「エメラルドの島」と言われるアイルランドは年間を通じて緑が美しい国です。山や川の近くに、湖や公園に、人目を惹きつける個性的な木が多くあります。今回はアイルランド島にある「気になる木」を厳選して3箇所ご紹介します。あなたもぜひお気に入りの「気になる木」を見つけてみてください。
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1. アイルランド初期キリスト教が伝わる湖畔の''The Sitting Tree''
首都ダブリンの隣・ウィックロー州の森深くにある遺産、グレンダロッホ(Glendalough)の上流の湖・アッパーレイクの岸にThe Sitting Tree(直訳:腰かけの木)と呼ばれる「気になる木」はあります。
グレンダロッホはアイルランドにキリスト教が持ち込まれた後、「7つの教会のある街」として栄え、各地から修行僧たちが修行に集まる場となりました。6世紀の初期キリスト教会跡やケルト十字のある古いお墓といった史跡めぐりが人気の観光スポットです。森の中にはその他に大小の湖があり、湖を囲んでいくつものハイキングコースがあります。
修行僧の様子を見つめてきた腰かけの木の起源や歴史についてはあまり多くを語られていません。長くて太い、まるで腕のような木が見る者を抱擁し、心を安らげてくれる癒す力のある木です。
2. ベンチを食べた''The Hungry Tree''
アイルランドの首都・ダブリン市の目抜き通りO’Connell(オ・コンネル)通りから徒歩で約10分のところにKing’s Innというアイルランド最古(創立1541年)の法科学院があります。その庭にひっそりと立っているのがThe Hungry Tree(直訳:空腹の木)と呼ばれる木です。この木はまるでベンチを「食べて」いるかのような様相を呈しています。
「空腹の木」は、鈴懸の木科のモミジバスズカケノキで、高さ21m、幅3.5m。19世紀に植えられました。その後、歳月をかけて木の前にあったベンチを飲みこんでいったのです。アイルランド土木協会によって「アイルランドの遺産木の一つ」として称号を与えられています。未来の弁護士たちを見守った貪欲なベンチからbenchers(法廷弁護士の意)というアイルランド英語のスラングも生まれました。
King’s Inn出身の弁護士たちの間では、木が「消化」を行なう夜には木に近寄るべきではないという冗談?もあります。
3. 吸い込まれそうな並木道''The Dark Hedges''
数十本ものブナの大木が連なるThe Dark Hedges(直訳:暗い垣根)は北アイルランド(イギリス)の中部・アントリム州にあり、18世紀にステュアート家によって植えられました。彼らの邸宅Gracehill Houseへの正面玄関までの道に植えたもので、邸宅を訪れる来客を喜ばせるために整備されました。
木の生育環境が大変よく、植樹から3世紀を経た現在でも、世界各国からの人々を惹きつける北アイルランド屈指の写真スポットとなっています。
並木道は車1台が通れるほどの幅で、全長約600mに94本の樹齢300-350年(一般的な寿命は150-200年と言われる)の木々が並び、真下を歩くと圧倒的な迫力です。
アメリカのテレビドラマシリーズ『Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)』のシーズン2のエピソード1にて、King’s Road(王の道)の名で登場した場所であります。近年ではGame of Thronesの ロケ地巡りのツアーが北アイルランド観光局を中心に多く企画されています。The Dark Hedgesはツアーのハイライトとなっています。
アイルランド各地にある「アイルランドの遺産木」は全部で約800本
アイルランドには、土木協会が様々な理由で認定する「アイルランドの遺産木」が800本近くあり、ユニークな木が多くあります。
強風のため風下方面へ斜めに歪んだ木、妖精が宿ると信じられている木、絡み合った根が地上に突出している木…お気に入りの一本の木を見つけるのも旅の途中の楽しみとなることでしょう。