鎌倉
鎌倉観光
古都の町並みが美しい日本を代表する観光地のひとつ

【鎌倉・瑞泉寺】世界遺産級の岩庭と、水戸黄門がしかけた鎌倉ブームのお寺

取材・写真・文:

神奈川在住
訪問エリア:47都道府県

2019年2月27日更新

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男坂と女坂

梅林の反対側には、瑞泉寺のお堂へと続く階段があります。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto境内の奥へと続く道

さらにこの先に進むと、右側と左側に道が分かれています。右側が女坂、左側が男坂です。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto男坂、女坂

坂と名がついていながら、両方とも階段だったりします。同じ目的地に到達する2本の道がある場合、傾斜の緩い方を女坂、きつい方を男坂と呼ぶのは通例だからでしょうか。

女坂は比較的新しく作られた気配がします。階段のステップ自体が新しい色合いですし、歩きやすいように幅も広くなっています。一方、男坂は古くから使われてきた気配がぷんぷんです。ステップは苔むしていて、長い年数使われてきたためか、角は丸くなっています。さらに下りの方向にステップが傾いています。幅も狭いので、降りる時は結構怖いものがあります。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto角が丸くなった男坂

この道を通っていて、独特だなあと感じるのはシダ系の植物が多いこと。シダは湿度の高いところに生息する植物です。湿度が高くなる要因としては、湿度を逃さないように周囲に木々がある・・・という条件があります。見上げてみると、高い木々が重なり合って、深い緑の空間を作っています。ずっと、ココに居たくなるような心地よい空間です。

山門

階段を登りきると山門が登場します。ちょうど訪れた季節には、山門の屋根に色づいた葉が降り積もり、鮮やかなストライプになっていました。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto山門
  • 写真:えいぶゆう/TossyPhotoストライプに色づいた屋根

前庭

山門を抜けると、目の前には美しく整えられた庭園が広がります。門をくぐってすぐのエリアには極力ものをおかず、奥のほうに木々を配置することによって、遠近感が強調された考えられた設計です。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto前庭

奥に行くと、まるで迷路のように道がカーブしたり、まっすぐになったり、通る人を楽しませる演出がなされています。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto迷路のような道

さらに季節ごとに花が絶えないよう、庭に植える植物の種類も考えられていて、梅、牡丹、つつじ、スイセンなど季節ごとに異なる楽しみ方ができるようになっています。そのため、瑞泉寺は鎌倉の「花の寺」という名を持つほどです。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto常に季節の植物が色どりを添えている

でもそんな数あるお花や木々の中で、特筆すべきは梅。瑞泉寺の境内には約150本ほどの梅の木があると言われています。白、黄、紅、枝垂れ・・・と、色や枝の種類もさまざま。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto沢山の梅

こうした梅や、鎌倉の中でも特段美しいとされている石畳を写真におさめようと、この日も一眼レフと何本ものレンズを持った人々が沢山訪れていました。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto写真撮影が人気
  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto美しい石畳

本堂

こちらが瑞泉寺の本堂です。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto本堂

中央がご本尊の釈迦牟尼仏、その右がこの美しいお寺を作った夢窓国師の像、左が千手観音の像です。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto本堂内

観光地「鎌倉」の火付け役

瑞泉寺は文学や学問とも縁の深いお寺です。鎌倉時代には漢文学が栄えましたが、このときの中心的な拠点となったのが、ここ瑞泉寺。

あの水戸黄門も自分の旅行記を「まとめてよ」と依頼した先がここ瑞泉寺です。黄門様は約1週間の鎌倉の旅行記を書いていたのですが、もっといい記事にしたい!と部下を鎌倉に派遣します。そして瑞泉寺でさらに情報を加筆・修正したと言われています。現代で言うところの編集部のような感じでしょうか。黄門様の持ち込み企画をブラッシュアップしたのが、瑞泉寺だったんです。

そうして加筆修正された新版の鎌倉旅行記が発行されました。その名も『新編鎌倉志』。これが人々の間に伝わると、鎌倉は一気に一大観光地へと変身を遂げました。

その他にも、文学とゆかりの深い瑞泉寺の境内には、数々の小説家、歌人、俳人などの著名人の石碑が建てられているんです。

どこもく地蔵

こちらは「どこもく地蔵」のお堂です。変わった名前ですよねー。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhotoどこもく地蔵

それにはこんな逸話があります。昔々、お堂の番人がひもじくひもじくて逃げ出そうとすると、お地蔵さんが夢枕にたって「どこもく、どこもく」とつぶやいたといいます。これは「どこも、苦」という意味で、「どこに行っても苦しいんだから、逃げたって意味がないんだよ」ということなんです。

ちゃんと文章で言ってくれた方が伝わりやすいと思いますが、古来から日本人は略すのが好きなのかもしれませんね。

岩庭

夢窓国師がすごいのは、周囲の地形や地質など、その土地を最も美しく見せられるポイントを総合的に判断し、お寺の位置を決めていることです。夢窓国師が関わったお寺の立地は、全て景勝地であることが選ばれています。とにかく美に対する意識が研ぎ澄まされていた人だったのでしょう。

鎌倉は岩がちな地質です。夢窓国師はこの特徴を生かして、岩盤全体を作品と捉えて彫刻を施しました。これまで日常にあったものに創意工夫をこらし、人々がこれまで見たことがないものに変化させる、そういうことが夢窓国師は得意だったような気がします。

境内の一角には、山の斜面として岩盤がむき出しになった所があります。そこに洞窟を掘り、一瞬で人目を奪うアクセントをつけました。ここは天女洞と呼ばれ、水月観音がおわすところです。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto岩庭

水月観音は水面に映った月を眺めている観音様です。当然月を映す水が必要となるので、目の前に池を掘りました。ここでさらなる工夫が。池の中央には島に見えるように、わざと掘り残したところを作りました。地形を生かしてアートにする大胆な発想と、見る人に想像させるストーリー作り、この両方の才能があって始めて造ることができる景色となっています。

また左側の上方には雨水をためる所があって、垂直の壁に沿って水を流すことで、滝のように演出することができるそうです。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhotoさらなる演出

ちなみにこちらの岩庭は長きにわたり埋もれていましたが、昭和45年に発掘・復元されました。

おまけ ~吉田松陰の石碑~

瑞泉寺の境内には、様々な著名人の石碑があります。特に面白いのが吉田松陰の碑。こちらは山門の近くにあります。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto吉田松陰の碑

刻まれた文字をよく見てください。「松陰吉田先生」わかりますか?吉田松陰ではなくて松陰吉田。ファーストネーム、ラストネームの順番で書かれているんです。

吉田松陰といえば黒船が来航した時に密航してでも外国留学をしようとした人。海外に対する憧れが強かったんですよね。そこにちなんだ計らいなのかもしれませんね。こんな細かいところも味わい深い瑞泉寺、ぜひ訪れてみてくださいね。

瑞泉寺
鎌倉 / 寺 / ドライブスポット / 紅葉 / 女子旅 / 穴場観光スポット / 穴場デートスポット / 秋のおすすめ観光スポット
住所:神奈川県鎌倉市二階堂710地図で見る
電話:0467-22-1191
Web:http://www.kamakura-zuisenji.or.jp/index.html

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