55歳の若さでこの世を去った、画家・絵本作家のいわさきちひろさん。死後、自宅跡地に開館した「ちひろ美術館・東京」は世界初の絵本美術館です。大人は童心に帰り、子どもはアートの扉を開く、「ちひろ美術館・東京」をご紹介します。
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絵本を芸術にした夭逝の天才画家
いわさきちひろさんをご存知ですか?画家であり、絵本作家として、多くの作品を発表してきました。とりわけ、水彩画による子どもを描いた作品はあまりにも有名で、ご自身の作品だけでなく、書籍の挿絵や商品のキャラクターに使われるなど、多くの人に知られています。いわさきさんの旺盛な仕事は絵本や童話に描かれる挿絵を芸術分野にまで昇華させたといえます。
世界初の絵本美術館
いわさきさんは1974年に55歳の若さで亡くなりました。画家として絵本作家としてまだまだこれからというときの突然の訃報でした。いわさきさんの死後、その膨大な作品と足跡を残すため、杉並区下石神井の自宅兼アトリエ跡地を利用して美術館が開館しました。それが世界初の絵本美術館となる「ちひろ美術館・東京」です。
「ちひろ美術館・東京」は1977年の開館以降、少しずつ展示スペースを拡大させ、現在の建物になったのは2002年のこと。全館をバリアフリーとし、様々な設備を備えました。2004年には日本国内の優秀な建築作品に与えられる賞であるBCS賞を受賞しています。なお、現在は黒柳徹子さんが二代目の館長を務められています。
子どものファースト美術館
水彩画を使った優しい筆使いに加え、没骨(もっこつ)法と呼ばれる滲みを用いた技法や、たらし込みという独特の技術など高度なテクニックを駆使して、子どもらを描いたいわさきさんの作品は今も色褪せることはありません。ギャラリーに置かれたいわさきさん愛用のソファに腰掛けながらゆっくりと作品を眺めることができます。
作品に登場する子どもたちの柔らかで真っ直ぐな目は大人を童心へと帰らせ癒やしてくれることでしょう。また子どもにとっての初めての美術館としても最適といえます。親子で楽しめる美術館はそうそうありません。
「ちひろ美術館・東京」の見どころ
ちひろのアトリエ
いわさきさんが晩年を過ごした自宅兼アトリエに建つ、「ちひろ美術館・東京」には、今も当時の面影を伝える場所が設けられています。ひとつはいわさきさんのアトリエを忠実に再現した部屋です。画家として最も脂がのっていた1972年頃のアトリエを再現しています。机にソファ、そしてピアノ、清楚でシンプルな仕事場はいかにもいわさきさんらしいといえます。今も絵を描き続けるいささきさんの姿が目に浮かんでくるようです。
四季を彩る「ちひろの庭」
そしてもうひとつが、「ちひろの庭」。いわさきさんが育てた草木や花が当時のまま残されています。館内の中庭に設けられており、自由に出入りすることが可能です。四季折々の移ろいを感じる、この庭はいわさきさんの絵と同じように、見る人の幼い頃に見た風景と重なる懐かしさを感じさせてくれることでしょう。
ホッと一息、本格カフェ
一生懸命作品を鑑賞したら、ちょっと一息入れて、ティータイムはいかがですか。「ちひろの庭」に併せて設けられているカフェテラスと1階の絵本カフェで楽しむことができます。
有機栽培による豆を使ったブレンドコーヒー(400円)をはじめ、紅茶(400円)や各種ジュース、そして子ども向けのキッズドリンクが用意されています。またベルギーの人気ビール、「シメイブルー」(960円)やイタリアビール「ナストロアズーロ」(730円)、更にはワインなどのアルコール類も充実しています。
スイーツは「スコーン」(700円)やババロア(500円)の他、安曇野から取り寄せた本場の「おやき」(690円)に「ホットケーキ」(460円)など、何を頼むか迷ってしまうくらいの充実ぶりです。※価格はいずれも税抜です。
3,000冊の絵本を蔵書する図書館
国内だけでなく、海外を含めた世界の絵本3,000冊を収蔵する図書室があるのも、同館の魅力のひとつです。もちろん、手にとって読むことも可能。親子が楽しめる美術館と呼ばれるゆえんは、ここにあるかもしれません。
世界の絵本の原画コレクション
絵本の美術館ということで、所蔵されている原画はいわさきさんのものだけにとどまりません。日本の絵本の創生期を担った「コドモノクニ」で活躍した武井武雄さんや初山滋さんをはじめ、現代絵本の巨匠、長新太さんなど錚々たる作家さんの原画が所蔵されています。
また国内だけでなく、エリックカールさんや世界を代表する画家のコレクションも含めて全2万7,200点に及びます。世界の絵本作家の作品を見られることも「ちひろ美術館」の魅力のひとつです。
あらゆる表現を駆使したイベント
企画展もさることながら、「ちひろ美術館」では様々なイベントも開催されています。各種講演会やギャラリートークにコンサートなど、絵や絵本の展示だけにとどまらず、いわさきさんの世界観をあらゆる表現で具現化しています。わたしたちが希求する平和に根ざした活動の営みを、見つめ直す催しばかりです。
開館時間と入場料
開館時間は10時から17時。最終入館は16時30分です。休館日は月曜日となっており、月曜日が祝日の場合は開館となります(翌平日休館)。冬期休暇として2月中は全てお休みとなりますのでご注意ください。入館料は大人800円。高校生以下は無料です。様々な割引が適用されますので、事前にホームページなどで確認されることをおすすめします。
- ちひろ美術館・東京
- 練馬・成増・板橋 / 美術館
- 住所:東京都練馬区下石神井4-7-2地図で見る
- 電話:03-3995-0612
- Web:https://chihiro.jp/tokyo/