パタゴニア地方は、南米大陸のアルゼンチンとチリ両国にまたがる南方の地域の総称です。大西洋へ流れるコロラド川以南から、南北に連なるアンデス山脈の南端までに至るこのパタゴニア地方は、実に30もの国立公園がある壮大な自然の宝庫です。今回は、アルゼンチンの「エル・カラファテ」という街を起点に、何万年も育まれてきた広大な氷河を有す世界遺産「ロス・グラシアレス国立公園」と、チリにある突き抜けた3本の岩山を有す「トーレス・デル・パイネ国立公園」をご案内いたします。
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パタゴニア観光の拠点に便利なエル・カラファテ(El Carafate)
南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスから、飛行機で大きく南下すること3時間余り、チリとの国境にほど近い場所にエル・カラファテという街があります。
荒涼とした大地の中にあり、人口が1万人にも満たない小さな街ですが、周辺にある国立公園へアクセスがよく、パタゴニアを観光するにはとても便利な街です。
空の玄関口となるエル・カラファテ空港もあり、インフラもきちんと整備されているため、多数のホテルやレストランは観光客で賑わいを見せています。
エル・カラファテはアルゼンチンで一番大きいアルヘンティーノ湖のほとりにある街で、自然に囲まれ静かな環境です。
湖のラグーンには、フラミンゴも多く棲息しています。
空気が澄んでいるので太陽の光も直線的で、映される自然がとても美しいです。
それでは早速、エル・カラファテを拠点に観光できる二つの国立公園をご紹介します。
ロス・グラシアレス国立公園(世界遺産)(Los Glaciares National Park)
アルゼンチン国内でも最大の国立公園であるロス・グラシアレスは、面積が7,269平方キロメートルあり、南極、グリーンランド、アイスランドに次ぐ巨大な氷河を有しています。国立公園内にはいくつもの氷河観光スポットがあり、世界中から観光客が訪れます。
- ロス・グラシアレス国立公園
- アルゼンチン / 自然・景勝地
- 住所:Parque Nacional Los Glaciares地図で見る
- Web:https://www.parquesnacionales.gob.ar/
ペリト・モレノ氷河(Perito Moreno)
ロス・グラシアレス国立公園の中でも一番の人気を誇るペリト・モレノ氷河。エル・カラファテから車で一時間あまりの近さにありながら、息をのむような素晴らしい氷河を鑑賞できるスポットです。
南米大陸を南北に貫くアンデス山脈の山々には、大量の雪が積もります。その雪は、湖(低地)へ圧を強めてくだり、徐々に氷河となります。そして表面に現れるまでには、なんと数万年の時が経っているのです。
私たちは数万年前に降った雪を、ここで見ることができるのです。フェリーやボートで氷河の近くまで行くこともでき、湖面から見上げる氷河は圧巻の一言。
まるで、ガラスの断崖絶壁です。
時折、氷河の欠片が崩落すると、爆音とともに水面には大きな波が立ちます。この時フェリーも大きく揺れるため、とてもエキサイティングです。
フェリーを降りて、車でその先へさらに進むと、氷河を広く見渡せる公園があります。フェリーほど近くで見えるわけではありませんが、こちらも絶景!氷河の南側と東側を十分に堪能できます。
ペリト・モレノ氷河は、世界の氷河がある地域に比べると気温が高いため、夏場は頻繁に(10分に一度くらい)氷河が押し出されて水面に崩落します。
氷が割れる際には「バリバリバリッ」、そして崩落して水面へ落ちると「ドカーン」と鳴り、まさに雷が落ちたような轟音がけたたましく響き渡ります。その大迫力サウンドを聞くと、改めて自然のすごさを感じます。
ペリト・モレノ氷河内にある歩道は整備されており、トレッキングやウオーキングサーキットもあります。氷河の上を歩くツアーもありますよ!
- ペリト・モレノ氷河
- アルゼンチン / 自然・景勝地
- 住所:Glaciar Perito Moreno , サンタクルス州 アルゼンチン地図で見る
- Web:http://www.losglaciares.com/en/parque/gpmoreno.htm...
スぺガッツィーニ氷河(Spegazzini)
スぺガッツィーニ氷河は、流れが蛇行した、景観の美しい氷河です。
坂が急で、山をぐるりと取り巻きながら覆い被さるように氷河が形成されるため、先端の高さが140mにも達する、ロス・グラシアレス国立公園では一番の高さを誇る氷河です。
- スペガッツィーニ氷河
- アルゼンチン / 自然・景勝地
- 住所:Lago Argentino, Santa Cruz, Spegazzini地図で見る
ウプサラ氷河(Uppsala)
ウプサラ氷河は、ロス・グラシアレス国立公園最大の氷河です。エル・カラファテから車で一時間ほどの場所にある波止場プンタ・バンデラから、フェリーに乗って向かいます。
波止場を出てノルテ水道を一時間ほどフェリーで進んだ頃、氷山がプカプカと流れてくる様子が見え始めます。
大小様々、形も様々な氷山は、近くで見るととても大きいものもあります。
氷河から崩落した氷山は、やがて溶け始めます。徐々に水となり形を失い、川の流れとなっていきます。長い年月をかけて造られた氷河が溶けていくかと思うと、儚くも美しいですね。
こちらが氷山の大元!ウプサラ氷河です。高さは100m、先端部の幅も7Km近くあるロス・グラシアレス国立公園で最大の氷河です。
長き時を経て成熟し、しかし今この瞬間にも崩れて水へと変わる氷河の様は、人間や植物、動物と同じ生き物のようです。形ある自然は、どんなものでも姿形を変えていき、最後には消えてしまいますね。
ちなみにこのウプサラ氷河へ移動するフェリーでは、浮かんでる氷河を取って、ウイスキーのロックを作ってくれるサービスもあります。純度の高い氷で飲むお酒は、また一段と美味しい感じがしますよ!
氷河の青い理由
ところで皆様、氷河が何故青いかご存知ですか。長い歳月をかけて造られる氷河は、その氷の重さから常に大きな圧力を受け続けます。このため、氷中に含まれていた空気が押し出され、気泡のない純度の高い氷となります。
太陽の紫外線は、密度が濃くて波長の短い青い光だけを反射しますので、人間の目には氷河が青く映るというわけなのです。