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韮山反射炉と一緒に!幕末志士も学んだ伊豆【江川邸】の古建築を訪ねる

取材・写真・文:

トラベルライター

2018年3月8日更新

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静岡県伊豆の国市の「江川邸」は、世界遺産である韮山反射炉を作った代官の江川英龍などの江川氏が中世から代々住んでいた居宅です。「江川家住宅」とも呼ばれ、国の重要文化財に指定されています。江戸時代には役人が勤めていた代官役所があり、幕末にはここで砲術を学ぶ塾も開かれました。この記事では、江戸時代の古い建築様式がよくわかり、戦国時代や鎌倉時代の言い伝えも残る、江川邸を紹介します。

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江川邸に住んでいた人達はどんな人?

江川氏は平安時代から続くともいわれ、戦国時代に北条氏が韮山を支配した時にはこの地で有力な一族となっています。北条氏の滅亡後は徳川家康に仕え、江戸幕府の直轄領地を管轄する韮山代官を世襲し、代々の当主は「太郎左衛門」を名乗っていました。歴代の太郎左衛門の中で一番有名なのは、反射炉を作った英龍(ひでたつ)でしょう。

明治維新の先駆けだった江川英龍と韮山塾

  • 写真:トラベルライター韮山反射炉にある江川坦庵(たんあん・たんなんとも。英龍のこと)の像

とはいえ、英龍も全国的にはあまり知られていないかもしれませんが、実は幕末・明治の著名人から高く評価された人なのです。慶應義塾の創設者である福沢諭吉は、兄などが英龍を近世の英雄と話していたことを自伝で書いていますし、江戸城の無血開城を実現した勝海舟も、英龍はかなりの人物で、海防のために尽力したことを語っています。

実際に英龍は、この江川邸で西洋砲術を学ぶ塾を開いたり、武士だけでなく農民に軍事的訓練をして万が一の時に動員する「農兵」制度を幕府に提言し、地域の人達の一部を農兵として訓練もしていました。この江川邸で、明治維新の先駆けともいえる施策や教育が行われていたのです。

次からは、この江川邸の中でも、ぜひ注目して欲しい見どころをご紹介します。ボランティアガイドのかたもいるので、じっくり見学されるときは、ぜひ案内をお願いしてみましょう。

幕末農兵の訓練所にもなった「枡形」

  • 写真:トラベルライター

江戸時代、代官が外出するときに人を揃えた広場です。ですが、先にも書いたような、地元の住民の一部に農兵としての訓練を行っていた場所が、入り口前に広がるこの「枡形」だったともされています。

ドラマのロケ地にも!「表門」

  • 写真:トラベルライター

券売所を過ぎてすぐにあるのは、元禄9年(1696)に建築されたという表門です。この江川邸はドラマ『JIN−仁−』や大河ドラマ『篤姫』のロケ地として利用されており、特にこの表門と玄関周辺が撮影に使用されるようです。

  • 写真:トラベルライター

邸内の正面玄関から表門を見た所です。大河ドラマを見ているかたには、上の光景に見覚えがありませんか?2018年現在の大河ドラマ『西郷どん』でも登場しています。

表門の正面の玄関は正式な出入り口ですが、身分の高い来客や主人のみが利用していたとのこと。見学の時は、右手へまわって土間から入ります。

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

土間へ行く途中には、北条早雲(伊勢宗瑞)が植えたといわれるキササゲの木や、役人が仕事をしていた役所跡がありますよ。

高い屋根を支える構造は圧巻!主屋の土間

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

主屋は江戸時代初期の建築といわれ、その後に修繕を何度か繰り返して現在まで残ってきました。50坪もの広さの土間は、天井板が貼られていないので、高い屋根の裏がよく見えますよ。組まれた柱や梁の組まれている様子が壮観です。

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

この屋根裏の高い所に、「棟札箱」があります。日蓮聖人の曼荼羅が納められており、その霊験で、この江川邸は火災にあったことがないと伝えられています。また、江川氏がこの地へ移り住んだときに、そこに映えているけやきの木をそのまま利用したとされる「生き柱」も。家の歴史を物語る柱として大切にされてきたそうです。

  • 写真:トラベルライター

広い土間にはいろんな道具が置かれています。軍の保存食とするために日本で初めてパンを焼いたとされる江川英龍の家だけに、パン焼き釜を作っていたという石の一部もあるんですよ。

主屋にあがることもできますが、今回は先に靴をはいたまま見られる庭の方を見ていきましょう。

  • 写真:トラベルライター

土間の横から外へ出ると、いくつも蔵が並んでいます。手前の西倉は、幕末頃に建てられた蔵で、壁が少し内側へ傾いた「四方転び」という技法で作られています。垂直よりも安定する建築法で、お寺の鐘楼にもよく使われているようですが、似た例として、椅子で下の脚が開いているものを思い浮かべるとわかるかもしれません。

  • 写真:トラベルライター

この西蔵の庇の屋根は瓦ではなく、伊豆の石で作られているそうです。

  • 写真:トラベルライター

西蔵の内部は公開されていませんが、他の2つの蔵は明治時代と大正時代に作られた蔵で、中が展示室になっています。

戦国時代の傷跡!?富士山も見事な裏門

  • 写真:トラベルライター

裏門からは見事な富士山が!この景色には、伊豆へ視察に来た江戸幕府の老中・松平定信も感動し、絵師として一緒に来ていた谷文晁に描かせたとも伝えられています。

  • 写真:トラベルライター

門は文政6年(1823)に建てられましたが、扉はもっと古いといわれています。扉に残っているたくさんの傷は、戦国時代の天正18年(1590)に豊臣秀吉が小田原北条氏を攻めに来る途中、韮山が攻められた時に、鉄砲や矢で攻撃された跡と伝えられているそうです。

外を見終わって、主屋にあがります。中には韮山反射炉や江川家などの展示があります。

幕末の志士や明治を作った人々が学んだ塾

  • 写真:トラベルライター

英龍はこの邸内で西洋砲術を学ぶ塾を開き、英龍没後に後をついだ英敏(ひでとし)の時には、江戸で砲術の習練所が開かれました。邸内の奥には塾として使っていた部屋が残されており、中では塾生名簿などの資料を見ることができます。韮山塾では佐久間象山、江戸の習練所では黒田清隆や大山巌など、幕末の志士や明治政府で活躍した人物も学んでいたんですよ。

反射炉とセットで見たい江川邸

  • 写真:トラベルライター展示されている19世紀後半アメリカ製のボートホーウィッスル(ボートホイッスル)砲車。(砲身と弾はレプリカ)。ペリーから幕府に贈られたものと推定されています。

江川邸は、韮山反射炉から車で10分ほどの場所にあります。古い建築工法で建てられた屋敷に、長く地域で慕われ幕末に活躍した韮山代官江川氏の歴史など、反射炉と一緒に見学すればより充実した旅になるはずです。ぜひ訪ねてみてください!

関連記事:世界遺産の伊豆【韮山反射炉】で幕末の最先端技術と歴史を学ぶ

江川邸
三島・沼津・伊豆長岡 / 建造物 / 歴史的建造物
住所:静岡県伊豆の国市韮山韮山1番地地図で見る
電話:055-940-2200
Web:http://www.egawatei.com/

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