場所です。ただし現在は座禅、法要、研修の場として広く使われています。
建長寺の方丈には、立派な門と美しい庭園があります。
豪華絢爛な唐門
方丈の真ん前には、キンキラキンのゴールデンな門が構えています。訪れた時は夕暮れ時でしたが、陽光が真正面から反射して、「まぶしーい!」と声に出さずにはいられないほどでした。
通ってみたい!と思いますが、残念ながらこの門は普段わたしたちが通ることはできません。
というのも、こうした豪華絢爛な門は偉い人が通るときに開かれるものだからです。こうした門は「勅使門」と呼ばれています。勅使とは天皇の使者のことです。
ただし勅使門とは役割から説明した場合の門の種類。そして、形の面からは「唐門」に分類されます。
唐門は屋根で見分けます。まるみのある独特な形の屋根が唐門の特徴です。
しかし建長寺の唐門はこれだけでは終わりません。形の面では「四脚門」にも分類されています。正面からだとわかりにくいですが、裏から見てみると4つ脚があるのがわかりますか?
いやー。建長寺、見どころ盛りすぎでしょう!ってくらいてんこもりです。
趣向を凝らした庭園
唐門のすぐわきを通り抜けて、方丈に入っていきましょう。
方丈の建物の中から、庭園を眺めることができます。蘸碧池(さんぺきち)を中心とする庭園です。蘸碧池とは、緑の木々が青い水にひたって輝いていることを表しています。
この日も、青緑の深い色合いをした水面に、紅葉した木々がそのままの色で、きれいに反射していていました。
庭よりはるか奥を見てみると、周囲の山々からの借景、近くには水面にうつった木々と、庭そのものの景観美をよりいっそう美しく見せるしかけがほどこされています。思わず「うむむ」と唸ること間違いなしです。
意外と知らない坐禅
方丈では坐禅もできるようになっています。
ところで坐禅って、あぐらをかいて目を閉じて瞑想している人が、ついついウトウトしたところを、後ろからお坊さんが、そおっと忍び寄り、長い板で肩をバシッとたたくイメージがありませんか?(白状すると、ええ、私はそうでした。)
坐禅はそもそも、お釈迦様が悟りをひらくために修業として行っていたものです。坐禅は心を整えるために行うもので、日常の些末なことを心から取り除き、自分本来の心と向き合うことで、自分を高めていこうとするものです。
で、あの「パシッ」と叩く板を「警策」といい、あれを受けるのは、実は自己申告制なのです。へえー。
普段ありとあらゆることが頭の中に浮かんでくる生活を繰り返す私たちは、すぐには雑念を取り払うことはできません。瞑想に慣れないうちは集中力がきれ、ウトウトしてしまったり、やっぱり余計なことを考えてしまいがち。
そうしたときに、気持ちを引き戻すために、自らお願いして叩いてもらうものなのです。もし警策を受けたいと思ったら、お坊さんに手を合わせて合図し、礼をして叩いてもらいましょう。