姫路駅ホームの立ち食い店には、「えきそば」と呼ばれる名物があります。戦後間もない1949年から70年以上も人々に愛される「えきそば」とは?!駅ナカにある、立ち食いではなく座ってゆっくり食べられる【Maneki Dining】も併せてご紹介いたします。
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姫路 “駅” 名物「えきそば」とは?
姫路には「姫路おでん」「御座候」「ぐじゃ焼き」など様々な名物がありますが、今回ご紹介する「えきそば」は、 JR姫路駅ホーム の名物。駅ホームで食べるそばを一般的に “駅そば” と言いますが、「えきそば」は、その駅そばです。
「安い!うまい!早い!」でサッと食べられる立ち食い文化は、江戸時代から続く日本のファーストフード。江戸時代ではファーストフードといえば蕎麦、寿司、天ぷらがメインだったそうですが、現代では、駅ホームで提供される食べ物がアツアツのうどんやそばになったというのは面白いですね。
ホームで電車を待っていると、出汁の香りに誘われてついつい一本の電車を見送って食べたり、逆に電車が来るまで大急ぎで食べて口の中を火傷してしまった、なんて思い出のある方もいるのではないでしょうか。
でも、近年では駅ナカの飲食店が充実してきていることもあり、だんだん駅ホームでの立ち食いそばは縮小傾向に。そんな中、「えきそば」は未だに多くのファンがいて、縮小どころか姫路駅を飛び出して「えきそば」が食べられる店舗ができたり、自宅でも食べられるような商品や、カップ麺まで販売されています。
そこまで人気のある「えきそば」の魅力とは、一体、何なのでしょうか?
ミスマッチな組み合わせが心を掴む
大前提には、「安い!うまい!早い!」がありますが、「えきそば」はそれだけではありません。蕎麦でも、うどんでも、ラーメンでもなく、ラーメンのような中華麺 、そして 和風出汁のつゆ という、なんともミスマッチなそばなんです。
この独特な組み合わせに、旅行や出張などで姫路に来る人は「これは新鮮だ!」と魅了され、姫路を出た方が帰省などで戻って来ると「これこれ、地元の味だ〜」と懐かしむ、こうして “姫路駅といったら「えきそば」”と次第に言われるようになったのですね。
しかも、このミスマッチな組み合わせは、戦後間もない1949年の販売当初から、今日まで変わっていないというから驚きです。
戦後の苦境で生まれた独特な麺
なぜこのような「えきそば」が生まれたのかと言うと、戦後で物資が不足していた当時、「まねき食品」という企業が、姫路駅で簡単に作れる麺を提供しようと計画したことに始まります。
当時は小麦粉が手に入りにくかったため、こんにゃく粉とそば粉を混ぜた うどんのような麺 で販売が始まりました。しかし、この麺は腐りやすく、すぐ伸びてしまうという問題が。
そこで、目をつけたのが かんすい です。
かんすい とは、現代でも中華麺を作る際に使われる水溶液。中華麺ならではの風味と独特のコシを生み、小麦粉に混ぜると黄色っぽくなります。すなわち、食感も見た目もうどんや蕎麦とは程遠くなることに。
それでも、「まねき食品」は独自で かんすい を使った麺の製造に乗り出し、かつ、 和風出汁 はそのままに、1949年に「えきそば」という名を付け、姫路駅で立ち売りを始めました。これが「えきそば」の始まりです。
早い!安い!クセになる旨さ!
えきそばは、早い!とにかく早いです!
店内に入ったら、まずは食券を券売機で買い、店員さんに渡します。そばが出てくる間に「どこで食べようかな?」とカウンター席の空いている所をサッと見渡すと思いますが、その目線を正面に戻すまでの10秒くらいで、もうできている!という早さです。
次に 安い!
定番の「天ぷらえきそば」「きつねえきそば」は 380円 、大盛りで 430円。かやくご飯やいなりといった一品がついたセットでも 620円 です。
そして クセになる旨さ!
食べて初めて「こういう味か!」と思える味わいです。まずは麺。これまで述べてきたように、かんすいが入っているので黄色の麺ですが、よくある中華麺とはちょっと違う。うどんのようなモチモチ感が少しあるけれど、やっぱりうどんとは言い難い。あえていうなら、中華麺と細うどんの中間、といった感じでしょうか。
つゆは、うどんつゆと同じ 和風出汁。関西らしく薄い色ですが、塩味が強めです。つゆだけだとしょっぱく感じるかもしれませんが、これがトッピングの天ぷらや油揚げに絡むと、いい塩梅になるのです。
人気No.1は 天ぷらえきそば 。天ぷらは、ほぼ衣です(笑)。これがつゆを吸ってふわふわになるのがまた旨い。「それなら揚げ玉をかければ良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、いえいえ、揚げ玉とはふわふわ具合が違います。「えきそば」には、やはりこの天ぷらが良いのです。