日本の国造り神話が生まれた土地であり、古くから手仕事が栄えた島根県。出雲大社や玉造温泉で縁結び・癒しの旅ができるほか、2015年に国宝に登録された築城400年の松江城、そして世界に名を馳せた日本一の庭園・足立美術館など、見所がぎっしりと詰まった場所でもあります。今回は、日本海や宍道湖、中国山地といった自然との距離感の近い島根の暮らしから生まれた「器」の世界にご案内します。
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島根は、陶芸が盛ん!?
自然と人の暮らしとの距離感が近い山陰(島根県・鳥取県)では、古くから良質の陶土がとれ、陶芸が盛んです。島根の陶器は日常の暮らし向きで使い手の立場に立って作られ、お抹茶をいただく抹茶茶碗から、用の美にこだわった身の回りの器まで、山陰独特の自然環境によって生まれた作品が特徴的です。
民藝運動の流れに乗って、柳宗悦(やなぎ むねよし)やバーナード・リーチ、吉田璋也(しょうや)といった民藝の先駆者たちが、山陰両県の窯元で指導してまわったことで、シンプルでありながら飽きのこない質の高い作品をそれぞれの窯元が磨きをかけていきました。
縁結びの出雲大社や玉造温泉、国宝に登録された松江城、それに世界遺産の石見銀山といった全国的にも名高い有名観光地のある島根県。
今回は、人気観光スポットに行くついでにぜひまわりたい、島根育ち島根在住の筆者がお勧めする旅+αとして島根の器を巡る旅をご案内します。
なお、鳥取の窯元巡りについてはこちらの記事をご覧ください。島根県・鳥取県にお越しの際には、ぜひ窯元めぐりをお楽しみください。
1.出雲大社に+α:出西(しゅっさい)窯
柳宗悦の民藝の教えの下、「野の花のように素朴で、健康な美しい器、くらしの道具」をつくるという考えに基づいて手仕事により生み出される出西窯の器。今や日本全国各地のみならず、海外メディアにも取り上げられるほどの密かな人気ぶりを博しています。
出雲空港からほど近い島根県出雲市の出西地区に窯を構える出西窯。窯元直営の販売店の他、併設の出西窯の商品を試し使いできる併設セルフ・カフェスペース(無料)の他、作品があみ出される工房・登り窯の見学(いずれも常時・無料)もできます。
出雲地方の3ヶ所で採取した原土を水と混ぜ合わせて精製し、陶器の材料となる粘土づくりからこの窯元で行っています。釉薬(ゆうやく)の釉の原料も地元の素材を大切にしています。
職人の手仕事で作られる作品は、シンプルなデザインでありながら実用性も兼ね備えた器です。1点ものなのに、マグカップ1個1,000円~、皿1,500円~と購入しやすい価格なのも嬉しいですね。
出西窯の作品で代名詞ともなっているのが「出西ブルー」と呼ばれる、深いコバルトブルーの釉薬の商品。小皿、大皿、おちょこ、カップなど様々な商品があり、最も人気のある色です。洋の料理でも和食でも、どんな料理にも合う汎用性が人気の理由の一つです。
- 出西窯
- 島根 / 窯元
- 住所:島根県出雲市斐川町出西3368地図で見る
- 電話:0853-72-0239
- Web:http://www.shussai.jp/
2.玉造温泉+α:湯町窯
宍道湖沿いにある天然温泉街・玉造(たまつくり)温泉。温泉街のはずれに創業大正11年の老舗窯元「湯町窯」はあります。
どんな料理にも合いそうな薄い茶系のカップ、窯元にほど近い宍道湖の湖岸の水の色を思わせる透き通った薄い青などの釉薬のお皿、ピッチャーなど、1点1点手作りの温かみの伝わる作品です。
イギリス人の陶芸家バーナード・リーチが、湯町窯をたびたび訪れて伝授した技術を受け継いでおり、独特の模様が描かれている器や、西洋向けの目玉焼きが作れるエッグベーカーなどが人気商品となっています。
また、湯町窯では湯飲みの絵付け体験をすることができます。大きさによって料金が異なり、大きいもので2,000円、小さいものは1,800円となっています。納期は窯の火入れのタイミングによりますが、完成した自分のオリジナル湯飲みは後日宅配されます。ぜひ旅の記念に自分だけの作品をつくってみませんか?