パキスタン
パキスタン観光
インダス文明やガンダーラ王国の遺跡

【パキスタン】そこに行けばどんな夢も叶うというよ!遥かに遠い愛の国ガンダーラ

取材・写真・文:

東京在住
訪問エリア:191ヶ国

2023年6月27日更新

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写真:toshel

ガンダーラは、紀元前6世紀から長きに渡り存続した古代王国です。当時のギリシャとオリエントが融合したヘレニズム文化の源流となり、そこで確立された仏教美術は世界中へ伝わりました。テレビドラマの『西遊記』でゴダイゴも歌い、果てしなく遠い未知の国の印象があるガンダーラ。今回は、世界遺産に指定されているパキスタンのガンダーラ遺跡を歴史とともご紹介します。

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古代王国ガンダーラ

ガンダーラは、現在のパキスタン北西部からアフガニスタン南東部にかけ、B.C.6世紀からA.C.11世紀ごろまで存在した古代王国です。

古来より、シルクロードにおける東西交通の要衝であり、ギリシャ、ペルシャ、シリア、インドから、多岐に渡り様々な物が行き交う国際的な商業都市として栄えました。そして、その経済的な繁栄から仏教揺籃の地ともなりました。

ガンダーラ美術に見るヘレニズムとお釈迦様

仏教は、紀元前5世紀の古代インドにおいてお釈迦様の説いた教えをもとに始まり、各地に広まりました。お釈迦様がこの世を去った後は、仏舎利(お釈迦様の遺骨)を祀るストゥーパ信仰が興りますが、その時点ではまだ愚像崇拝はなかったといわれています。

  • 写真:toshelタキシラ美術館の展示物 ストゥーパ

お釈迦様の入滅後、しばらく経った紀元1世紀頃から、どこからともなく仏像が刻まれるようになると、古代ギリシャとオリエントが融合したヘレニズム文化が盛んとなっていたガンダーラでは、多彩な仏教美術が生み出されました。こちらのお釈迦様は、どことなくギリシャ神話に出てくる神々の像を想起させますね。

  • 写真:toshelカラチにあるパキスタン国立美術館展示

髪はカールし、顔の彫りは深く、西洋人とも東洋人とも見て取れます。

  • 写真:toshelカラチのパキスタン国立美術館展示品
  • 写真:toshelカラチのパキスタン国立美術館展示品

こちらの仏像はお召し物にドレープがかかり、いかにもギリシャやローマ風の石像です。繁栄の極みにあった時代のこれら古代ガンダーラ美術は、遠く日本にまで影響を及ぼし、仏教伝来とともに建造された奈良の飛鳥寺や大阪の四天王寺の仏像は、実際にヘレニズム文化に大きく影響されているといわれています。ヘレニズムがお釈迦様に反映されるその美しさ、不思議さはガンダーラ美術ならではです。

  • 写真:toshelカラチのパキスタン国立美術館展示品

尚、仏像の起源はガンダーラにあるという説もありますが、これには諸説あり今でも議論されているようです。

小説『西遊記』

皆様は『西遊記』という小説をご存じでしょうか。これは16世紀に中国で書かれたフィクションで、三蔵法師と呼ばれる僧侶が仏教の経典を求めて、白馬(玉龍)に乗り、孫悟空、猪八戒、沙悟浄を従え、幾多の苦難を乗り越えながら「天竺」を目指す物語です。

ゴダイゴの歌った『ガンダーラ』

日本でも何度かドラマ化され、1978、1994、2006年とそれぞれのキャストで描かれました。1978年版の西遊記では、当時大ヒットした「ゴダイゴ」というグループの曲『ガンダーラ』がエンディングに流れました。歌詞は下記のとおり。

そこに行けばどんな夢も叶うというよ
誰もみな行きたがるが遥かな世界
その国の名はガンダーラ
どこかにあるユートピア
どうしたら行けるのだろう教えてほしい
In Gandhara, Gandhara They say it was in India
Gandhara, Gandhara 愛の国ガンダーラ
※ゴダイゴ『ガンダーラ』より一部引用

このころ筆者はまだ子供で、テレビドラマ『西遊記』を毎回楽しみにしていました。そして、エンディングに流れるこの曲を聴いては、その桃源郷のような雰囲気を醸し出すガンダーラに憧れを抱いていました。その一方、よりによって天竺へ徒歩で向かう一行の気の遠くなるような旅路に、恐怖も感じていました。それでもあの頃、「私も大人になったらガンダーラを目指そう」と密かに思っていましたよ。

実在した三蔵法師「玄奘」

中国で書かれた西遊記や日本のドラマはフィクションですが、三蔵法師だけは実在の人物です。

本名は「玄奘」。

13歳で出家して僧侶となりますが、当時の中国既存の経典に少なからずの矛盾を感じ、「仏典は原点に拠るべき」と仏教の原典を求め、西暦629年、彼が27歳のときに天竺を目指します。中国を出発した玄奘は、その後、実に110の国を歴訪します。

玄奘の書いた『大唐西域記』

玄奘は帰国後、それらの国々の具体的な状況を『大唐西域記』としてまとめます。その著書には、歴訪した国110ヵ国にくわえ、そこで耳にした国を合わせた140ヵ国の歴史や文化、地理、医学、天文学などを詳細に記載します。西遊記は、玄奘の書いたこの著書を元にフィクション化されたものなのです。

天竺はどこ?

ゴダイゴの曲の影響からか、「天竺=ガンダーラ」と思われている日本人の方もいらっしゃいますが、「天竺」は当時の中国や日本が使っていた「古代インド」全体の旧称です。このため、「天竺」はガンダーラを含む下の図一帯(原始仏教16ヵ国)を指します。

天竺への入り口となったガンダーラ

『大唐西域記』で記された玄奘の足跡を辿ると、天竺へ向け長安(現、西安)を出発し、現在のカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、アフガニスタンと中央アジアのシルクロードを旅しています。そして、パキスタン(ガンダーラ)、インドへと到達しています。

つまり、彼の旅路では天竺の入り口がガンダーラということになります。もし玄奘がヒマラヤ山脈の南を行くルートを選んでいたら、ゴダイゴの曲は『ガンダーラ』ではなかったかも知れませんね。ヒマラヤ山脈の北側ルートを辿り、古代インドまで片道4年かかった玄奘は、ガンダーラに辿り着いたとき「ついに天竺だ!」と感無量だったのではないでしょうか。筆者の勝手な想像ですが。

「三蔵法師」は個人名ではない

天竺で仏教を学び直し、出発から16年の月日をかけて仏教の経典657部と仏舎利、仏像を馬20頭に乗せて持ち帰った玄奘は、サンスクリット語で書かれた経典を中国語へ翻訳する作業に生涯を費やします。玄奘の訳した『般若心経』は実に84,000ページにもおよびました。現在日本で使われている経典も、この時に玄奘が原典から漢訳したものです。

時の皇帝は彼の行いを称え、「経・律・論」の3つに精通した僧侶に与える敬称「三蔵法師」を玄奘に授けました。

ガンダーラの歴史が分かったところで、これよりヘレニズム文化を輩出したパキスタンのガンダーラの遺跡(世界遺産)をご紹介します。

タキシラ遺跡群(世界遺産)

現在のパキスタン首都イスラマバードから北西30Kmのタキシラは、ガンダーラ美術全盛期の都市遺跡、仏塔、僧院が広がる遺跡群で、一帯が世界遺産に指定されています。

  • 写真:toshel

ダルマラジカ(Dharmarajika)

ダルマラジカはガンダーラ文化の中心として栄え、僧院や仏舎利塔の集まるパキスタンにおける最古の仏教遺跡です。

  • 写真:toshel
  • 写真:toshel

マウリヤ朝のアショカ王によって2世紀ごろに建てられたこちらのストゥーパ(仏塔)は、基壇の直径が46mあり、タキシラ一帯では最大です。

  • 写真:toshel

紀元前5世紀ごろ、お釈迦様が涅槃に入り荼毘にふされ、その遺骨(舎利)が8カ所の墳墓に納められましたが、のちに採掘され、84,000塔に分納されたそうです。その時の一つはここにあるといわれています。

こちらの小ストゥーパの方形基壇は、ガンダーラ様式の建築です。ギリシャの祭壇に似ていますよね。

  • 写真:toshel

ガンダーラでは、基壇は仏像やストゥーパを支える台座として使用されています。

  • 写真:toshel

祠堂の中には仏像がありましたが、残念ながら顔から上は破壊されています。ドレープの姿から、頭部もヘレニズムの色濃く反映されたものだったと思われます。

  • 写真:toshel
ダルマラジカ
パキスタン / 遺跡・史跡
住所:dharmarajica地図で見る

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地球旅~現在191ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

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