東京・恵比寿にある「山/Yama」は、季節のフルーツや新鮮なこだわり素材を使ったデザートのみのコースがあることで有名です。今回は、各種雑誌やメディアでも取り上げられており、注目度が増しているカウンターデザートの名店「山/Yama」を訪れ、魅惑のスイーツコースをご紹介します。
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カウンターデザートとは?
カウンターデザートとは、オーダーされたデザートを、シェフがカウンター越しに作ったり仕上げたりし、提供するスタイルのものです。都内を中心に、近年カウンターデザートを楽しめるパティスリーやレストラン、カフェが増えています。
カウンターデザートの魅力は、調理前の素材からデザート1皿が作られる過程を見られ、シェフの技の一部始終を堪能できることです。中には、単品デザートだけでなく、デザートのみをコース仕立てで楽しめるところもあります。
今回は、旬のフルーツやこだわりの食材を用いて、カウンターでデザートのみのランチコースを体験することのできる、東京・恵比寿の「山/Yama」をご紹介します。
恵比寿「山(Yama)」でデザートのみのコースを堪能!
恵比寿駅東口からほど近く、静かな路地に入ったところにある山/Yamaは、建物の地下1階にあり、外観からは内部がわかりにくくひっそりとした隠れ家のようなお店です。
階段を下ってお店に入ると、シックな白、シルバー、木を基調としたシンプルでありながら温かみのある雰囲気となっています。店内はカウンター席6席のみとなっており、シェフと対面しながら出来立てのデザートコース(ブレンドティーのペアリング込みで税抜8,800円〜)を楽しむことができます。今回はランチコースを取材し、その魅力をお伝えします。
なお、ランチではデザートのみのコース(8,800円〜)となっていますが、ディナーではパティシエのテクニックを随所に入れたお食事のディナーコース(20,000円〜)を楽しむことができます。
シェフKoichi Katsumata
「山/Yama」を切り盛りする日本人シェフKoichi Katsumataは、日本のほか、フランスやオーストラリア・メルボルンの名店で修行をしてきた経験があります。南フランスのHostellerie Jerome、メルボルンのVue de monde、シドニーのBennelong Restaurantなど、ミシュラン星付きレストランやその街の最高評価を得たお店での経験を通じて、今日のデザートコースにつながる数々の技を磨いてきました。
「山/Yama」では、そんなシェフの技の光る細やかなおもてなしを余すところなく堪能することができるでしょう。
季節のフルーツを使用したデザートコース
季節によって異なるフルーツや食材をどう活かすかは、シェフの腕の見せ所。「山/Yama」では、毎回、1〜2種類のフルーツまたは食材を取り上げ、それを使用したコース料理を提供します。
例えば、春であれば桜や蜂蜜、夏になると柑橘系フルーツにさくらんぼ、桃、食材の宝庫となる秋は、いちじく、ぶどう、栗、柿や梨などをテーマにしたデザートコースが仕立てられます。また、冬になると様々な種類いちごを使ったものも楽しむことができます。
取材日(2021年1月)は、いちごをテーマにランチデザートコースが組まれており、アミューズからはじまるデザートのみの豪華コースが提供されました。
コースの始まりであるアミューズは、「雲」と呼ばれる「山/Yama」のシンボルとなるデザートで、マシュマロよりもふわっとした舌触りで口に含むと一瞬で溶けてしまう繊細な一品。今回は、島根県奥出雲町から届いた「さひめ」という種類のバラの香りをまとったフレーバーでした。
2品目は、濃厚なミルクアイスクリームに生のフレッシュいちごから作ったピューレをたっぷりとかけていただきます。口どけ滑らかなアイスクリームと、酸っぱさの残るいちごの相性がピッタリです。
3品目は、Basil×Strawberryという一品。バジルの香りをアンフィゼした(香りを移した)ブランマンジェ(ババロアのようなゼリー状のデザート)が一番下に敷かれ、その上に丸く切り抜かれた苺と柑橘の香りづけがされたマリーゴールド、そして貴腐ワインのフィルムを纏わせています。真っ白なブランマンジェは、姿は見えずともバジルの存在感を感じる一品で、風味豊かな植物をいただいているような錯覚に陥ります。
4品目は、高さのある丸いフォルムのガラス器に、贅沢に4種類のいちごが盛られた一品です。一見、すべて生のいちごに見えますが、実はその中の3粒のいちごの中にアイスクリームが入れられているのです。とちおとめは小豆のアイス、あまおうはいちごのアイス、そしてやよいひめはバニラビーンズたっぷりのバニラアイスとなっています。生のいちごも、もちろんそのまま食べることができ甘酸っぱい、さぬきひめの素材の味を堪能してみてください。
最後となる5品目は、ヴァシュラン・グラッセ。ヴァシュラン・グラッセというのは、もともとチーズが用いられ、クリームとメレンゲで仕上げた一品です。シェフがパリのSolaで働いていた頃から作っていた逸品だそうで、ヨーロッパと日本の苺の甘さ・酸味の違いを考慮し、糖度と脂質を抑えてさっぱりと仕上げています。
先述の奥出雲町の「さひめ」の薔薇エッセンスでいちごをマリネし、その上にフロマージュブラン(クリームチーズのアイスクリーム)と無糖の生クリーム(脂肪分35%)が乗ります。パリパリになったドライのフランボワーズをふりかけ、目にも美しい仕上がりに。
ハイライトとなるのは、熟練シェフのみが成せる技である、薄さ1mmにも満たないほど薄い飴細工。氷のようにパリンという音とともに楽しめる飴は、舌の上でも瞬時に溶けてしまいます。贅沢にも5枚も乗っているので、クリームと一緒に食べたりそのままで食べたり、いろんな角度から楽しんでみてください。
スペシャルブレンドティーとペアリング
「山/Yama」では、アミューズに始まり、各デザートに合うブレンドティーをペアリングして提供しています。シェフの出身地である山梨県の森でシェフ自らが採取したハーブや野草を煎じて、なんとワイングラスで楽しむお茶となっています。
色は白ワインのように澄んだ薄黄色のお茶が多く、グラスも様々で、香りが楽しめるように飲み口の大きめのグラスや白ワイン用グラスなど、お茶のフレーバーに合わせてグラスが選ばれています。温かいうちに口に含んでもいいですし、温度が下がることで起こる香りや味の変化も楽しむことができます。
最初に出て来たのが赤松と白樺のブレンドティー。森を感じさせるすっきりとした飲み口が印象的で、アミューズを楽しむ前後にぴったりです。
その後、柚子とレモンバーベナ、そしてシェフが思い出深いオーストラリアをイメージしたユーカリをテーマにしたお茶など、独創的で、でも不思議とフルーツ仕立てのデザートにもよくマッチするブレンドティーの数々を味わいます。最後には、店内いっぱいに香りが広がる金木犀とジャスミンのブレンドティーをグラスでいただきます。
ブレンドティーとデザートのコラボレーションにより、シェフならではのこだわりのおもてなし空間へと惹き込まれてしまいます。