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メルブ遺跡(Ancient Mary)/世界遺産
トルクメニスタン二つ目の世界遺産は、地方都市マル(Mary)の近くにあります。1999年に歴史的意義と、非常に多くのユニークに富んだ重要なモニュメントについて、ユネスコから世界遺産に認定されています。
紀元前から人々が脈々と住む続けたシルクロード上の古代都市は、西暦13世紀まで4,000年以上におよび繁栄し、その間に近くを流れていたムルガーブ(Murgab)川の枯渇や流れの変化により、都市も徐々に移動したこともあり、現在の遺跡の広さは実に15K㎡にも及びます。
紀元前6世紀ごろに建てられたエルク・カラ(Erk Kala)を始め、時代ごとに要塞が作られ、グヤウル・カラ(Gyaur kala)、スルタン・カラ(Sultan Kala)、イスカンダル・カラ(Iskandar Kala)、アブドラ・カーン・カラ(Abdullah Khan Kala)、バイラマリ・カーン・カラ(Bayramali Khan Kala)がその広大な敷地に点在します(カラ/Kala=要塞)。
都市の名称も時代ごとにモウル(Mouru)、マルガッシュ(Margush)、マルギアナ(Margiana)、メルブ(Merv)、マル-シャク-ジャカン(Maru-Shakhu-Jakhan)、マル(Mary)と変化。また、宗教もゾロアスター教、仏教、キリスト教、そしてイスラム教と変容したことで、古代マルの文化に一層の深みと幅を与えたといいます。
12世紀から13世紀にかけて最も繁栄し、城塞内だけで人口50万人にも及びましたが、1221年にモンゴルの侵攻をうけ、城塞内外に住む100万人もの住民が一人残らず殺害されたそうです。古代都市マルは完全に無人と化しました。
それでは、世界遺産都市、マルの主な建築物をご紹介します。
グレート・キーズ・カラ(Great Kyz Kala)
マルでは、比較的保存状態の良いグレート・キーズ・カラです。6世紀から7世紀にかけて建てられ、乙女の要塞とよばれていました。
2019年7月時点では修復中のため中へ入れませんでしたが、中庭を囲む17室の部屋で構成されており、外側は珍しい深波形の厚い壁で囲まれています。ちょっと珍しいですよね。
- グレート・キーズ・カラ
- トルクメニスタン / 遺跡・史跡
- 住所:Great Kiz Kala, Merv, トルクメニスタン地図で見る
アスハブ廟(Askhabs's Complex)
こちらは、預言者モハメッドのよき理解者であったアスハブの霊廟です。
写真手前にある大きさの異なる2つの霊廟は、それぞれアスハブと配偶者のお墓になっています。
黒い大理石の墓は、植物の装飾品や銘刻文字を使った絶妙なレリーフ彫刻で装飾されています。
墓の後ろにある建物は、青と青緑色のタイルで装飾されており、古代都市マルを望めます。
貯水池(Water Cistern)
アスハブ廟のすぐ近くには、屋根付き貯水池があります。
カラクム砂漠にあるこの地でも、冬は寒く雪も降ります。この泥レンガ造りの建物は、中が深く掘られており、冬になると周辺で降った雪を掃きいれ、春になるとその雪解け水を使用するという、当時にしては画期的なシステムですよね。
エルク・カラ(Erk Kala)
エルク・カラは古代都市マルの中心となった要塞でした。
今となってはただの小高い山ですが、急な斜面の先に建てられた搭の要塞の高さは25-29mに達しました。要塞は、大規模な円形をしていました。
現在は本当に何もない丘の上なのですが、ここにも当時の市民の生活があったのかと思うと、ロマンを感じます。
ユースフ・ハマダーニー廟(Mausoleum of Yusuf Hamadani)
ユースフ・ハマダーニー(Yusuf Hamadani)の霊廟です。
花の装飾で飾られた黒い大理石で造られています。霊廟の西の隅には礼拝堂があり、現在でも重要なイスラム教徒のモスクです。
- ユースフ・ハマダーニー廟
- トルクメニスタン / 建造物
- 住所:Mausoleum of Yusuf Hamadani , Merv, トルクメニスタン地図で見る
ムハンマド・イブン・ザイド廟(Mausolem of Muhammad Ibn Zayd)
ムハンマド・イブン・ザイド(Muhammad Ibn Zayd)はシーア派ムハンマド(Muhammad)第5世の子孫です。
こちらの霊廟の内部は薄暗く、壁装飾のほとんどが崩れてしまっていますが、綺麗なモザイクが遺っている個所もあります。
また、天井は石を敷き詰めたドーム型となっており、落ちないように計算されています。それ自体が装飾として素晴らしいです。
こちらは入り口付近にありました。洗濯物を干しているだけのように見えますが、クサジュリと呼ばれる春祭りの間、こちらのサクサウルの木に白い布をかけると願いが叶うとか。
- ムハンマド・イブン・ザイド廟
- トルクメニスタン / 建造物
- 住所:Mohammed ibn Zayd Mausoleum , Merv, トルクメニスタン地図で見る
スルタン・サンジャール廟(Sultan Sanjar mausoleum)
こちらは、スルタン・サンジャール(Sultan Sanjar)の霊廟です。
中世マルの中心となっていた建物で、一辺27mの正方形。八角形のリブとアーチで支えられた大きな中央ドームが内部を覆っています。
当時、ドームの外観はターコイズブルーでしたが、再建時に外壁と同じ素材に変えられました。
霊廟の装飾は、典型的な初期のセルジュク様式で作られ、内部の漆喰と幾何学的なレンガの装飾が施されています。内部の霊廟は大部分が無傷で、12世紀当時のまま遺っています。
マルの建築物の中で、一番美しいです。
- スルタン・サンジャール廟
- トルクメニスタン / 建造物
- 住所:Sultan Sanjar mausoleum, マリ トルクメニスタン地図で見る
新市街マル(Mary)
世界遺産の古代都市マルを訪れる際は、この街を拠点にすると便利です。古代都市マル(Ancient Mary)から30kmと近く、小じんまりとしつつも、立派な大理石の建物が並んでいますので、少しだけご紹介しますね。
ガーバングリ・ハジ・モスク(Gurbanguly Hajji Mosque)
2009年3月にオープンした新しいモスクです。黄金のドームと美しい大理石の壁に囲われ、2,500人を収容できる、マルで一番大きなモスクです。
- ガーバングリ・ハジ・モスク
- トルクメニスタン / 社寺・教会
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マル図書館(Mary Library)
こちらの図書館は2011年10月に開館し、建物内部にはおよそ300万冊の本を保管されるように設計されているとか。一度に600人が同時に読書できる座席もあります。
マル美術館(Mary Museum)
マルにある美術館です。あまり大きくないですが、4万点の展示品があり、古代から現代までに至る様々なコレクションが展示されています。
このほかにも、大理石で建築された映画館やちょっとした博物館など、比較的大きな建物がいくつもあるのですが、ここで不思議なのは、インターネットで開館時間を確認して訪ねても、これらの建物はなぜかいつも閉まっており、人の気配がないのです。本当に不思議な国です。上記のような説明も、実はすべて対外向けなのでは?と疑いたくなります。中身は空っぽとか?
もし、これらの建物の中へ入られた方がいらっしゃいましたら、様子を教えてください。
マル(Mary)の行き方
マルへは、アシガバードから国内線があり、片道一時間で一日一往復しています。また、既にご紹介させて頂きましたようにアシガバードよりマルへ続く道路もあり、綺麗に舗装されています。
この沿道には、旧シルクロードの遺跡が点在しているうえ、景色も雄大でとても美しいですので、片道は陸路で行ってみられるのも良いかと思います。所要時間はおよそ5時間です。ちなみに、ガソリンは31円/L(2019年7月時点)と、非常に安価です。産油国ならではでしょうか。