食べ物で「危ない」と思ったのは、これが初めてだったー。福岡県北九州市の銘菓「くろがね堅パン」は、鉄のように硬いお菓子として有名です。その強度たるや、商品に「たいへん堅い商品ですので、歯の弱い方はご注意ください」と警告されているほど。こんな注意書き、普通の食べ物では見たことがありません!今回は、くろがね堅パンの歴史と硬さの秘密を探りながら、プレーン味、ほうれん草味、ココア味の食べ比べ結果もご紹介します。
この記事の目次表示
くろがね堅パンは、なぜ作られたの?
大正末期の官営八幡製鐵所で生まれた、くろがね堅パン。当時の日本では、鉄鋼産業を中心とする重工業が発展しはじめ、近代化が加速していました。そして1914年の第一次世界大戦開始とともにヨーロッパ向けの軍需も増え、製鉄ブームが訪れます。
昼夜を問わず稼働し続ける工場を支えるため、従業員は長時間の肉体労働をしなくてはなりません。そのため、従業員の疲弊が激しく、一般のパンでは栄養が足りなかったのだそう。そこで栄養補助のために作られたのが「くろがね堅パン」。
官営八幡製鐵所が北九州市八幡東区に精米工場を建設した際、精米の過程ででる胚芽を試験的に焼いたのが、始まりといわれています。従業員たちは、このくろがね堅パンを作業着の胸ポケットに差し、作業の合間にかじっていたのだそうです。このように、発祥の地が製鉄所であることから、堅パンには「鉄」を意味する「くろがね」という言葉がついているんですね。
なぜ歯が折れるほど硬いの?どんな作り方?
くろがね堅パンのキャッチコピーといえば、「健康はアゴから」。北九州では子供の頃から、アゴの発育や歯固めのために食べるのだとか。しかし、なぜくろがね堅パンはこれほど堅いのでしょうか?
元々、八幡製鉄所の従業員が栄養を補給するために作られた「くろがね堅パン」。大量に作って、長期間保存できるようにと水分を極力減らす努力がされました。その一環で、生地を伸ばし固める際に、製鐵の際に行われる熱間圧延(ローラーの間を通過させ、金属を板状に伸ばす)を参考にした加圧工法が用いられたのです。これにより、鉄のように「薄くて軽くて硬い」くろがね堅パンが出来上がったのですね。
気になる味は?
割った欠片を奥歯で噛みくだくと、じんわりと優しい甘さが広がります。あったかくて優しい、田舎のおっかさんを思い出すような味です。歯が弱い方は、コーヒー、紅茶、牛乳等に浸すとやわらかく食べられますよ。
シンプルな見た目とたまごボーロのような素朴な甘みに、ハマること間違いなし。噛めば噛むほど、甘さが増します。また、今回はプレーンだけでなく、ココア味とほうれん草味も食べてみました。どちらも、嗅ぐとふんわりとココアやほうれん草の香りが漂います。噛めば噛むほど、味が濃くなりました。
特に、ほうれん草は3種類のなかで最も風味豊か。まるでほうれん草そのものを食べているような、ヘルシーさです。野菜味のお菓子はどうしても青臭くなりがちですが、臭みはなくほんのり抹茶味が香ります。温かい緑茶と合うので、ぜひお茶請けにどうぞ。心も体もホッとしますね。
ココア味は、カカオの香りがたまりません。苦味はなく、そっと包み込むような甘さです。牛乳に浸して食べると、ココア味が牛乳と混ざってマイルドな味わいになりました。プレーン味とほうれん草味がさっぱり目なのに対し、こちらは味が濃厚。子供たちが喜びそうです。
非常食やダイエット食品としても注目!
くろがね堅パンは、ビタミンB1・B2・Eや鉄分などミネラル類を含んだ胚芽がたっぷり入っています。栄養価が高く、賞味期限が2年と長期であることから非常食・保存食としてメディアで取り上げられています。
ダイエット中つい間食してしまいがちな方にも、オススメです。くろがね堅パンなら、1枚当たり約107~9kcal(カロリー)と低カロリー。しっかり噛むと、少量でも満腹感が得られますよね。ダイエッターの方は是非お試しあれ。