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平井保昌と和泉式部の碑歌
第一宮江踏切を渡り、西側に十数mほど行くと、平井保昌とその妻和泉式部の歌碑があります。平井保昌という人物は今から1000年ほど前に、源頼光に仕えた武士。伝承によると、平井保昌がこの地を訪れた際、昼食をとろうとしたところ、箸を持っていないことに気づき、近くの杉の木を折って、箸のかわりにしたといいます。
使い終えた杉の小枝を地面に挿し、 「源氏万代に栄えるものならば、この箸、根や葉を生じて繁茂せよ」と念じたところ、直径3メートルほどの木になったと伝えられています。その杉の木は明治43年の台風で倒れ、今は残っていません。
しかしながら、その杉が生えていたとされる跡地には、記念碑が建てられるなど、今も健在です。時間に余裕がありましたら、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
- 平井保昌と和泉式部の碑歌
- 赤羽・王子 / モニュメント
- 住所:東京都北区東十条1丁目2地図で見る
もうひとつの支線、須賀線の廃線跡
第ニ宮江踏切から、第一北王子踏切の間には、かつてもうひとつの貨物支線が分岐していました。その支線とは通称、須賀線。行き先は現在の豊島五丁目団地にあった須賀駅です。須賀線は1971年に廃止され、もはやその痕跡を見つけることは困難です。
しかしながら、第ニ宮江踏切に隣接する王子四丁目公園の形状から、分岐した線路跡の姿を思い浮かべることは可能です。この公園も廃線跡のひとつといえるかもしれません。
旧北王子駅は夢のあと
さて、3つ目の踏切跡、第一北王子踏切を超えると、その先は近代的なマンション群となっています。実は、ここがかつての旧北王子駅の構内でした。北王子線の廃止後、広大な北王子駅はマンションが建てられ、もはや当時の面影はありません。
しかしながら、マンションのガーデンズゲートの歩道面には、かつて使用されたと思われるレールが敷かれるなど、モニュメントとして残されています。
なお、マンションの西側に面した通りは桜田通りと呼ばれ、桜並木が続いています。桜の季節には見事な景観を見ることができます。
東京を代表する銘菓、草月の黒松
北王子線を辿る小さな旅は、旧北王子駅にて終点となります。歩き疲れた後は、甘いものが欲しくなるものです。旅の終わりに北区、いえ東京を代表する銘菓はいかがですか。
旧北王子駅跡からJR東十条駅へ向かう途中にある和菓子店「草月の黒松」は、開店前から行列ができる人気の銘菓です。黒蜜を混ぜたふわふわのスポンジにあんこを挟んだどら焼きに似たお菓子は、疲れた体を癒やしてくれるでしょう。
1個、120円(税抜き)という良心的な価格も多くの人に愛されている理由のひとつです。伝説の料理記者岸朝子氏も絶賛、店内に飾られた「黒松はおいしゅうございます」の色紙が燦然と輝いています。遅い時間に行くと、黒松は売り切れる可能性が高いので、ご注意ください。
- 黒松本舗草月
- 赤羽・王子 / スイーツ / 和菓子 / 和菓子店
- 住所:東京都北区東十条2丁目15−16地図で見る
- Web:http://www.sogetsu.co.jp/
銭湯で疲れを癒やす
やなぎ湯
歩き疲れた後は銭湯で癒やされるという手もあります。旧北王子駅周辺には人気の銭湯が2箇所あります。ひとつは「やなぎ湯」。
近年リニューアルされた銭湯で、スーパー銭湯感覚で入れるお風呂として界隈人気ナンバーワンの銭湯です。露天風呂の炭酸泉をはじめ、様々な種類のお風呂が楽しめます。広々とした休憩所では生ビールも飲むことができます。入浴料は大人460円です。ちなみにボディーソープ、シャンプーは備え付けられています。
金星湯
一方、もうひとつの銭湯は、第ニ宮江踏切の目の前にある「金星湯」。
特に日曜日のみ実施される朝風呂は特筆ものです。その秘密は400円で食べられる豪華なモーニング。このモーニングを目当てに訪れるお客さんも多いとか。モーニングに合わせて早起きする廃線旅というのもいいかもしれませんよ。入浴料は大人460円です。
- 金星湯
- 赤羽・王子 / その他温浴施設 / 銭湯
- 住所:東京都北区王子4丁目1−3地図で見る
- Web:https://www.facebook.com/pages/category/Community/...
まとめ
北王子線の廃線、踏切跡などは、いずれ撤去されていくことになるでしょう。そして時間とともに、そこにかつて鉄道が走っていたという記憶も少しずつ消えていくことになるのかもしれません。しかしながら、それは日本の近代化を進めてきた、ひとつの遺産であることは変わらぬ事実ではないでしょうか。東京23区内に現存する廃線を辿る旅は時空を超えた浪漫に満ち溢れています。