奈良県御所市には、日本神話に登場する神様が住んでいるとされた「高天原」があります。金剛山麓の台地上には、パワースポットとして知られる高天彦神社、静かな古刹「橋本院」もあります。のどかな景色に癒され、元気もいただける高天原を散策してみませんか。
この記事の目次表示
高天原とは
高天原(たかまがはら)とは、日本最古の書物『古事記』によると、天照大神(あまてらすおおみかみ)が統治した場所で、その孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)は、高天原から日向(現在の宮崎県)の高千穂に降臨したとされています。
奈良県御所市の金剛山麓に開けた台地「高天(たかま)」は、かつてこの高天原が実在したとされる場所で、日本神話に登場する神様をお祀りする高天彦神社(たかまひこじんじゃ)や、行基が創建したと伝わる橋本院といった社寺が建っています。
神聖な雰囲気が漂い、パワースポットしても知られる高天原ですが、一方で美しい棚田や、奈良盆地を見下ろす爽快な景色、あじさいをはじめとする季節の花々も楽しめる癒しのスポットでもあり、散策を楽しむ人の姿が見られます。
高天彦神社にお参りしよう
近年、パワースポットとして人気が高まっている高天彦神社に参拝しましょう。奈良県道30号(通称 山麓線)から、「高天」と案内が出ている急な坂道を西に入り、約1キロほど進むと駐車場があります。
公共交通機関でお越しの方は、近鉄御所線「近鉄御所駅」から出ている御所市コミュニティバスに乗車してください。「高天口」バス停で下車し、徒歩約20分です。
駐車場から高天彦神社へは、歩いてすぐです。杉木立のある参道の先に社殿が見えています。樹齢はおそらく数百年と思える杉の大木が参道を囲んでおり、神秘的な雰囲気が漂います。なお正式な参道の入口は、山麓線から300メートルほど入った左手にあります。
鳥居の左手に手水があるので、まずお清めをしてお参りしましょう。透き通った水がこんこんと注いでおり、暑い季節に手をつけると、とても気持ちが良いものです。
社殿に入りましょう。高天彦神社は、日本神話に登場する神「高皇産霊神(たかみむすびのかみ)」を主祭神として祀る神社です。ご神体は背後にある標高694メートルの白雲峰という山であるので、本殿はありません。
こじんまりとした神社ですが独特の緊張感に包まれており、いかにもパワーがいただけそうです。神社には、ほかにも、福岡県の宗像神社に祀られている女神の一人「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」と藤原道真もお祀りされています。
こちらの境内や参道の周辺には、初夏に美しいあじさいが咲きます。この時期は、標高が高いこちらでも蒸し暑さが感じられるのですが、水色や薄紫といったあじさいは涼しげで、暑さも忘れてしまいそうです。
また、鳥居の前から左にのびている金剛山への登山道を少し歩いたところには、水車があります。高天水車と呼ばれており、谷の水でゆっくりと回る様子を見ることができます。
- 高天彦神社
- 奈良 / 神社
- 住所:奈良県御所市北窪158地図で見る
- 電話:0745-62-3346
- Web:https://www.city.gose.nara.jp/kankou/0000001390.ht...
高天原伝承地から橋本院へ歩こう
高天彦神社にお参りしたら、高天原が存在したとされる伝承地を通り、古刹「高天寺橋本院」まで行ってみましょう。車でも行けますが、景色を楽しみながら歩いて行くのも良いでしょう。
のどかな景色が広がる高天原伝承地
橋本院へは、山麓のわずかな平地に田畑が広がり民家が点在する、非常にのどかな景色を眺めながら歩きます。聞こえてくるのは、小鳥のさえずりやカエルの鳴き声といった自然の音だけです。
しばらく歩くと、視界が開けてきます。眼下には、奈良盆地が、そして奥には御所市や吉野方面の山並みが望めます。棚田の先に、広い空と山々が広がる様子は、まさに神々が住んでいた天空の地といった雰囲気です。
田んぼの真ん中を通る道を、突当りまで行けば駐車場があります。このあたりが、高天原が実在したと伝わる場所です。石碑や案内板があるだけで、何も無いと思われるかもしれません。しかし、昔から何も変わらない棚田と背後にそびえる山があるだけの景色こそが、魅力なのかもしれませんね。
静かな雰囲気の古刹「橋本院」
駐車場の前を右に折れ、少し下りると、高天寺橋本院の山門が見えてきます。こちらは高野山真言宗の寺院で、養老年間に第44代元正(げんしょう)天皇の勅命により、僧の行基が開いたとされるものです。
格式も高く広い境内を持っていた高天寺ですが、南北朝時代に焼き討ちにあって衰退したため、現在はそのうちの一院「橋本院」だけが残る静かなお寺となっています。
こちらは橋本院の本堂にあたる観音堂です。ご本尊の十一面観音像のほか、大威徳明王、涅槃図(ねはんず)を納めています。ご本尊は毎月21日に開帳されるそうです。境内には、ほかにも山門の左側に大師堂、奥には庫裏(寺務所)があります。大師堂には弘法大師像が納められているそうです。
四季折々の花が楽しめる「瞑想の庭」
橋本院境内の「瞑想の庭」では、春の桜、水芭蕉、初夏のアジサイ、蓮、秋の彼岸花、冬のツバキなど、四季折々の花が楽しめます。そのなかでも、桜やアジサイは人気が高いようです。
筆者が訪れた6月上旬には、アジサイが咲き始めていました。咲いているのは一部で、本格的な見頃は、6月下旬頃からになるようです。
また、庫裏の前にある庭園にもお邪魔しましたが、スイレンが美しく咲いていました。鉢や池に浮かぶ鮮やかな赤や薄い黄色の花を見ると、心が落ち着くものです。
- 橋本院
- 奈良 / 寺 / あじさい名所
- 住所:奈良県御所市高天350地図で見る
- 電話:0745-66-2141
- Web:https://www.city.gose.nara.jp/kankou/0000001389.ht...
高鴨神社に立ち寄ろう
お時間があれば、高天原から少し下った場所にある、高鴨神社(たかがもじんじゃ)にも参拝してみてはいかがでしょうか。こちらは、古代の氏族「鴨氏」の守護神で、全国の加茂社の総本宮でもある神社です。弥生中期より祭祀が行われていたとされる国内最古級の神社で、パワースポットとしても人気が高いです。
鳥居をくぐって、左右に池を見ながら参道を進むと、石段の上に拝殿が見えています。この拝殿の裏側に本殿があり、主祭神の阿遅志貴日子根命(あぢしきたかひこねのみこと)を祀っていますが、こちらは死んだ神さえもよみがえらせるお力のある神様とされるため、よみがえりに関する信仰を集めているそうです。
手入れされた境内を散策するのは心地よく、池の周囲に広がる緑も美しいです。時折太陽の日差しが降り注ぎ、神聖な場所でありながら、元気をいただけそうな雰囲気も漂っています。さきほど紹介した高天彦神社の御朱印も、こちらでいただけるそうですので、是非立ち寄ってみてください。
- 高鴨神社
- 奈良 / 神社
- 住所:奈良県御所市鴨神1110地図で見る
- 電話:0745-66-0609
- Web:http://www5.kcn.ne.jp/~takakamo/
おわりに
御所市高天周辺の散策はいかがでしたか?神話に登場する神様が祀られた神社にお参りし、日本の原風景ともいうべき景観を眺めれば、また明日から頑張ろうという気持ちが湧いてくるかもしれませんね。