写真:Olive巨大な松明が町を練り歩き山頂にむっくりと立ち上がる。点火までの手に汗握る時間。暗闇に浮かび上がる松明は鎮魂の思いを込め、数十本もの巨大火柱となり夜空を焦がす。430年もの歴史を誇る伝統行事の様子と楽しみ方をご紹介します。
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須賀川松明あかしの歴史
福島県須賀川市で、例年秋に開催される「松明(たいまつ)あかし」の歴史は古く、戦国時代にまでさかのぼります。1589年(天正17年)6月、仙台藩藩主であった伊達政宗は、須賀川を支配しようと策をめぐらせていました。
先の城主・二階堂盛義亡き後、この地を治めていたのは盛義の後室だった大乗院でした。政宗は大乗院が叔母であったため、二階堂家の家臣を通じて和睦を求めていましたが、大乗院は戦うことを決意し、合戦へと進んでいきました。戦いは、二階堂勢が伊達勢に打撃を与える時もありましたが、内通者の裏切りにより大敗し落城。ほとんどの兵が戦死してしまいます。
江戸時代、須賀川市では旧暦の10月10日に「刈り上げ」と呼ばれる秋の収穫祭が行われていましたが、その際に弔いの意味を込め「炬火(きょか:かがり火)」を投げ合う行事が行われました。それが歴史と共に変化しながら現在の形となり、戦死者を弔う鎮魂の想いと行事を守り伝えてきた人々への感謝の気持ちを込めて行われています。諸説ありますが、日本三大火祭りにも名前が挙がっています。
須賀川松明あかしの概要
開催時間:18時30分点火予定
開催場所:松明点火は翠ヶ丘公園内の五老山山頂
松明への点火は夕方になりますが、当日の11時ごろから市内では様々なおもてなしイベントが開催されます。市内の中学生が大きな松明を交代で抱えながら市内を練り歩く様子や、当日一般参加で作成した小松明をもっての行列、最大で長さ10m、重さおよそ3tもの松明を山頂に立ち上げる作業など、点火前にも見どころがあります。ぜひ早い時間に町を訪れ、須賀川の街の観光も楽しみながら松明あかしを堪能していただきたいと思います。
須賀川市内の主要スポットも合わせて楽しもう
須賀川市への到着時間によって違ってきますが、点火はもちろん、行列やイベント開催時間まで余裕がある場合は、市内のスポットをめぐってみましょう。
須賀川の町並み散歩
駅から市役所方面へ向かう松明通りには、ウルトラヒーローや怪獣のモニュメントがお出迎えしてくれるので、楽しい町歩きになるはずです。また通りの街路灯にはヒーローや怪獣のシルエットが描かれています。
須賀川市役所
須賀川市役所には週末でも無料の展望台がありますので、まずは市内を見渡しましょう。松明あかし会場は、あいにくホテルの陰になっていて見えませんが、ちらりと松明を確認できますし、松明通りを見渡す事ができます。

- 須賀川市役所
- 福島 / その他スポット / 展望台 / 展望・景観
- 住所:福島県須賀川市八幡町135地図で見る
- 電話:0248-75-1111
- Web:https://www.city.sukagawa.fukushima.jp/kanko_sukag...
二階堂神社
須賀川城址であり、須賀川城主・二階堂氏を祀る二階堂神社をお参りしましょう。ここは、五老山へ運ばれる松明あかしの御神火が採火される神社でもあります。

- 須賀川城址(二階堂神社)
- 福島
- 住所:福島県須賀川市宮先町78地図で見る
円谷英二ミュージアム
須賀川市民交流センターtette内には、特撮の神様と称された円谷英二監督に関するミュージアムがあります。館内にもウルトラマンシリーズに登場するキャラクターが展示されていますし、ミュージアムも特撮シーンのジオラマなど見ごたえがあります。

- 須賀川市民交流センターtette
- 福島 / その他スポット
- 住所:福島県須賀川市中町4-1地図で見る
- 電話:0248-73-4407
- Web:https://s-tette.jp/

- 円谷英二ミュージアム
- 福島 / 博物館 / 子供が喜ぶ
- 住所:福島県須賀川市中町4-1地図で見る
- 電話:0248-88-9183
- Web:https://s-tette.jp/museum/index.html
おもてなしイベントを楽しむ
当日11時から、翠ケ丘公園の芝生広場にて飲食コーナーが設置されています。キッチンカーの出店もありますし、日中は公園内や五郎山へのアクセスも自由なので、点火前の松明あかしが並んでいる様子を間近に見ることができます。
13時からは、松明通りにておもてなしイベントが開催されます。須賀川市民交流センターtette(テッテ)前では、ここで制作した松明をもって行列に参加することができる小松明制作コーナーもあります。タオルをワイヤーで包み竹にくくりつける作業なので、5分から10分ほどで完成です。
他には、甲冑武者との記念撮影、松明スープと名付けられたコンソメスープや野菜たっぷりの戦国鍋の無料提供(なくなり次第終了)、市民による空手演武披露などがあります。
何度も味わう感動の波
中学生の松明行列
午後になるといよいよ松明の登場です。これは市内の中学生が骨組みの材料となる竹や中に詰める萱(かや)の刈り出しから組み立て、ゴザの巻き上げなど半年かけて作成したもの。巨大な松明を、力を合わせて人力で運ぶ姿は感慨深く見守ってしまいます。
小さな手に灯る小松明
17時を過ぎると団体小松明行列、続いて一般参加の小松明行列が練り歩きます。陽が落ちて暗闇に包まれる中、神妙な面持ちで小さな松明を手に坂を登る面々が続きます。
この松明あかしは、地域の結束や伝統文化の継承の雰囲気も濃いようで、地元の企業や中学校、町内会をあげて参加されています。この時間帯になると、観客も増え五老山への入山もすでに規制されていました。
男衆による松明の立ち上げ
五老山に到着した高さ10m、重さ3tもの松明を、1時間近くかけて、すべて人力で少しずつ立ち上げていく様は手に汗握る迫力で、見ている観客ともども、いつしか一体感に包まれてゆくのです。今の時代であればクレーンを使い、あっという間に立ち上げられるものを、敢えて人力にこだわり、呼吸を合わせ、命の危険と隣り合わせの行事に取り組む様子は一つのドラマを見ているようで胸が熱くなります。
それは「松明あかしを見るなら、立ち上げるところから見てほしい。感動するよ。」と、事前にアドバイスを下さったスタッフの誇らしげな表情にも表れていたように思います。残念ながら2025年の立ち上げは人員不足により休止となりました。
空をも焦がす松明あかし
18時を過ぎると五老山の麓で松明太鼓の演奏も始まり、松明点火に向けて雰囲気が一気に盛り上がってまいります。18時半を過ぎると二階堂神社から奉受された御神火(ごじんか)が、順次松明に点火されてゆきます。
一番初めは、先ほどまで立ち上げを見守っていた大松明に地元有志が梯子も使わず、手と足を使って自力で登り点火します。固唾を呑んで見守っていた観客から、大きな歓声と拍手が送られます。
2024年の松明は総数21本、無数の巨大松明が、次々と炎に包まれてゆく迫力は、実際に見た者しか味わえない感動です。じわじわと燃える松明は、夜空を赤々と染め、遠くから見ればおそらく山が燃えているように見えることでしょう。
松明あかしを楽しむ際のアドバイス
服装について
年々、秋が短くなり暖かい日も多くなっている昨今、晩秋の須賀川市も同じと考えて良いのですが、朝晩は気温差があります。2024年の開催日は、日中は14℃で、ブラウスやシャツにセーター程度で過ごせましたが、夕方16時すぎるとぐっと冷え込み、夜間には10℃を下回り厚手のジャケットにマフラーや手袋も重宝しました。
松明に点火されると歩き出しますし、炎や人並みの熱気もあるので寒さは感じなくなりますが、点火されるまでの数時間の待ち時間は寒さが堪えました。また風の強弱によっては、火の粉が飛んでくることも考えられるので、防炎対策の服装ができれば万全ですね。靴は、山と言っても公園内の整備されている丘なので、履きなれた靴で問題ないと思います。ただ、坂道や階段があり、松明の消火用に消火ホースも運び込まれているため、夜道で濡れている場所もあります。また大変な混雑で、足を踏まれることも多々ありますので、それらを考慮した履物がおすすめです。
飲食について
松明が運び入れられ、夕方になると山の麓も長蛇の列となり入山規制も始まります。飲食できるような状態ではないので、飲食は事前に済ませておくか、終了してからになります。飲食スポットは、五老山の麓にある芝生広場でキッチンカーなどのフードコートが設営されていますし、町中ならカフェや蕎麦店などもありますが軒数としては少なめです。夜店も出店されていて大変盛り上がりますが、終盤になると長蛇の列になるので早めの購入がカギですね。
トイレについて
町中でのトイレスポットは、市役所や市民交流センター、飲食店、イベント広場などを利用できますが、松明あかし会場の五老山周辺にも2,3か所設置されていました。ただし、夕方を過ぎると大変な混雑な上に一方通行規制もあり、一度列から抜け出すと元の場所に戻るのは困難な状態なので、お気を付けください。
松明あかしの見学
五老山内に入山すると座る場所はなく、立って点火を待つようになります。五老山内は安全確保のため、一方通行となっています。点火後の形態としては、混雑を緩和するためウォークスルー方式が取り入れられ、三脚の使用も禁止です。17時を過ぎるころには、入山規制や周辺道路も閉鎖され、人の波で思うように歩けない状況なので、お子様連れの場合は決して手を離さないようお気を付けください。
須賀川市へのアクセス
◎飛行機の場合
札幌 ― 福島空港:約1時間20分
大阪 ― 福島空港:約1時間10分
◎車の場合
東北自動車道 須賀川ICより約10分
◎列車の場合
JR須賀川駅より徒歩で約20分
※例年、須賀川駅より有料(230円)のシャトルバスが運行します。
駐車場について
五老山周辺および市内の松明通り周辺は車両通行止めになります。牡丹園や阿武隈小学校、市民スポーツ広場など6カ所が指定駐車場(無料)となり、収容台数は約1,700台ほど用意されます。着火後の松明あかしだけを見るなら、福島病院の駐車場が徒歩5分と一番近くです。牡丹園からも有料のシャトルバスが運行されています。
町歩きを含め五老山からも徒歩15分の須賀川市役所は、午後1時から10時までが無料となりました(2024年時)。開催日間近になると駐車場や通行止めの範囲などが詳しく公開になるので、市の公式サイトをご覧ください。
さいごに
オール電化などによって火を目にすることが少なくなってきている昨今、巨大な炎のかたまりを間近に見る機会は数少なくなってきています。巨大な松明と暗闇に舞う火の粉、照らし出される群衆のシルエット、もくもくと膨れあがる煙と熱を帯びた空気、ぼうぼうと唸る音と油の匂い。その場に立ってこそわかるスケールの大きさと迫力を、ぜひ須賀川で体感してみませんか?
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- 須賀川松明あかし
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- 住所:福島県須賀川市愛宕山5地図で見る
- Web:https://www.city.sukagawa.fukushima.jp/kanko_sukag...






















































