所有地が東京ドーム約291個を超えていたと言われる越後随一の豪農・木村家。それは「弥彦参りまで人の土地を踏まずに行ける」と言われるほどの豪農でした。新潟の小さな集落に佇む館は、敷地内に一歩入ると別世界が広がっていました。
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「北方文化博物館」とは?
越後の豪農として富を築いた伊藤家の邸宅が、博物館として公開されています。場所は、新潟駅から約20km東、阿賀野川の西岸にあたる沢海(そうみ)地区に位置します。車なら30分弱で到着します。8,800坪という広大な敷地に1,200坪の屋敷を構え、部屋数は65室。八代続く伊藤家の歴史と、新潟の地方文化を伝える博物館となっています。
越後の豪農・伊藤家とは?
伊東家の屋敷がたつ沢海(そうみ)地区は、阿賀野川と小阿賀野川に挟まれた小さな集落で江戸時代には沢海藩が立藩され、沢海城の城下町として栄えます。江戸中期より農業の他、藍の商売、雑穀、質屋、倉庫業など代を重ねながら成功していた伊藤家は、越後随一の大地主となります。1944年(昭和19年)には、所有地が1,372ha(東京ドーム約291個分)、使用人も約60名を数えたと言われています。
「豪農」と聞くと、贅の限りを尽くしていたように思いがちですが、家訓には「田地を買うなら悪田を買い、美田にして小作に返せ」と残されています。土間近くに作られた10人以上座れる大きな囲炉裏は、使用人や風呂を借りに来た小作人が、暖をとりながら談笑できる場所だったそうです。「小作の収入や暮らしが安定してこそ、地主も暮らしが成り立つ」そんな考えを根底としていたからこそ、博物館の設立が実現し、八代も続く名家となりえたのでしょう。
私立博物館第1号「北方文化博物館」の誕生
大正時代、七代目文吉は慶応大学を卒業後、アメリカのペンシルバニア大学に留学します。帰国後、第二次世界大戦を経て、地主としての将来像を描くことができなくなった当主は「博物館をつくり、財産の総てをこれに寄付する」という決断を下します。
建物・庭・美術品を後世に残すため自らの財産を寄付し、「財団法人北方文化博物館」を創設します。こうして伊藤家は戦後の私立博物館第1号「北方文化博物館」として新しい舞台へ歩み出したのです。
「北方文化博物館」のみどころ
邸宅
敷地内には、20件以上の登録有形文化財に認定される建築が立ち並び、建物そのものが展示品と紹介されるほど、大変見ごたえがある北方文化博物館。8年もの月日を費やして建てられた屋敷は、7段に組まれた梁や会津から取り寄せた長さ30mもの丸桁など、当時の贅と技術を尽くした造りになっています。
母屋と中廊下でつながっている大広間は100畳もの広さで、上段の間、中段の間などを含む格式のあるお座敷です。また六代目当主が瞑想部屋や茶室として使っていた三楽亭11坪の数寄屋風書院は、当主自ら設計したとされ、柱、建具、畳に至るまですべて三角やひし形にこだわった形になっています。
現在正門受付となっている総2階建の門は、両側が土蔵になっていて、当時は米3,000俵を備蓄していた米蔵だったそうです。通用門の収古館には、什漆器や古文書が保管されています。他にも、番頭の住居だった離れの座敷や、博物館の資料として後年移築した古民家も配されています。
庭園
出典:niigata-kankou.or.jp公益社団法人 新潟県観光協会
北方文化博物館は、その歴史や建造物の素晴らしさも有名ですが、庭園の素晴らしさも一見の価値があります。世界遺産にもなっている京都・銀閣寺の出入り庭師を務めた庭匠・田中泰阿弥(たなか たいあみ)が、5年の歳月をかけて完成させた池泉回遊式庭園です。
全国各地の銘石を配し、庭には5つの茶室が配され、各間からの視線も計算された庭園です。500坪の庭園には、季節を彩る木々が配され、訪れる季節ごとに美しい姿で観光客を迎え入れてくれます。大広間から見る庭園は、柱が少ないため景色をさえぎらず、心ゆくまで庭園の美しさを楽しむことができます。
出典:niigata-kankou.or.jp公益社団法人 新潟県観光協会
必見は、5月の初旬に楽しめる八つの藤棚で、これは八代目当主が藤の花を愛したことから造られたそうで、樹齢150年、80畳の藤棚は、今や北方文化博物館の代名詞ともなっています。
展示品
日本の学芸員第1期生となった八代目当主は、世界の国々を回り、世界の文化行政や博物館の運営などを視察して回りました。その成果をもとに屋敷は徐々に博物館としての完成度を高めていくのです。
日本を中心に中国・韓国の美術品など資料総数は約6,000点を数え、季節やテーマごとに企画展も開催されます。皇室の方々の来訪をはじめ、数多くの要人をもてなす場としても提供されている北方文化博物館を訪れてみませんか。
新潟市内の「北方文化博物館 新潟分館」は、建築主逝去後に木村家の六代目が別邸として取得した屋敷です。こちらのお屋敷もお庭も一見の価値があります。機会があれば、立ち寄りをおすすめします。
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- 北方文化博物館
- 新潟市 / 庭園 / 紅葉 / 建造物 / 博物館 / 花畑(5月) / 歴史的建造物 / 藤の名所 / 歴史博物館
- 住所:新潟市江南区沢海2丁目15-25地図で見る
- 電話:025-385-2001
- Web:http://www.hoppou-bunka.com/top.html










































