イギリス北西部の街チェスターには、国内でも随一の人気を誇る「チェスター動物園」があります。放飼場では檻や柵の代わりに水路などを使用し、動物たちの本来の生活環境が最大限に再現されていてとてもユニーク。1931年に開園して以来、国内外の多くのファンを魅了してきました。毎年たくさんの動物の赤ちゃんが生まれていて、ボートトリップなどのアトラクションも充実しているので、大人から子供まで大人気。そんなチェスター動物園の魅力について、徹底的にご紹介します。
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チェスター動物園は、どんなところ?
城郭都市の歴史と魅力にあふれる街、チェスターにあります
チェスター動物園は、イギリス北西部にあるチェシャー州の州都チェスターにあります。チェスターや近隣の大都市リバプールから直行バスが定期運転しているので、行かれる前にこちらをチェックしてみてください。飛行機で向かう場合は、空港のあるマンチェスターから、動物園直通の長距離バスに乗ると良いでしょう。
城郭都市の歴史的遺産が多く現存するチェスターは、国内でも有数の観光都市です。チェスター動物園に行かれる際には、ぜひ立ち寄ってみてください。チェスターのおすすめ観光スポットを紹介した記事もありますので、そちらも合わせてご覧ください!
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世界の動物園の中でも高い評価を受けるチェスター動物園、その特徴とは?
チェスター動物園の大きな特徴は、動物を展示する施設や放飼場に、檻や柵ではなく掘や水路が使われていることです。これは、飼育下にある動物の自然な行動を引き出すための工夫で、動物が可能な限り本来の姿で生を全うすることができるようになっています。
こうした取り組みがされている背景には、チェスター動物園の設立者が幼いころから夢見ていた「檻のない動物園を作りたい」という想いがあります。
1931年に開園したチェスター動物園は、George Mottersheadというイギリス人とその家族によって設立されました。Georgeは子供のころ、家族でマンチェスター動物園に行った時、父親に「僕が動物園をつくるなら、檻は置かない」と言ったそうです。これがチェスター動物園の構想の原点です。
しかし、夢である「檻のない動物園」を実現するには、住民の反対や金銭的な問題など、様々な困難に立ち向かわなくてはなりません。Georgeはチェスター動物園の開園当時から「always building(常に建て続ける)」をスローガンに掲げ、常に敷地や施設の拡大と改良を重ねました。
その信念は、1978年にGeorgeが死去した後も「檻のない動物園」という彼の夢とともに受け継がれ、現在も生き続けています。その証拠に、現在の敷地面積は500エーカーと、開園当時の10倍にまで拡大しており、そのうち動物がいるエリアの面積は計125エーカーという広さを誇っています。
それでは、そんなチェスター動物園の人気スポットをご紹介します。
チェスター動物園の人気の動物たち
国内外から訪れる多くの来場者で賑わう園内には、たくさんの見所があります。まずは、人気の動物たちをご紹介します。
アジアゾウ
入り口に面して広がるスペースには、アジアゾウのグループがいます。緩やかな傾斜や丘のある広大な放飼場で、若いゾウや子供のゾウが遊びまわる姿を見ることができ、その活発な様子に観客から歓声が上がるという、園内でも人気のスポットです。
ゾウたちは、お互いの体を押し合ったり、地面に転がった相手に乗り掛かったり、鼻を振り回しながら走ったり。その様子は、まるで人間の子供たちが遊ぶ公園を見ているようです。
2016年12月と2017年1月には、立て続けに赤ちゃんゾウが誕生し、園内は歓迎ムードに包まれています。そのうちに、近年誕生した別の子ゾウたちと一緒にはしゃぐ可愛い姿が見られそうです。
キリン
こちらはRothschild's giraffes(ウガンダキリン)と呼ばれるキリンで、足から下の部分は体の模様が消えているのが特徴です。
この種類のキリンは絶滅危惧種に指定されており、野生に生息する数はわずか1,500頭とも数百頭とも言われています。そのような中、チェスター動物園では2012年から毎年赤ちゃんが生まれており、2015年には2頭もの赤ちゃんが誕生しました。
野外の放飼場には柵の代わりに水路が設けられていて、地面に広がる赤土と芝を広く見渡すことができます。大木の下を歩くキリンの姿はとても優雅。飛ぶように走って遊びまわるキリンの姿を間近で見ることができるのも、大変に貴重です。
ジャガー
チェスター動物園には、現在2頭のジャガーがいて、ジャングルに生息するジャガーの生活環境を再現するために様々な工夫がなされています。施設には室内と屋外の両方にスペースが設けられ、草木が茂る湿度の高い空間に、大きな岩や湿った土、泳ぐことができるほど大きな池も作られています。
この施設は、有名な自動車メーカー「ジャガー」がスポンサーになり、2001年に誕生しました。外壁には、施設名であるSpirit of the Jaguarの文字の横に、自動車メーカーのロゴである「跳ねるジャガー」が付いています。
ジャカーの一挙手一投足に興奮した子供たちの歓声が響く、園内でも賑やかなスポットです。
フィリピンヒゲイノシシ
フィリピンに生息するこのイノシシの特徴は、頭から腰にかけて黒々と生える毛です。特に、頭に生える豊かで艶やかな毛は、リーゼントのように整っていて愛らしいです。
水路に囲まれた島になっている放飼場もあり、ここで自由に暮らすグループの中には、まだシマ模様が残る子供のイノシシ「うり坊」の姿も見られました。耳をすますと、親子が小さく鳴いてコミュニケーションをとっていることが分かります。
マレーガビアル
インドネシアやマレーシア、スマトラなどに生息するワニで、成長すると体長3-5m、体重は250kg以上になります。
2匹のワニが暮らす大きな水槽には、植物や大きな岩がある陸地と深めのプールがあります。プールの中は岩などで段差が作られていて、ワニは思い思いの水深のところでゆったりと過ごしていました。
上から水槽を見下ろせる場所もあり、まるで高い木の上からワニのいる池を覗き込んでいるような楽しさを味わうことができます。
少し下ると、今度はガラス越しに水面の上と下を見ることができる、洞窟に似た空間があります。運が良ければ、水に浮かんで水面から目と鼻の穴だけを出すワニを目の前で見ることができます。
ロックハイラックス
アフリカや中東に生息し、大きさは猫くらい、見た目は大きなモルモットのような可愛い姿の動物です。
驚いたことに、実はゾウに最も近い動物だそうで、ゾウの牙に当たる門歯があり、妊娠期間は小型の哺乳類では珍しく7ヶ月半と長期に及びます。足の裏の肉球はスベスベで柔らく、岩や枝を上り下りすることに長けています。
チェスター動物園では、2015年7月に4匹の赤ちゃんが誕生しました。生後16ヶ月で大人になり、3年で大人と同じくらいの大きさに成長します。
メガネグマ
目の周りや首にある白い模様がメガネに見えることがあるので、メガネグマと名付けられたそうです。野生のメガネグマは2万頭まで減少しており、現在では絶滅を避けるために様々な対処が取られています。
生息地であるアンデス山脈の一角を切り取ったかのような放飼場には、オスとメスのペアが飼育されています。動物園が協力して繁殖に取り組むプログラムにも登録され、このペアから新しい命が誕生することが期待されています。
ムカシトカゲ
トゥアタラとも呼ばれる爬虫類で、ニュージーランドにのみ生息しています。この種の祖先は恐竜の誕生以前から存在していたと考えられていて、ニュージーランドが他の陸地から切り離されたおよそ8,000万年前に生息していた種の生き残りであると考えられています。
ムカシトカゲも野生の生息数が減少しており、現在ではニュージーランド国外の動物園などでも飼育され、繁殖が試されています。1962年から飼育を始めたチェスター動物園では、2016年2月に初めて卵の孵化に成功しました。これは、世界で初めてニュージーランド国外で同種が誕生した瞬間でもありました。
おまけ:ヨーロッパコマドリ Robin
展示されている動物ではありませんが、ロビンと呼ばれるヨーロッパコマドリの姿を見ることもできます。
イギリスではとても親しまれている小鳥で、近年はクリスマスカードや切手に描かれることも多くなりました。大きさはスズメより一回り小さいくらいなのですが、さえずり声は大きくよく響きます。
この他にも、水鳥などの野鳥や、野生のリスを見かけることもあります。