長崎県佐世保市黒島は、佐世保市本土から西へ約12キロ離れた島です。人口約400人の黒島には、100年以上前に建てられた教会が今も残っています。それが、黒島天主堂で、ユネスコ世界遺産登録候補である「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成遺産にもなっています。今でも、島民の約9割がカトリック教徒である黒島の魅力をご紹介します。
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九十九島最大の島、黒島
佐世保市から平戸市まで、約25kmにわたる海域に点在する島々を総称して「九十九島」と呼びます。「九十九島」といっても実際の島の数は208あり、それらの島々の密度は日本一といわれています。
208ある島のうち有人島はたった4つ!残りはすべて無人島で、4つある有人島のひとつが「黒島」です。黒島までは、相浦港からフェリーで高島を経由して約50分と、比較的気軽に行くことができます。(黒島までのアクセス)
九十九島最大の島とはいえ、島を一周するにはゆっくり歩いて一日もあれば十分です。黒島港にある観光案内所ウェルカムハウスでは、自転車の貸し出しもあるので、風を感じながら黒島の自然と美しい景色を楽しむことができます。黒島から見える海の色は深い青色で、島の緑との相性は抜群です。
途中、島ならではの面白いものを発見することができます。「物多田舎直売所(もったいなかちょくばいしょ)」。「もったいなか」は県北の方言で、「もったいない」の」意味。「もったいなか」に「物多田舎」という漢字を当てています。田舎にはたくさんいいものがあるよ!という意味が込められているのでしょうか。
筆者が訪れた時は閉まっていたので、お土産になるものが売っているかは分かりませんが、こういった島に根ざした場所をのぞいてみるのも良いかもしれませんね。
- 黒島ウェルカムハウス
- 長崎 / 観光サービス / レンタサイクル / 観光案内所・ビジターセンター / おみやげ屋
- 住所:長崎県佐世保市黒島町233地図で見る
- 電話:0956-56-2311
- Web:https://kuroshimakanko.com/index.php/category/welc...
黒島の御影石
黒島には昔から御影石という石があり、民家の基礎や神社の鳥居、お墓などに使用されてきました。今でもその御影石を加工する石材店があり、御影石でできた案内表示を見ることができます。またウェルカムハウスでは、御影石を加工して作ったコースターや御影石そのものがお土産品として販売されています。
黒島天主堂
黒島のシンボルともいえるのが「黒島天主堂」です。赤い煉瓦づくりで雄大な建物の前には、マリア様の象が優しく微笑みながら立っています。天主堂の基礎には黒島の御影石が使用され、煉瓦の一部は黒島の赤土を使って信徒の手で焼かれたそうです。
黒島天主堂はフランス人のマルマン神父により設計され、1902年に完成しました。壁面には美しいステンドグラスがはめこまれており、太陽の光を取り込んで天主堂内が七色に輝きます。天井はリブ・ヴォールトという技法が使われており、天井が軽量化されてます。
黒島はその昔、隠れキリシタンたちが弾圧を逃れてたどり着いた地でした。そのため今でも島民の約9割がカトリック教徒です。黒島天主堂では毎週日曜日の朝にミサが行われ、キリスト教関連の行事が行われています。クリスマスの時期には島民の手作りイルミネーションで天主堂が彩られます。
教会の見学には必ず許可が必要ですので、事前にこちらをご確認ください。
黒島には神社もあり、仏教徒の方もいらっしゃいます。ひとつの島の中に教会と神社が存在するのは、かつての隠れキリシタンたちが弾圧をのがれるため、仏教信仰せざるを得なかった歴史を物語っているのです。
100年以上も前から黒島の歴史を見つめてきた黒島天主堂は、これからも黒島のカトリック教徒たちの手で守られていくことでしょう。しかし、今や黒島天主堂は信徒だけのものではなく、島民みんなの憩いの場としての役割も果たしています。美しい煉瓦づくりの黒島天主堂で当時の信徒たちの想いを感じてみませんか?
おわりに
美しい自然と歴史的建造物が作り出す黒島の景観は、これからも島民の手で守られていきます。そこに住む人たちの想いと、かつてそこに住んでいた人たちの想いが今の黒島を支えているのです。