その折り紙つきの特選黒毛和牛は松坂牛、飛騨牛、米沢牛の雌牛のみ。A5ランク肉の美しさに見とれ、ロースターのsizzleにうっとりし、豊かな薫りに惑わされる。そしてとろける食感に魅了され、噛むほどに豊穣な味覚に言葉はもう追い付けない。プロローグの「ビーフジャーキー」から、〆の飯のエンドロールまで。それはもう野心的で圧倒的な焼肉劇場。郡山に行ったら外せない、「もうもう亭」をご賞味あれ。
この記事の目次表示
焼肉観が変わる
筆者が初めて、「もうもう亭」を訪れたのが19年前のこと。仕事先で誘われた食事会が「もうもう亭」という焼き肉店と聞いて、たいした期待を抱きませんでした。ご馳走になるにも関わらず、その店名から、「どうせ、しょぼい店でしょ?」と感じたからです。
ところがどうでしょう。その懸念は見事に裏切られました。「もうもう亭」の暖簾をくぐったその瞬間から、焼肉観が覆えされる体験が待っています。それが「もうもう亭」です。
特選黒毛和牛と無科調のタレ
黒毛和牛専門店の「もうもう亭」は福島県郡山市にある焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶのお店です。同店のホームページなどによると、扱う肉は松坂牛、飛騨牛、米沢牛の特選黒毛和牛をメインに、肉質の良いとされる雌牛のみ。
しかも独自の手法で程良く熟成させた肉は、客からの注文を受けてから、職人が手切りで提供するとのこと。しかも、「タレ」は、化学調味料を使わないオリジナルのもの。お店のこだわりが垣間見えます。
和のインテリアでリラックス
白地の壁に「もうもう亭」の文字。格子壁の外観は落ち着いています。
店内に入ると、重厚な1枚板のカウンターと小上がり。奥には宴会用の部屋もあり、ひとり客から団体客まで利用可能です。清潔な和のインテリアは落ち着く雰囲気になっています。
コースで様々な部位を楽しむ
好きなお肉を好きなだけ注文する手もありますが、せっかくの特選黒毛和牛。ここはまんべんなく、様々な部位を食べられるコースがおすすめです。コースは5,000円の「吟」と7,500円の「匠」が用意されています。
フリードリンクはコース注文した場合にのみ適用されます。90分、1,900円と120分、2,500円。筆者は「匠」コースと赤ワインをいただきました。
プロローグの「ビーフジャーキー」
テーブルに着いて、間もなく「ビーフジャーキー」が運ばれてきます。感動へのプロローグです。「ビーフジャーキー」というと、アメリカ土産の定番ですが、あまり得意ではない方もいらっしゃるのではないでしょうか。ところが、「もうもう亭」の「ビーフジャーキー」は、堅すぎず、塩辛くもなく、適度なスモーキー感が抜群です。
これがA5ランク
コースに沿って、お肉が順番に運ばれてきます。まず、筆頭を努めるのが、特上カルビ。思わず二度見するようなインパクトあるポーション。肉厚約25mm。サシの含み具合、肉の光沢と美しさがA5ランクの貫録というものでしょうか。
特上カルビ
ロースターに肉を着地させると、軽快な音が聞こえてくるでしょう。「ジュウゥゥゥ」という重い音ではなく、「チイィィィ」、或いは「シイィィィ」という濁らない音です。そこに脂が滴る音が加わると、まさにsizzleです。
特上カルビをロースターからサルベージし、タレにつけて口に運ぶと、「とろけるような」、「ジューシィな」、そんな月並みな言葉では表現しきれない、味わいが広がります。驚愕の味覚に言葉が追いつかず、脳内にベートヴェンの交響曲第五番が流れます。「うんめい」。
特上ロースとヒレ
その後も、A5ランクお肉のパレードが間断なく続きます。「上ロース」に「ヒレ」。この順番はロースとヒレのどちらが牛肉の最高部位であるか、自らの舌で判断せよと迫られているように感じることでしょう。リブロースかシャトーブリアンか。
筆者はそんな鋭敏な味覚を持っておりませんので、「これは・・・」と絶句する、『美味しんぼ』の山岡士郎のような呟きが漏れただけでした。
ハラミ
コースの終盤はホルモンです。「カルビ」や「ロース」とは異なる食感の内臓も焼肉の醍醐味といえます。「ハラミ」は、横隔膜を形成する内臓で、若干乳臭い薫りがたまりません。
一般的な串焼き屋で出てくる「ハラミ」は堅いものばかりで、ガムを噛んでいるような味気なさがありますが、「もうもう亭」のハラミはさすがです。
噛むほどに弾力を楽しめる柔らかさに思わず悶絶することでしょう。その心は、まさにホル悶。新鮮なサンチュに挟んで食べたら、またホル悶。
ホルモン盛り合わせ
トリを務めた、ホルモン三兄弟。「レバー」、「ミノ」、「シマチョウ」の美しさといったら。ピカピカに光って輝いています。とりわけ、レバーは刺身でもいけそうだとついついいけない企みが頭をよぎりました。
オリジナルのタレにつけられた新鮮なホルモンはそれぞれの素材の食感が楽しめます。「レバー」は臭みもなく、これならレバーが苦手な人も納得するでしょう。
まとめ
〆は「クッパ」、「ビビンバ」、「冷麺」から選ぶことができます。祭りの後のほどよいクールダウンはいかがでしょうか。
今回の訪問は19年ぶりとなりましたが、「もうもう亭」は、今でも筆者の焼肉史に燦然と輝くお店であることが確認できました。「もうもう亭」は郡山に行ったら外せないマストな焼肉といえるでしょう。