「フーテンの寅さん」でお馴染みの映画、『男はつらいよ』。風来坊に生きる寅さんの人生を舞台に、日本各地の情景や、故郷の葛飾柴又で繰り広げられる下町人情あふれる物語は、シリーズ開始から50年が経った今でも多くの人に愛されています。故郷の舞台に選ばれた柴又には、今も江戸川の豊かな自然や街の歴史・文化が息づいています。そんな柴又の情緒あふれる景観は、国の「重要文化的景観」にも選ばれました。この記事では、そんな柴又の魅力が詰まった、おすすめの観光スポットをご紹介します。
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柴又は、どんなところ?
柴又は、東京都の北東部にある葛飾区にあります。街は江戸川の西側に広がっていて、川の向こう側は千葉県松戸市になります。
柴又には神社仏閣が点在し、和風建築も多く見られます。またそんな街中を、細い路地が縫うように通っているのも特徴的です。豊かな自然が残る江戸川には渡し船がゆっくりと行き来し、参道には草だんごやおせんべいのいい香りが漂い「いらっしゃーい!」という元気な声が響きます。
創業200年を超える老舗の川魚料理店や木彫りなどの民芸品が並ぶお店が軒を連ね、下町の情緒を感じるとともに、歴史や昔から引き継がれている庶民の生活を垣間見ることができる街です。
葛飾柴又は「フーテンの寅さん」の故郷でも有名
「フーテンの寅さん」でお馴染みの映画、『男はつらいよ』をご存知の方も多いと思います。風来坊に生きる寅さんの人生を舞台に、日本各地の情景や、故郷の葛飾柴又で繰り広げられる下町人情あふれる物語は、シリーズ開始から50年が経った今でも多くのファンに愛されています。
昭和43年(1968年)にテレビドラマとして始まった『男はつらいよ』は、シリーズの終了に大きな反響が起こり、その後に映画シリーズとして復活しました。山田洋次監督や映画の制作スタッフは、物語の舞台となる地を探し求め、東京や近郊など多くのロケーションを訪ねたそうです。そしてたどり着いた地が、東京都葛飾区にある柴又でした。
江戸川の豊かな自然、参拝客で賑わう帝釈天や参道、そして、柴又に息づく住民の生活文化は、『男はつらいよ』の物語のイメージにピッタリでした。こうして寅さんの故郷となった柴又はすべての作品に登場することとなり、今では「寅さんの街」として広く知られるようになったのです。
大切に守られ継承される、葛飾柴又の景観や音風景
街の開発が繰り返し行われている東京にありながらも、柴又には未だ伝統的な情緒があふれ、歴史や文化が息づいています。建造物などの景観だけではなく、名物の草だんごの香りや参道の賑わいなど、五感で感じる生きた「柴又っぽさ」があるからとも言えます。
この街に「柴又っぽさ」が残っている理由の一つに、柴又の歴史や文化が様々な方法で守られ継承されている事があげられます。例えば、1996年に公募された「日本の音風景100選」に柴又の帝釈天界隈と矢切の渡しが選ばれています。これは、「全国各地で人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境(音風景)」の一つに選ばれた事を意味します。
また、柴又の景観は、2019年2月に東京都内で初めて国の「重要文化的景観」に選ばれました。これは、古くから継承される人々の生活や風土が形成する景観がある地域として特に重要であること、そして次世代へと継承するために保護される事を意味しています。
観光スポット1:帝釈天参道
それでは、葛飾柴又の魅力が詰まった、おすすめの観光スポットをご紹介していきましょう。
柴又界隈で一際賑わいを見せるのは、帝釈天(たいしゃくてん)へと続く表参道です。京成金町線の柴又駅を出るとすぐに参道の入り口へのサインが見え、帝釈天まで約200mほど続いています。
趣のある建物が並ぶ参道では、名物の草だんご、焼きせんべい、くず餅、飴、漬物、矢切の渡しもなか、どらやきなどが売られています。店の外からおだんごを作ったりおせんべいを焼いたりする様子も見え、参道を歩いているだけで楽しいです。
店内に客席を設けているお店も多くありますので、食べ歩きするもよし、休憩ついでに店内でお茶と共にいただくもよし。お蕎麦や天丼などの食事と一緒にいただくもよし!包んでいただいてお土産にするのも良いですね。
だるまや木彫りなどの民芸品を売るお店もあります。『男はつらいよ』でお馴染みの寅さんにちなんだグッズもあり、柴又を訪れた記念やお土産用に購入したい商品がたくさん揃っています。
- 柴又帝釈天参道
- 柴又・亀有・北千住 / 町・ストリート / 一人旅 / 食べ歩き
- 住所:東京都 葛飾区柴又4-8-14地図で見る
- Web:http://shibamata.net/index.html
うなぎ蒲焼一筋250年!「川千家(かわちや)」
たくさんの提灯が下がる趣のある建物が目を引く「川千家」は、安永年間創業の老舗の川魚料理屋です。名物のうな重はもちろん、鯉こくやどじょう柳川、天ぷらも人気です。また、鮮度が命と言われる鯉やうなぎのあらいも頂けます。
中庭を眺めるお座敷や個室もある老舗にも関わらず、参道に面する広い食堂は誰でも気軽に入れる雰囲気です。車椅子でも入ることができ、授乳室もありますので、家族でもゆっくりと寛ぐことができる、おすすめのお店です。
- 川千家
- 柴又・亀有・北千住 / 和食 / 郷土料理 / ご当地グルメ・名物料理
- 住所:東京都葛飾区柴又7-6-16地図で見る
- 電話:03-3657-4151
- Web:https://www.kawachiya.biz/
おもちゃの街・葛飾区を紹介する「おもちゃ博物館」
ブリキ看板など昭和の雰囲気あふれる外観が目を引く「おもちゃ博物館」は、参道入口のサインをくぐるとすぐにあります。
1階にある「柴又ハイカラ横丁」には数千種類の駄菓子や雑貨が揃い、大人も子供も目を光らせて買い物に夢中になってしまうでしょう。2階には「おもちゃ博物館」があり、大小様々な懐かしいおもちゃ達がずらりと展示されています。目玉とも言える大きなスロットレーシングのサーキットも必見です。両階には懐かしいゲーム台が置かれ、実際に遊ぶこともできます。
葛飾区は、中小のおもちゃメーカーが多く集中しているエリアでもあります。昭和の頃は、今のコンビニよりも多くの駄菓子屋を見かけたという話もあります。館長の「昭和の下町葛飾のおもちゃ文化を伝えたい」という思いを、メーカーや、コレクターでも有名な漫画原作家の黒沢哲哉氏が協力することで実現したのが、ここ「柴又ハイカラ横丁&柴又のおもちゃ博物館」なのです。
- 柴又のおもちゃ博物館
- 柴又・亀有・北千住 / 博物館
- 住所:東京都葛飾区柴又7-3-12 柴又ハイカラ横丁2階地図で見る
- 電話:03-3673-2256
- Web:http://www2.odn.ne.jp/shibamata/index.html
【おまけ】帝釈天参道の歴史
正しくは経栄山題経寺と呼ぶ柴又帝釈天は、開山後に行方不明になっていたご本尊が1779年に見つかったことで、参拝客の数が一気に増えたことがありました。遠方から何日もかけて訪れる参拝客もおり、やがて、参道や付近では地元の人々が農業の傍らで川魚料理の茶屋や宿屋などを営み始めます。そうして参道は賑わいを増し、現在に至ります。
観光スポット2:経栄山 題経寺(帝釈天 題経寺・柴又帝釈天)
柴又帝釈天や帝釈天題経寺で知られる「経栄山 題経寺(きょうえいざん だいきょうじ)」は、江戸時代前期にあたる1629年に開山した日蓮宗のお寺です。日光東照宮の陽明門をモデルにしたと言われる二天門(にてんもん)は、圧倒的な豪壮さを感じると共に、賑やかな参道を歩む人々を静かに出迎えているかのようにも見えます。
境内はとても広く、「瑞龍の松」と呼ばれる見事なクロマツに守られるように建つ帝釈堂、本堂にあたる祖師堂、百五十坪の広さに建つ見事な木造建築の大客殿、渡り廊下がぐるりと囲む心休まる邃渓園(すいけいえん)、松の根元でこんこんと水が湧き出る浄行菩薩、そして、約15mの高さで見事な木彫が施された大鐘楼などがあります。
また、帝釈堂の外壁に施された彫刻はギャラリーになっており、年間を通して多くの方が訪れる人気のスポットでもあります。
お寺の縁起
柴又帝釈天には年間を通して多くの参拝客が訪れますが、その歴史を振り返えると、なぜ多くの人が帝釈天に信仰を寄せるのかを伺い知ることができます。
お寺では、開山後に帝釈天が彫られたご本尊「坂本尊」の行方がわからなくなった事がありました。その後、江戸時代後期にあたる安永8年(1779年)に本堂の梁の上からご本尊が見つかり、参拝客が多く訪れるようになりました。
そして、天明2年(1782年)から発生した「天明の大飢饉」で多くの人が飢餓や疫病に苦しむ事態になった時、九世の日敬上人が坂本尊を背負って各所を訪れてたくさんの人に一粒符(いちりゅうふ)を施し、ご利益を授けました。
こうして帝釈天に心を寄せ信仰する方が増え、また、元々結縁のあった庚申待(こうしんまち)の信仰が結びつき、お寺への参拝者が増えていったのです。ちなみに、日敬上人が施した一粒符は今では「飲むお守り」として有名で、境内で購入することができます。
- 柴又帝釈天
- 柴又・亀有・北千住 / 寺 / パワースポット / 縁結びスポット
- 住所:東京都葛飾区柴又7−10−3地図で見る
- 電話:03-3657-2886
- Web:http://www.taishakuten.or.jp/