鎌倉に100近くもあると言われるお寺のなかで、最古の寺「杉本寺」。杉本寺はその歴史の深さとともに、苔むした石段が美しく、カメラを携えた参拝者が絶えない人気のスポットです。苔の石段だけでなく、珍しい茅葺屋根の山門や本堂も、安置された像にあわせた雰囲気の造りでとっても素敵なんです!ガイドブックではなかなか紹介されない、鎌倉好きの筆者がご提案する、とっておきの楽しみ方で最古のお寺をご案内します。
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杉本寺ってどんなお寺?
日本有数の観光地である鎌倉。「鎌倉」にはとにかく神社仏閣がたくさんあるんです。だいたい神社は50、お寺は100近くもあると言われています。
今回ご紹介する「杉本寺」は、たくさんある鎌倉のお寺のなかで一番古いんです。歴史ある杉本寺は、2つの札所巡りの第1番札所でもあります。
札所巡りとは、いくつかのお寺を巡ってお参りすることで、霊場巡礼とも言います。日本で一番有名な霊場は「四国霊場八十八箇所」ではないでしょうか。お遍路さんと呼ばれ霊場を訪ねる人は独特の笠、白衣、杖を携えて巡る姿を思い浮かべます。
実は札所巡りは四国だけではなく、日本全国にあって、今回ご紹介する杉本寺は2つの札所ルートに入っているのです。
坂東三十三箇所と呼ばれる関東を巡る約1,300kmのコース、鎌倉三十三観音霊場の鎌倉一帯を巡るコースの2つのスタート地点なんです。
鎌倉を巡っていると、札所巡りと思われる団体の参拝者をよく見かけます。みんなここからスタートするんですね。
そして近年では、札所巡りに加えて杉本寺が持つ独特の美しさから、写真好きな参拝者のテッパンコースとなっているんです。それでは、杉本寺をご紹介してまいりましょう。
杉本寺の入り口
杉本寺の入り口は、まずこの階段。真っ白な生地に「十一面杉本観音」と書かれた奉納旗が、階段の両サイドに立てられています。
杉本寺はキツイ坂道に面しているので、階段のお寺といっても過言ではないほど、境内のほとんどが階段。
どうです?境内図の縦中央に、ずっと階段がありますよね。境内の大部分がこんな感じで階段なんです。
「階段ばっかり」と聞いてゲンナリする人もいるかもしれませんが、境内はこじんまりしているので、そんなに段数はありません。心配しなくても大丈夫!
山門
さて、最初の階段を登りきると、山門が現れます。
両サイドに金剛力士像を安置した門です。江戸時代頃の作品と言われています。体の大部分の塗装が剥げてしまって、まだらになっていますが、それが余計に年月と風格を感じさせ、力強い印象です。
金剛力士は、仏教の守護神の一つです。口を開いて、怒った顔で威嚇しているような像が「阿形(あぎょう)像」。口を厳しく横に引き結んだ「吽形(うんぎょう)像」の2体を1セットとして、お寺の入り口に安置されます。
金剛力士は、仏教のガードマン的な役割を持っていて、仏の敵が境内に入り込むのを防ぐ守護神なんです。だから厳しい顔をして、筋肉ムキムキなわけなんですね。そして「金剛杵(こんごうしょ)」という武器を持っています。
金剛杵を持った筋肉ムキムキの人なので「金剛力士」というわけ。いろんなお寺に金剛力士がいますが、ぜひ金剛杵を持っているか手も見てみてくださいね。
さて、門をくぐって振り返ると、ご覧ください。しっかりとした茅葺の屋根なんです。ちょっと珍しい門なんですよ。屋根の中に苔の色がちらちらと見えて素敵ですね。
苔の石段
山門をくぐると、真正面に苔の石段が現れます。これ!これです。この苔むした石段の風景を求めて参拝者が訪れるんです。筆者が訪れた日も、多くの人が一眼レフカメラを携えて、じっくりと写真を撮っていました。
この美しい苔を守るのと、石段がすり減っているため立ち入り禁止となっています。この苔の階段は、ぐぐっと寄って撮るのが正解で、引いて撮ると……
こんな感じで、参拝者用の階段が写っちゃうんです。みんなうまい具合に横の階段が写らないようにして工夫して撮っていましたよ。
杉本寺は緑が多く、苔の石段に落ちる木陰も雰囲気に一役買っていて素敵ですね。杉本寺は全体的に木陰が多いお寺。苔の種類にもよりますが、日当たりの良いところに生える苔はカラッとした低い湿度を好み、木陰が多いところに生える苔は高い湿度を好みます。
訪れる季節にもよりますが、注意していただきたいのは、この湿度を好むという条件が蚊の好む条件と一致しており、じっくり写真をとっていると、数カ所いっきに蚊にさされてしまうんです。
筆者が訪れた際は、カメラ携えた参拝者の犠牲者多数!みんな急に足元を搔き始める事態に……。夏場に訪れる際は蚊除け対策を忘れずに!