京都にある源光庵で有名な「悟りの窓・迷いの窓」ですが、実はもう一か所「雲龍(うんりゅう)院」でも見ることができます。雲龍院には雪見障子から4つの違った景色が見える「色紙の景色」もあり、庭園の見せ方が特徴的です。静寂な空間でお抹茶も楽しめ、日本の和の心に触れられる癒しの寺院です。そんな雲龍院の魅力をたっぷりご紹介します。
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雲龍院とは
京都東山区にある真言宗泉涌寺(せんにゅうじ)には九つの末院があり、「雲龍院(うんりゅういん)」はその末院の一つです。
南北朝時代の後光厳(ごこうごん)天皇の勅願で建てられたお寺で、「別格本山」という本山に準じた待遇を受ける特別な格式を持った寺院です。御本尊は薬師三尊像で、西国薬師霊場四十番札所となっています。
雲龍院見学
それでは雲龍院を見学してみましょう。こちらの山門から入ります。
拝観料の種類は三種類
拝観料は3種類あり、拝観料400円、お抹茶付き900円、写経(拝観・お抹茶込み)1,500円になっています。拝観するだけでは勿体ないので、ぜひお抹茶付きを選んで下さいね。もちろん時間に余裕がある方は写経もおすすめ(団体客以外は予約不要)。写経は女性観光客に人気です。
蓮華の間で見られる色紙の景色にうっとり
書院を入るとまず出迎えてくれるのが、迫力ある「衝立(ついたて)の龍」です。この龍は、左右見る方向によって顔が違ってみえると言われています。
続いて「蓮華(れんげ)の間」に入りましょう。このお部屋には雪見障子(ゆきみしょうじ)があり、座敷には一つの座布団が敷かれています。その座布団から座って眺める景色がこちらです。
すると左から「椿、燈籠、楓、松」の4つの違う景色を見ることができます。色紙の窓(色紙の景色)と呼ばれ、座布団の位置からのみこの景色を見ることができるようになっていて、粋のある工夫に感銘を受けます。時間を忘れ、いつまでも見ていられる眺めです。
大倫の間で瞑想
蓮華の間の右隣にある大広間が「大倫の間」です。目の前いっぱいに美しい中庭を見ることができます。
ここには瞑想石が置いてあり、庭園を眺めながらこの石に足を乗せて瞑想をするという、リラクゼーションエリアになっています。普段なかなか体験できない、無の時間を味わいましょう。
霊明殿と勅使門を見学
後光厳(ごこうごん)天皇やその息子後円融(ごえんゆう)天皇らの坐像が奉安されている「霊明殿」。坐像はお首の部分が抜けるように造られているそうです。等身大に近い大きさのため、非常事態にせめてお顔だけでも持って逃げられるようにという配慮からだそうです。
そしてその前庭には、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜(とくがわよしのぶ)が寄進した石灯籠が配されています。石灯籠の周りには、白砂で皇室の菊花紋の文様が綺麗に施されています。
こちらの門は勅使門で、皇族様の専用の門になります。通常は固く閉められているため、「不明門(あけずのもん)」とも呼ばれています。近年では常陸宮妃華子殿下がお使いになったそうです。
本堂・龍華殿を見学
昭和41年に重要文化財に指定された「本堂の龍華殿」は、お薬師さんの愛称で知られている薬師如来三尊像が安置されています。こちらは写経場にもなっています。扉が閉まっているため入っていいのか躊躇してしまいますが、門の前に立ってみて納得です。皆さん猿に注意してくださいね(笑)。
後光厳天皇の第2子である後円融天皇は写経にとても熱心で、雲龍院は写経道場として発展しました。その名残として写経体験ができたり、定期的に写経会が開かれています。
悟りの窓・迷いの窓で禅の心を学ぶ
それでは書院に戻ります。
書院の左奥にあるのが「悟りの間」になります。丸と四角の窓はまるで額縁になり、庭園が美しい日本画のように映ります。
丸窓の「悟りの窓」は、禅の世界では"悟りの境地"を表し、四角い窓の「迷いの窓」は、人生の苦しみ"生老病死四苦八苦"を角で表しているといわれています。
まず「迷いの窓」の前で自問自答し、それから「悟りの窓」の前に行き、自分を見つめなおすことで本来の自分に変わることができると言われています。
もちろん何も考えずに、その美しい庭園を眺めるだけでも大丈夫です。そこにいるだけで心が和み、清められる感じがします。
お抹茶で癒しの時
お抹茶を味わう場所は、なんと書院の5か所から自分の好きな場所を選ぶことができます。とっても嬉しい計らいですよね。筆者はこの悟りの間を希望しました。お茶菓子は生菓子で、餡を包んだわらび餅です。
お抹茶と甘い生菓子を味わいながら、日本人でよかったとしみじみ感じる瞬間です。左に体を向けると写真下の景色が見えます。秋には綺麗に紅葉するそうです。
そして目の前には先ほどの悟りの窓、迷いの窓。そして右側は窓一面に中庭が広がり、どちらを向いても美しい景色が見られるとっておきの場所です。
時がゆっくり流れます。
走る大黒様がいる台所
雲龍院の台所には「走る大黒様」という珍しい大黒様が安置されています。通常はニコニコ顔の大黒様が印象的ですが、こちらは大きな袋を背負ったわらじ履きの大黒様で、怒りの形相で走る珍しい姿をしています。鎌倉時代の作の貴重な大黒様ですので、最後に台所にも立ち寄ってみて下さいね。
雲龍院へのアクセス
雲龍院は市街地からそれほど離れていませんが、金閣寺や銀閣寺などがある観光エリアとは京都駅を挟んで反対側に位置しています。
- (1)JR京都駅から市バス208系統か88系統に乗車⇒「泉涌寺道」で下車し徒歩約15分
- (2)JR奈良線・京阪本線東福寺駅から徒歩約20分
近くにある東福寺に足を運ぶ観光客は多いですが、こちらの寺院を訪れる観光客は少なく、落ち着いた雰囲気で見学できるのが一番の魅力です。
終わりに
いかがでしたか?
いつ何度訪れても飽きない京都。京都にはたくさんの寺院がありますが、有名な寺院はもう周ってしまった方、人混みが苦手な方、お抹茶やゆっくりと庭園の景色を味わいたい方に、今回紹介した雲龍院はおすすめです。筆者が訪れた時は観光客は数組、お部屋によっては貸し切りになることもありました。無心でお庭を眺めたり、自分と向き合ったり、普段できない特別な時間を過ごすことができますよ。
- 雲龍院
- 東山・祇園 / 穴場観光スポット / 寺
- 住所:京都府京都市東山区泉涌寺山内町36地図で見る
- 電話:075-541-3916
- Web:http://www.unryuin.jp/