アイルランド共和国の西部に位置する「アラン諸島」は、ゴールウェイ州に属し、主に3島で構成されています。今回は、ガイドブックに必ず登場し、世界遺産を擁するイニシュモア島はもちろん、アラン諸島の主な3島の魅力をご紹介します。
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アラン諸島とは?
アイルランド西部の街・ゴールウェイと、アイルランドの人気観光スポットの「モハーの断崖」に程近いクレア州ドゥーリンの街の沖合いに、アラン諸島があります。古代アイルランドからあると知られている古墳等のスポットが点在しているほか、昔ながらの茅葺き屋根の家々が連なっており、アイルランドの本島とはまた変わった雰囲気を味わうことができます。
ゴールウェイおよびドゥーリンからフェリーで30分~1時間以内で行ける距離にあるので、本島からの日帰りトリップにもちょうどよい観光スポットです。実際に、年間30万人近くの人たちが訪れるなど、多くの観光客を惹きつけています。
アラン諸島を構成するのは主に3島で、西から
- イニシュモア島(Inishmore)
- イニシュマーン島(Inishmaan)
- イニシィア島(Inisheer)
です。
いずれの島も、上陸したら島探索をしてみましょう。もちろん徒歩でまわることもできますが、おすすめは潮風を感じながらのレンタサイクルです。この他に島の観光バス、観光馬車などでも散策を楽しむことができます。
アラン諸島に最初に上陸した人々は、大西洋から吹き荒れる強い潮風や雨に土地が飛ばされないように、礎となる岩の上に海藻を敷き、その上にさらに石を積み上げて土地を固定しました。
家畜の飼育や土地の持ち主の境界として置かれた石壁は、区画のようにも見えます。アラン諸島には独自の石積みパターンがあるほど、この石壁についても独特の技法が使用されています。今回は、そんな歴史あるアラン諸島の島々について、各島別にその見所スポットと魅力をご紹介します。
アラン諸島唯一の世界遺産!絶壁のドン・エンガスを擁するイニシュモア島(Inishmore)
イニシュモア島(Inishmore)はアラン諸島最大の島(全長13km、幅3km)で、ユネスコの世界自然遺産にも登録されているドン・エンガス(Dun Aonghasa)があります。
- 出典:www.flickr.com世界遺産のDun Aengus(Photo by Mark Devine)
船旅を経て島のフェリー発着場に着くと、早速パブやレンタサイクル屋、オープンテラスのあるカフェなどが出迎えくれます。そこからほどなくして、緑の大地にグレーの石が積まれていくつもの囲いがある牧歌的な風景に出会えるでしょう。
フェリー発着場から約7km北上すると、世界遺産「ドン・エンガス」の入り口に到達します。ドン・エンガスは、約3000年前に起源をもつ古代遺跡です。強固な石壁が海に向かって半円状に形成されており、時が止まったかのようなとても神秘な雰囲気に包まれています。なお、ドン・エンガスは絶壁の上に位置しています。不用意に端に寄らないようご注意ください。
また、ドン・エンガスは軍事要塞としてだけでなく、政治や経済、宗教のかつての中心地だったとされています。そんな古代のアイルランドにいた人々の息吹が聞こえてきそうな特別な場所です。
作家シングが過ごした、ひっそりと佇むイニシュマーン島(Inishmaan)
アラン諸島3つの島々の真ん中に位置するのがイニシュマーン島(Inishmaan)です。イニシュモア島のように世界遺産を擁すなど目立った見どころがあるわけでもありませんが、なみなみと受け継がれる島の暮らしを垣間見て徒歩で一周するのも面白いでしょう。
- 出典:www.flickr.comInishmaanのケルト十字のお墓(Photo by Chris Brooks)
この島には、アイルランドの歴史上で重要な役割を果たした要塞がいくつかあります。また、アイルランドの有名な劇作家のジョン・ミリントン・シングが住み、アラン諸島にまつわる様々な書物を残した場所でもあります。島内に残されているシングの旧家は観光地となり、誰でも訪れることができるようになっています。
- 出典:www.flickr.comイニシュマーン島の美しい藁葺き屋根の家(Photo by Chris Brooks)
- ジョン・ミリントン・シングの旧家
- アイルランド / 建造物
- 住所:John Millington Synge House, Inishmaan, Aran Islands, Ireland地図で見る
イニシュマーン島も含み、アラン諸島には古くからニット編みの伝統があります。漁師の夫を支えるために、各家庭で妻が様々な願いをニットに込めて編んでいたそうです。願いの内容によって編み方が違うため、様々な編み込みのバリエーションが生まれました。イニシュマーン島にも、昔から続く伝統的なニット編みの手法が受け継がれています。
伝統音楽と暮らす、風光明媚なイニシィア島(Inisheer)
イニシィア島(Inisheer)は、3島あるアラン諸島の中でも最小です。人口わずか200人程度、島にはスーパー2軒、空港1か所、パブ3軒程度のこぢんまりとした島です。
小さい島だからこそ、徒歩や自転車で散策するのにほどよい島で、コンパクトに島旅を楽しむことができます。真っ白な砂が美しい砂浜や、島全体を見渡すことのできるオブライアン城、岸壁に打ち上げられた廃船や7人の娘たちの教会といった廃墟の教会など、小さいながらも多くの観光客を惹きつけるスポットが多くあります。
島内にあるアラン文化センターに行けば島内の女性たちが作成したクラフト(手工芸品)を購入することができたり、葦で作った籠やアイルランドの伝統的な飾り「セント・ブリジット・クロス」などの伝統文化にも触れることもできます。
大西洋で獲れた海鮮をシンプルな調理法で提供するレストランや、パブでの食事も楽しめるスポットが点在しています。島内には、朝食付きの宿舎B&Bも何軒かあり、ゆったりと週末やバカンスを楽しむアイルランド人にも定評があります。
またアイルランドに来たからには、パブでのセッションにも耳を傾けたいものです。全国大会入賞経験のある地元の名手が素敵な演奏を披露してくれることでしょう。
まとめ
いかがでしたか?島国アイルランドにあるアラン諸島3島をご紹介しました。
3つの島の人口はわずか200〜300人程度ですが、それでも生活に必要な物資はしっかり揃っていますし、何よりも美しい自然と隣り合わせなのが魅力的な島々です。
島歩きをし、アラン諸島独特の風景を眺め、地元の人たちと話し、時にパブで生の伝統音楽の演奏を聴いていると、この島の暮らしがどんなに豊かなものであるかを感じることができるでしょう。