温泉町として知られる北海道函館市湯川町にある湯倉神社は、温泉にゆかりのあるコンビの神様を祀る神社であり、歴史のイケメン土方歳三にゆかりのある土地。ご当地感全開のおみくじで有名な神社でもあります。
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温泉の神様とは何者?
温泉の神様としてまずご紹介したいのは、大国主命(おおくにぬしのみこと)です。沢山の名前を持っている神様で、『日本書紀』では「大国主神、またの名を大物主神(おおものぬしのかみ)、国作大己貴命(くにつくりおおなむちのみこと)、葦原醜男(あしはらのしこお)、八千矛神(やちほこのかみ)、または顕国玉神(うつしくにたまのかみ)という」と書かれた一節があります。これだけでも、オイオイどれだけ名前があるんだよ・・・と思うところですが、全国の神社には、そのほかにも様々な名前を冠して、大国さまを祀っているんです。
名前が多いということは、それだけいろいろな場所で逸話があり、さまざまなパワーを持っているということ。
さて、今回ご紹介する「湯倉神社(ゆくらじんじゃ)」では、この大国さまは「おおなむち」の呼び方で親しまれています。「おお」は大いなるの意味で、「な」は「土地」、「むち」は霊験あらたかな存在につけられる音とも言われています。おおなむちで呼ばれるとき、必ずコンビを組む神様がいて「すくなひこな」と言います。「すく」は小さい、「な」は土地で「おおなむち」と対になっているんです。まさにコンビにふさわしいお名前。
さてこのコンビは、全国で土地を整備したり、病気を治療したり、温泉を開いたり、さまざまな活躍をします。ここ湯倉神社では温泉の神様として祀られています。
湯川温泉発祥之地碑
それではさっそく、湯倉神社の境内に入ってみましょう・・・。いえいえ、ちょっと待って!鳥居をくぐる前に、右側を見ていただきたいのです。
湯倉神社は境内が周囲の土地よりも、高く作られています。境内を上に眺めながら、道路を歩いていくと奥まったスペースにちょこんと石碑があります。
ちょっと読み難いですが、石碑の表面には赤い字で「湯川温泉発祥之地碑」と記されています。この石碑からわかるとおり、この一帯は「湯川温泉」として栄えているところ。
ここが発祥の地となったのには、こんな言い伝えがあります。江戸時代にこの地を治めていた藩主の子が重い病にかかり、お母さんがここの土地に病に効く温泉があることを、夢のお告げで知ったのです。このお湯に息子を入れると、不治の病とさえ思われていた病気がなんと全快!藩主の子供が完治したわけですから、その感謝もひとしおということで、この場所に社殿をたてたのがご由緒なのです。
湯倉の大銀杏
ちなみに石碑の左横に「湯倉の大銀杏」の表示があります。ちょっと後ろに下がってみてみましょう。
わっさわっさと豊かな葉を茂らせた銀杏の木があります。ところで、神社に銀杏がお約束といっていいほどありませんか?読者の皆様のご近所にも、神社に銀杏ありませんか?実はいくつか理由があります。
まずは目立つから。銀杏は背が高く幹もふとく育つ木なんです。神社といった地域のランドマークといえる場所では、目印となる木があると見つけやすいんです。神社という場所がら、願いも込められていて、銀杏は水分を豊富に含んでいることから非常に燃えにくい木です。神社は木造で非常に燃えやすい建物です。そこで燃えにくい銀杏をそばに植えることで、願掛けをしたという説があります。
そして、銀杏は「縁結び」のご神木となっているものも少なくありません。ここ湯倉神社でもそうなんです。銀杏は秋になると実を結びますよね。まさに 「実を結ぶ」!これが「縁を結ぶ」につながり、湯倉神社でも縁結びアイテムとして、秋には銀杏の実を拾う参拝者も多いそうです。
水琴窟
さてようやく境内へ。
しかしまだまだ境内の奥には進めませんッ!朱色の鳥居をくぐり右横には水琴窟があります。
水琴窟を設置している庭園や神社・お寺も多いので、ご存知の方も多いでしょう。地下に瓶を埋めて、そこに水を垂らすことによって、瓶の周りの壁に音を反響させて、その音色を楽しむというもの。
水琴窟はその構造によって音色はさまざまなので、水琴窟の音色を収集するマニアもいるほどです。ですが、ですが・・・!ここは周囲の道路の交通量が多く、日中にその音色を楽しむのはちょっと難しそう。音色を楽しむには、みんなが活動する時間とずらしたほうがよさそうです。
土方歳三ファンの聖地巡礼の地?
ここ湯倉神社は、土方歳三ゆかりの神社でもあります。土方歳三といえば歴史上の男性でイケメンランキングをしたら、必ず上位に名を列ねるイケメンです(たぶん)! ご存知、新選組を結成し副長を務めた人です。歴史を好きな方、そうでない方にも名前は広く知られているでしょう、あの土方歳三です。
境内の中央部には、土方歳三のパネルがあるのです。実はこれ、「みなみ北海道最後の武士達(もののふたち)の物語」という取り組みの一環。みなみ北海道の歴史をひもとき、ゆかりの地を訪ねる旅へ出かけよう!というキャンペーンで、戊辰戦争(箱館戦争)に関わった歴史上の人物に焦点をあて、関連する施設にこういったパネルを設定しているんです。
ちなみにこのパネルは、「旧幕府軍の箱館進攻、土方率いる部隊が川汲峠を行軍」として湯倉神社に設置しているのだそう。この辺りを土方歳三が通ったんでしょうね。
【参考】みなみ北海道最後の武士達の物語