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三途の川の先の世界を疑似体験!?青森の霊場「恐山」

取材・写真・文:

2021年3月17日更新

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本州北の果て、青森県下北半島にある霊場・恐山。“三途の川”や“地獄”、“極楽”を彷彿とさせる風景が広がり、まるで死後の世界を疑似体験するようです。この記事では、恐山を訪れたことのない方向けに、恐山についてくわしくご紹介します。

この記事の目次表示

「恐山(おそれざん)」とは

  • 恐山 無間地獄の岩場

恐山とは比叡山、高野山とともに日本三大霊山に数えられる霊場。地元では「死者の魂は恐山さ行ぐ」と古くから信仰を集めてきました。仏教によれば死者の魂は、死出の山を越えて三途の川を渡り、次の世界へ向かうとされますが、まさに恐山では「三途の川」や「無限地獄」、「血の池地獄」、「極楽浜」などがあり、死後の世界を垣間見ることができます。

霊的なものに怖さを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、訪れた人の多くは身が洗われるような清々しさを感じる神秘的なスポットです。本来なら”その時”が訪れるまで見ることのない景色を、少しのぞいてみませんか?

恐山の見どころ

1.三途の川

  • 恐山の三途の川
  • 宇曽利山湖

こちらは死者の魂が、死出の山を越えて辿りつく「三途の川(葬頭河)」。冥界でみる三途の川は"川幅4000km"もある大きな川ですが、恐山では宇曽利山湖から流れる天津川が「三途の川」と称されています。この川は生前に犯した罪の重さによって渡る場所が決められ、橋や船を使って渡るもの、浅瀬を歩くもの、激流を泳がなければならないものがいると言われています。川を渡る死者たちを導くように、川の先には木で道が示されているのも印象的な光景ですね。

この川にかかる太鼓橋には、暗闇のなかあの世へ向かう亡者達を助けるようにが巻かれています。橋にも登れますが、対岸は冥土を意味するため、降りずに引き返してくださいね。

2.恐山 奪衣婆(だつえば)と懸衣翁(けんえおう)

  • 恐山 奪衣婆と懸衣翁

こちらは三途の川を渡った先で待ち構える「奪衣婆」と「懸衣翁」。奪衣婆とは三途の川の渡し賃である六文銭を持たずにやってきた死者の衣服を剥ぎ取る老婆の鬼です。ここで剥ぎ取られた衣服は、懸衣翁という老爺によって衣領樹(えりょうじゅ)に掛けられ、枝の垂れ具合によって生前に犯した罪の重さを量られます。

奪衣婆が衣服を剥ぎ取るのは、生前への執念を落とし、心軽く浄土へ向かうためとも言われます。必ずしも怖いイメージだけではありませんが、この後に待ち構える「十王」の遣いとして恐ろしい表情をしています。

3.地獄道

  • 恐山 無間地獄の岩場
  • 恐山 血の池地獄

三途の川を渡り終えた者は、いよいよ「十王」による審査を受けます。十王とは地獄で死者を裁く10尊で、初七日から始まり35日目には「閻魔大王(えんまだいおう)」によって来世が言い渡されます。その後生まれ変わる細かい条件が加えられ、七七日(49日)には六道の中から次に向かう世界が決まると言われています。恐山には、この六道を彷彿とさせる場所がいくつも見られます。

六道の世界のひとつ「地獄道」は、罪の深さによって8つの種類に分かれ、細かいものを含めると138地獄も存在します。恐山の霊場内にある無間地獄血の池地獄もそのひとつ。地獄と名が付くだけあって、異様な雰囲気が感じられます。

なお、思わぬ世界に落ちてしまったとしても百日日や一周忌、三周忌、宗派によっては三十三回忌までは「再審査」が行われるそう。再審査は、この世で家族の供養という救済があってこそ得られるチャンスであり、重要な日に追随供養がなされるのも納得してしまいますね。

4.六大地蔵

  • 恐山の仏像たち

こちらは恐山菩提寺の総門手前にある六大地蔵。死後に向かうと言われる六道の世界とは多くの善行を積んだ者がいく天道、己の本能や欲望のままに生きた者がいく鬼畜道、強い競争心や自尊心をもつ者がいく修羅道、自殺や殺人など悪行を積んだ者がいく地獄道、欲深く富や権力に執着した者がいく餓鬼道、そして人の道からなる6つの道を指します。

どの道へ進んだとしてもその道は簡単ではありませんが、この六大地蔵がそれぞれの世界で衆生の苦しみを救ってくれます。穏やかな表情にその心が現れているように思えますよ。恐山の観光客のなかでは、六大地蔵を背面からみる"メタリック"な姿も見どころのひとつとされます。ぜひ覗いてみてくださいね。

5.地蔵菩薩像・賽の河原

  • 地蔵菩薩像
  • 恐山 石を積む

こちらは三途の川のほとりにある、賽の河原。不運にも父母より先に亡くなってしまった子どもや水子は、親を想い、賽の河原で自分の背丈よりも高く石を積んで成仏しようとします。ところが石塔は鬼にみつかって、完成する前に崩されてしまうんですね。子ども達はこれを健気に繰り返すのですが、その努力は図らずも報われない様子から、今日でも「報われない努力」や「徒労」を表す言葉として"賽の河原"が使われています。

そんな子ども達にも、最終的には救いの手が差し伸べられます。ここで救ってくれるのが、恐山の本尊に祀られる「地蔵菩薩」です。そのため恐山は水子供養の場所として有名で、恐山に向かうバスの中では童謡が流れていますよ。

また恐山では、実際に積み上げられた石塔をいくつも見ることができます。これらは「賽の河原」の逸話を信じる父母が、子どもの成仏を助けるために積んだもので、名前の刻まれた石や想いが込められた石が含まれます。決して面白半分で崩してしまわぬよう、ご注意ください。

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