オーストラリアでは19世紀半ば、金の発見を契機にゴールドラッシュが始まりました。今回はゴールドラッシュの面影を残す街「チャーターズ・タワーズ」と「クロイドン」をご紹介します。一攫千金を求めて人々に溢れかえった事実が夢のように感じられる風景にも注目です。鉄道ファンにおすすめの情報もありますよ。
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ゴールドラッシュの面影を残す街①「チャーターズ・タワーズ」
アメリカのゴールドラッシュにつづき、1850年ごろからオーストラリア各地で金が発見され、金鉱に多くの人が押し寄せました。もともと街があった場所に金が発見された場合、そこに人々が集まり、急速に発展し、繁栄を続けます。ビクトリア州のバララットなどが有名ですが、クイーンズランド州にあるこちらの「チャーターズ・タワーズ」もそのひとつです。
現在は人口8,000人あまりの田舎町ですが、1890年ごろには3万人以上の人が住む、クイーンズランド州で2つ目に大きな町でした。
これらの建物は全て1890年代に建てられ、歴史的建築物として保存されています。上の写真は1872年から増改築を繰り返し、現在も郵便局として利用されている建物です。
上の写真「ストック・エクスチェンジ・アーケード(Stock Exchange Arcade)」は、オーストラリアの都市以外では唯一の証券取引所として26年間取引が行われていました。
こちらは「オーストラリア商業銀行(Australian Bank of Commerce)」。この建物は現在パフォーミングアートセンター「ザ・ワールドシアター(The World Theater)として使われています。
- チャーターズ・タワーズ 郵便局
- オーストラリア / 郵便局
- 住所:17 Gill Street Charters Towers QLD 4820 Australia地図で見る
- ストック・エクスチェンジ・アーケード
- オーストラリア / 建造物
- 住所:76 Mosman Street Lissner QLD 4820 Australia地図で見る
- 電話:07 3223 6666
- ザ・ワールドシアター
- オーストラリア / 建造物 / 映画館
- 住所:82-90 Mosman Street Lissner QLD 4820 Australia地図で見る
- 電話:07 4761 5430
- Web:http://worldtheatrect.blogspot.com
- チャーターズ・タワーズ
- オーストラリア / 町・ストリート
- 住所:Charters Towers QLD Australia地図で見る
ゴールドラッシュの面影を残す街②「クロイドン」
広大なオーストラリア。金が発見されるのは街の近くとは限りません。1885年、ブリスベンから内陸部へ2,000kmの僻地にあるクロイドンでも金が発見されました。
2,000kmというと、九州の博多から北海道の札幌あたりのまでの距離。こういったところは英語で「in the middle of nowhere(どこでもないところの真ん中)」と言われます。
- 写真:Booboo56デームスルックアウト(Diehm's Lookout)から見た町の様子。眺めを楽しむことができる場所をルックアウトと呼びます。
- 写真:Booboo56これがベルモア湖(Lake Belmore)。ダムとしてでなく、市民の憩いの場としても親しまれています。
クロイドンには雨季と乾季があり、乾季には一面の枯れ草と、ひび割れた土地が広がっていたそう。しかし1995年にダムができ、一年中緑に囲まれる町になりました。
現在のクロイドンに残る当時の形跡
- 出典:commons.wikimedia.orgItem is held by John Oxley Library, State Library of Queensland.
上記の写真は、当時の街の中心部の様子です。金の発見とともに人々が世界中から集まり、1890年には人口が1万人に達しました。イギリスからの移民が大部分でしたが、中国、マレーシア、スリランカ、記録には日本人やアフリカ人の名前もあったそうです。左端にタウンホールがあります。
左上の写真は現在のタウンホールで、そのお隣の警察署跡には酔っ払って騒ぎを起こした人を入れる牢屋も残っています。
タウンホールではさまざまな催しが行われましたが、映画もその一つ。その時使われていた映写機は、現在も使われることがあるそうです。
こちらは、人が集まるところには欠かせないパブ。1887年に36軒あったそうですが、今残るのはこの「クラブホテル」のみとなっています。
クロイドンには当時の様子を再現した建物もあり、こちらは一般的な家とお肉屋さんを再現したもの。人々の生活は決して楽ではなかったようです。
- タウンホール(クロイドン)
- オーストラリア / 建造物
- 住所:Croydon Shire Hall, Samwell street, Croydon QLD 4871地図で見る
- 警察跡(クロイドン)
- オーストラリア / 遺跡・史跡
- 住所:Former Police Station and Residence, Sawell street, Croydon QLD 4871地図で見る
- クラブホテル(クロイドン)
- オーストラリア / パブ
- 住所:保存 シェアする CNR Brown & Sircom Street, クロイドンクイーンズランド州 オーストラリア地図で見る
ガルフランダー(The Gulflander)
人口300人前後のクロイドンですが、それをはるかに上回る数の観光客が町を訪れます。その目的の一つが、このガルフランダー。「ガルフランダー」は乾季のみ、クロイドン~ノーマントン間152kmを週2往復する観光列車です。
ノーマントンには大きな川が流れており、内陸部と海を繋ぐ重要な河口港がありました。この鉄道は、クロイドンで産出された金をその港から運び出すためだけに作られたので、他の鉄道のどの路線にもどこにも繋がっていないユニークな路線です。
ノーマントン~クロイドン間の所要時間は片道5時間と長いのですが、水曜日にはクロイドン側から最初の途中駅にあたるゴールデンゲート間を往復するサンセットツアーがあります。このゴールデンゲートは、1886年に金鉱が発見されるも交通手段がなく手付かずだったのが、1891年に鉄道の駅ができると瞬く間に人口500人を超える街に発展したのだそうです。
列車はクロイドン駅から約10kmを30分ほどのんびり走り、ゴールデンゲートに到着します。列車を降り、そこで夕食。そして、日も沈み始めるころ列車に戻り、サンセットを楽しみながら帰路につきます。2時間ほどのツアーで、筆者が参加した際ツアー料金はAUD49.00 (約4,000円)でした。
- ガルフランダー クロイドン駅
- オーストラリア / 駅
- 住所:Helen Street, Croydon地図で見る
- Web:http://www.gulflander.com.au
この記事を書いたトラベルライターから一言
- 出典:commons.wikimedia.orgゴールデンゲートで取れた金の延べ棒 Item is held by John Oxley Library, State Library of Queensland.
「ガルフランダー」のツアーに参加した筆者ですが、クラッシックな列車でサンセットを楽しめました。夕食をとったゴールデンゲートは荒野のど真ん中で、金鉱で賑わったことが嘘のような景色ですが、沿線にはその当時使われていた大型機械の残骸や、カンガルーなどの野生動物を見ることができます。
また気さくなスタッフがサーブしてくれる夕食や、列車の速度を落として、シャッターチャンスをつくってくれる運転士と車掌の掛け合いも楽しく、鉄道ファンでない筆者も満足できました。クロイドンを訪れる際にはオススメのアクティビティです。(Booboo56)