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ワシントンD.C.で一番見応えのある美術館【ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art】

取材・写真・文:

兵庫在住
訪問エリア:18ヶ国

2020年3月18日更新

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バロック時代(17世紀)のオランダやフランドルも素晴らしい!

バロック時代には、オランダやフランドル 出身の画家も活躍しています。この頃は今の国の名称ではなかったので、分かりやすく言えば フランドル地方(オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部にかけての地域)。「フランダースの犬」で有名な場所です(フランドル=フランダース)。

これらのバロック時代の作品も、西館で鑑賞することができます。

ルーベンスの『Daniel in the Lion's Den(ライオンの穴の中のダニエル)』

フランドルに拠点を置いていた ルーベンス は宮廷画家であり、外交官も務めるなど教養もあり、とても高名で資産もある画家だったとか。大きな工房を作り、ルーベンスが下絵を描いた後、弟子たちに指示しながらたくさんの絵画を作ったそうで、その数なんと2,000点以上!

その代表作の一つが『Daniel in the Lion's Den(ライオンの穴の中のダニエル)』。さすが大規模工房で描かれた絵画、とーっても大きい!すごい迫力です!

この絵画の中に描かれた「ダニエル」という人物は、旧約聖書に登場する四大預言者の一人。信仰心が厚く、頭も良く、正義ある人柄が認められてペルシャの王に支えていましたが、それが気に食わなかった他の家臣の陰謀で、ライオンの洞窟に放り込まれてしまいます。

そんなライオンの洞窟の中で、神を信じるダニエルが一生懸命に祈っているシーン を描いたのですね。

ちなみに旧約聖書では、この後「天使ガブリエル」が救済に現れ、ダニエルは一命を取りとめます。そしてダニエルをおとしいれた家臣が、逆にライオンの餌になってしまう…、というストーリーの展開を知っていると、この作品を鑑賞する目も変わると思います。

フェルメールの『Women Holding a Balance(秤を持つ女)』

フェルメール も、バロック時代を代表するオランダの画家。この『Women Holding a Balance(秤を持つ女)』は、美術の教科書でも見覚えがあるのではないでしょうか。実際に観ると「こんな小さな絵画だったんだ」とびっくり。

フェルメールといえば、まるで動き出しそうな映像のような描写や空間を感じられる、光と陰 をなんとも巧みに表現する作品が多いことで有名ですが、この『秤を持つ女』も絶妙な質感!

ほかにも『The Girl with the Red Hat(赤い帽子の少女)』『A Lady Writing(手紙を書く女性)』も要チェックです。

レンブラントの自画像

レンブラントも 光と陰 を巧妙に表現することを得意としたオランダの画家です。フェルメールの特徴と違うのは「スポットライト」的なライティング効果とでも言うのでしょうか。数々の名作を残した画家でもありますが、レンブラントは特に60枚もの自画像を描いていることでも有名です。

その中でも、注目すべきは、この自画像。なんとも言えない哀愁が漂う顔…。

レンブラントの人生は浮き沈みが激しく、自画像を書き始めた頃や、もてはやされた絶頂期の自画像は生き生きとした表情をしています。

しかし、4人生まれた子供のうち3人は短命で死に、妻も病弱で亡くなってしまう…その上、レンブラントの独特な描写が当時の一般人に理解されなかったことで行き詰まり、ついには破産。

この自画像は、そんな人生が暗転した頃に描かれたものです。大豪邸に住む人気画家から、無一文になり日々の生活が苦しい中でも、絵を描くことへの探究心はあったんだそう…そんな表情とでも言うのでしょうか。

19世紀フランスといえば印象派!有名画家の絵画もいっぱい

印象派の絵画はなぜか日本人にも人気で、馴染み深い作品が多いですね。ナショナル・ギャラリーの西館では、ミレー、ドガ、ルノワール、モネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなどなどの名作を鑑賞することができます。

「動き」を描写するのが得意なエドガー・ドガ

ドガといえば、バレエを始め、踊り子の作品が多く、どれも印象的。とても躍動感、臨場感があります。というのも、ドガは、静止画を描くより、動いている人たちを描写するのが好きだったんだそう。

上写真は『Four Dancers(4人の踊り子)』。この他にも、たくさんのドガ作品があります。

幸せな雰囲気の絵が好きだったルノワール

写真中央の『The Dancer(踊り子)』は、ルノワールの作品の中でも代表作の一つ。また左にある『じょうろを持つ少女』や、右にある『フープを持つ少女』も可愛らしいですね。

日本でも「ルノワール」と言ったら、このような “ホワ〜んフワ〜ん” という、輪郭がふわふわ描かれている、幸せそうな人物画が人気ですが、実は芸術活動の前半と後半とでは、全然、作風が違うんです。

前半は、もっとタッチが強く輪郭もはっきりした肖像画が多いのですが、これは芸術家の駆け出しの頃は貧乏で、絵を売るために肖像画を多く描いて収入を得ていたから。

でも、後半の “ホワ〜ん” としたタッチの、ルノワール独特で、ルノワールらしさを感じられる女性や女の子の作品の方が、今となっては評価されています。

ルノワール曰く「世の中は不愉快なことばかり!芸術くらい愛らしくたっていいじゃないか。女性におっぱいとお尻が無かったら私は絵を描かなかったかもしれないんだ。」とのことです。

自分の耳を切り落としたゴッホ

ゴッホは数多くの自画像を描いており、様々な美術館でその作品を目にすることができますが、ナショナル・ギャラリーに展示されている自画像はまた特別…実はこの時、ゴッホは左耳が無かったんです(鏡を見て描いたので、絵も逆)。

1889年、ゴーギャンと同居生活が始まったものの、2人の作風や描き方は異なり、お互い対立するように。精神的ストレスが溜まったのか、その前から病んでいたのか、ゴッホは自らカミソリで左耳を切断!しかも、その耳を、付き合いのあった娼婦に送ったのだとか。

その後も、幻覚が見えたり、発作的に発狂したり、過度の飲酒で酒乱になる…といった行動に市民から訴えられ、強制的に精神科病院で監禁。その後、サン=レミ というフランス南部の町にある 修道院の療養所 に入所することに。

精神科病院で監禁されていた頃は、もちろん絵を描くことは許されていませんでしたが、この修道院では一室を画室として使うことが許されたため、ここでも多くの作品を残しています。

ナショナル・ギャラリーにあるゴッホのこの自画像は、そのサン=レミ時代に描かれたもの。ここでも自画像をいくつか描いていますが、全て、左耳が見えないような角度になっています。

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この記事を書いたトラベルライター

じっとしているのは耐えられない旅行好き&飲兵衛です
日本在住ですがアメリカで生活したこともあり、その時にすっかりアメリカ大陸の自然に魅了されました。それ以来、帰国しても日本の自然の素晴らしい場所をあちこち旅行するのが好きです。1児の母でもありますので、“子連れで行くとどんな旅になる?!”という視点も織り交ぜていろんな場所をご紹介できればと思っています。
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