アイルランドはもともと水産業や農業で国を建ててきましたが、最近では観光業に注力してきています。中でもデザインを切り口に地方の街おこしとブランド化を推し進め、近年ではアイルランド各地のアートやクラフト巡りを目的とした観光客を惹きつけています。今回は、アイルランドのアート・クラフトのものづくりの発祥地として人気沸騰中のキルケニー州にご案内します。
この記事の目次表示
工芸の街・キルケニー(Kilkenny)とは?
キルケニー州はアイルランド南部に位置し、人口 2.4万人(2011年)でキルケニー市が州都となっています。キルケニー市は昔から工房が多く分散し、アイルランドのアートシーンを牽引してきました。現在は新旧の工房が織り交ざり、アイルランドのデザイン・クラフト協会本部も置かれ、経済不況から回復しつつあるアイルランドで、デザインによって再び街を興そうというエネルギーに溢れています。
インスピレーションの源泉・キルケニー城
13世紀初頭に建てられたキルケニー城が市の中心に位置しています。その後600年間もの長い間、バトラー家の邸宅として使用されました。当時のアイルランドにしては煌びやかでファッショナブルなルネッサンスの輝きを放つことで名高いマナーハウスでした。
キルケニー地域の文化繁栄の象徴でもあったキルケニー城は、最後の城主が1967年にたった50ポンド(現在の貨幣価値では約11万円)でキルケニー市の人々に引き渡し、現在では市やアイルランドの遺産を管理する公共団体が美しさを保全し、管理しています。
城のまわりには柵のない広大な芝生の庭があり、常緑のアイルランドだけあっていつでもきれいに手入れされています。城へは入場料を払えば入ることが可能で、順路に沿って自由に見て回ることができます。城の内部は一部改修された部分もありますが、建立当時の面影を残す古めかしい部分もあります。
一番のハイライトは、一面濃いピンク色の壁面に見事な大きな絵画が飾られているホールです。その美しい空間にうっとりとしてしまいます。
- キルケニー城
- アイルランド / 建造物
- 住所:The Parade, Kilkenny City, Ireland地図で見る
- Web:http://www.kilkennycastle.ie/
デザイン協会本部での常設展
キルケニー中心部に威厳たっぷりに存在するキルケニー城。城の裏庭にはアイルランドデザイン・クラフト協会(Design & Crafts Council of Ireland)の本部があります。こちらでは小さいながらもシンプルな空間を利用して、テーマ性のある展示を定期的に行っています。デザインの本拠地としてここから全国各地へクラフト・アート情報を発信しています。
2015年にはID2015というキャンペーンを政府観光庁などと共に1年間かけて行ない、国内外で企画展を行なったり、アイルランドと海外デザイナー同士の交流の場をつくってアイリッシュデザインの魅力を発信しました。
- ナショナル・クラフト・ギャラリー
- アイルランド / 博物館・美術館
- 住所:Castle Yard, Kilkenny, Ireland地図で見る
- Web:http://www.nationalcraftgallery.ie/
デザインセンター
デザインセンターはデザイン・クラフト協会本部に隣接しています。ここはアイルランド各地から届いた最新のデザインから定番商品までが揃うおみやげショップです。
1階には陶器や毛織物、アクセサリーやポストカード、オーナメントなど品揃えがよく、見ているだけで楽しいお店です。
ショップ2階にはアメリカのバスケットボール杯NBAの優勝トロフィーにも使われているウォーターフォード・クリスタルや、今や日本にも進出し、国内7つほどの百貨店にも店舗を構え幅広い支持を受けるブランドOrla Kiely(オーラ・カイリー)など、アイルランドが誇る世界に名高い商品がずらり。
また1階にも2階にもそれぞれカフェ、カジュアルレストランがあり、買い物や観光の合間に一息つくのもよいでしょう。
- キルケニー・デザイン・センター
- アイルランド / 雑貨・インテリア / おみやげ屋
- 住所:Castle Yard, Kilkenny, Ireland地図で見る
- Web:http://www.kilkennydesign.com/
工房を身近に感じられる「キルケニー・デザイン・トレイル」
MADE in Kilkennyと題し、キルケニー州内にある工房同士を繋いで人々に工房やショップを訪れてもらおうという取り組みがあります。それがキルケニー州府による「キルケニー・デザイン・トレイル」です。
ガラスや革、陶器、紙、ジュエリー、籠編みに石彫刻等10のカテゴリーごとに工房やキルケニーの仕事人を紹介しています。カテゴリーによって工房数はそう多くはないものもありますが、キルケニー原産の材料を使用し、世界にも通用する個性的な作品を生み出しています。
中でも層が厚いのが陶器です。キルケニー州の老舗陶器メーカーのニコラス・モスに継ぐ新しい窯元がいくつも現れつつあります。例えば、馬好きが高じて馬の毛を使って模様をつけた陶器Claire Molly、水色や白い色のシンプルな陶器が使いやすいRosemarie Durrがその代表格です。
また、個性的なキャンドルを作る工房 Moth to a Flameはキルケニー市郊外の村にあります。工房も見学することができ、キャンドル職人の情熱までもが伝わってきます。併設のショップには、自然からインスピレーションを得た美しい色のキャンドルが並びます。